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マスク氏のTwitter買収、ネット言論に問う「中立性」

奔流eビジネス(D4DR社長 藤元健太郎氏)

NIKKEI MJ

イーロン・マスク氏がツイッター社の買収を表明したことが大きな波紋を広げている。世界中に3億人以上の利用者のいるメガプラットフォーマーを個人の資金の力で思い通りにすることがよいのかという議論も出ている。マスク氏は買収の理由を「自由な言論のプラットフォームにするため」と表明しており、メガプラットフォーマーたちの裁量で言論が統制される現状を憂いての行動だとしている。

例えばトランプ前大統領のアカウントはいまだに凍結されているが、米国で彼を支持する人は依然多く、次回の大統領選挙の立候補が噂される影響力の高い人のアカウントを一企業の判断で凍結してよいのかという問題提起は重要だ。

トランプ氏の場合は暴力的な行動を誘発したことが最大の理由とされており、それは批判されるべきものだが、批判することと言論を許さないこととは別のものと考えるべきだろう。

メタ社も今回のウクライナで起きている戦争においてフェイスブック上で禁止しているはずの暴力的な内容の投稿(例えば「ロシアの侵略者に死を」など)を一時的に容認するという判断をしており、その都度ルールを社内で政治的に判断をしている状況だ。

コロナ禍においてもメガプラットフォーマーたちは反ワクチン関連の投稿を監視し制限したり注意するという行動に出たが、これは事実上裁量ひとつで投稿制限ができることを示したもので、科学的な批判の態度までに干渉するのはやはり中立性を欠いているのではないかとも感じる。

今回の件を見ててもGAFAMを抱える米国は良くも悪くも株式市場という市場原理を通じて民主主義を発展させようとしていることがわかる。

一方で欧州連合(EU)は先日デジタルサービス法案に合意しており、一般データ保護規則(GDPR)やデジタル市場法などと合わせて巨大ITプラットフォーマーに対する規制を強化する姿勢を明確にしている。EUの動きは市場原理だけでは消費者を保護する民主主義は守れないとして、規制を強化する流れだ。

まさに情報統制についても第三者機関による中立性を監視するなどの動きも出てくるかもしれない。正反対の動きとして中国やロシアなど権威主義国家はネットワークを監視し、言論を完全にコントロールすることで国家安定を計ろうとしており、この流れに世界的に追随する新興国が増えていく懸念もある。

今回の戦争でSNS(交流サイト)などスマホ上での情報の重要性が一段と増したことが明確になった。SNSのフェイクニュースが新しい戦争を誘発する可能性のリアリティーも高まった。事実としての情報、個人としての意見や願望、悪意ある情報の誘導、国家や企業の目的達成のためのメッセージ、こうした様々な情報を分類し、判断する技術と知恵がまだまだ人類には必要なのだろう。

マスク氏の事業は「人類の救済」がテーマであると言われている。人類の英知と平和にとって今後重要な鍵を握るデジタル言論空間の中立性は、まさに人類の救済のために必要だと考えているのだろう。マスク氏の次のアクションからは眼が離せない。

[日経MJ2022年5月6日掲載]

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