化学品原料用ガスを大量輸送 京大などが新材料開発

京都大学の研究グループは産業ガス製造大手の仏エア・リキードと共同で、化学品の原料になるアセチレンガスを大量輸送できる多孔性の材料を開発した。新材料は圧力をかけるとガスを取り込む性質を持ち、気体を圧縮する手法に比べて約35倍の量を貯蔵できる。アセチレンは合成樹脂やゴムの原料などとして広く使われており、効率的な運搬技術へのニーズは高いと見込み、実用化を目指す。
研究グループが開発した金属有機構造体(MOF)は無数の微細な穴が空いており、常温で約1.5気圧をかけるとガスを吸い込み、約1気圧で吐き出す性質を持つ。3種類の有機物と亜鉛イオンを組み合わせてつくった。9.6リットルのガスボンベに新材料を詰めると最大700リットルのアセチレンガスを貯蔵できた。1.5気圧をかけた場合、同じ大きさの容器には20リットル程度しか入らないという。
アセチレンガスは室温で2気圧以上をかけると爆発する可能性があり、高圧をかけることが難しい。液体に溶かす手法もあったが純度が下がる問題があった。アセチレンは化学品の原料や燃料として世界で年間約200万トン生産されており、研究グループは効率的な運搬技術へのニーズは高いと見込む。アセチレン以外の物質の貯蔵・運搬にも活用できるとみている。
作製したMOFは安価な原料で合成でき、高圧に対応する必要があった容器の材質を変更できる可能性もある。実用化の際には「運搬費用や効率を大幅に下げられるはずだ」(京大の大竹研一特定助教)という。1.5気圧で運搬できれば、国内では高圧ガスの法規制対象外になるといった利点もあるとみている。