タニタ、アルゴリズムを業界標準に 床下に体組成計
健康機器大手のタニタ(東京・板橋)は、自社の体組成計のアルゴリズム(計算手法)の業界標準化を目指している。対応機器の拡大の一環として住宅建材メーカーの城東テクノ(大阪市)と共同で住宅の床に埋め込むタイプの体組成計を開発した。これまでも同業やゲームメーカーと連携してきた。健康に興味のない人でもタニタのアルゴリズムの利用を促していく。

タニタのアルゴリズムは体組成計技術の根幹を担う。体組成計が計測する体重や電気抵抗値を、体重や性別、年齢などの情報と組み合わせて筋肉量や基礎代謝量を導く。国内外から1万5000件以上の生体データを収集して開発した。連携は3社目で、今後も増やしていく方針だ。
日常の動線上に体組成計を設置
城東テクノと手がけたのは、体組成計を住宅の床下点検口の蓋に組み込む製品「NORNE(ノルネ)」だ。洗面所など日常的に立ち止まる動線上の点検口に体組成計を配置することで、計測のきっかけを作りやすくする。計測のたびに取り出して収納する手間も省ける。
タニタ生産戦略本部の大場弘氏は「計測するとき以外は床の一部として踏まれるため、体組成計の安全面や耐久性を高める必要があった」と振り返る。通常の家庭用体組成計ではなく業務用の機器と同じ部品を使うなどの工夫をした。城東テクノが持つ高気密型の床下点検口を使い、点検口もきしんだりガタついたりしにくい。
ノルネは城東テクノが9月1日に発売した。製品のみの想定価格は10万円程度だ。工事が伴う場合などは価格が変わる。新築住宅を建設する際に設計に組み込むほか、リフォームの時に売り込む。体重や体脂肪率、筋肉量、推定骨量など10項目を測れる。

タニタは体組成計の中核技術であるアルゴリズムの外部提供を2020年から進め、業界標準の確立を目指している。タニタによるとアルゴリズムはメーカーによって異なり計測値に若干の差が生じる。シェアを高めることで、機種の買い替え時などデータの継続性を利用者に訴える。
ゲームにもアルゴリズム提供
城東テクノへの提供もその一環だ。21年には同業であるA&Dホロンホールディングス傘下の計測機器メーカー、エー・アンド・デイがタニタのアルゴリズムを搭載した家庭用体組成計を発売した。20年にはスクウェア・エニックス(東京・新宿)のスマホ向けゲーム「ドラゴンクエストウォーク」に歩数計・活動量計向けアルゴリズムを提供した。
健康に関心がなければ手に取りにくい健康機器について、ゲームや床下収納など娯楽や生活を通して消費者への接点をつくり、健康を測る習慣そのものをつくる戦略だ。タニタは家庭用体組成計分野での最大手だが、基礎技術の体脂肪計の特許が06年に切れるなどしてオムロンなどの競合製品が増えた。競合に対する優位性を常に打ち出していく。
(茂野新太)
