温めると膨張せず縮む材料、最高性能を達成 東工大など
東京工業大学などの研究チームは温めると体積が小さくなる新材料を開発した。ストロンチウムなどを含む酸化物で、熱による収縮率として過去最高となる9.3%の体積変化を確認した。半導体機器や精密加工部品に応用すれば、動作時に問題となる熱膨張を解消できる可能性がある。コスト削減などの改良を進め、実用化を目指す。

研究チームはこれまでに鉛とバナジウムの酸化物にビスマスを混ぜた材料を合成し、過去最高記録となる7.9%の体積変化を実証していた。今回はこの材料にストロンチウムを加えたところ、セ氏177度から427度に加熱したときに9.3%の体積変化が起きた。
達成した性能は熱の上昇に伴う収縮率として過去最高で、実験用に販売されているマンガンと窒素を含む材料(1.4%)や、ビスマスとニッケルに鉄を混ぜた酸化物(2.4%)を大幅に上回る。
兵庫県の大型放射光施設「スプリング8」などを使って結晶構造を解析し、温めると縮む仕組みを詳しく調べた。
材料を温めると原子同士が長方形に結合した構造から正方形に結合した構造に少しずつ置き換わり、体積が小さくなっていた。材料中に2種類の異なる構造が共存することも分かった。東工大の東正樹教授は「改良の指針になる」と期待する。
従来活用してきたビスマスには温度による構造の変化を促す効果がある一方で、縮む前の長方形のサイズが小さくなってしまう問題があった。ストロンチウムを加えたことで長方形が大きくなり、正方形に変化したときに体積変化が起きやすくなった。
新材料の合成には人工ダイヤモンドの合成と同程度の高圧が必要なため、コストは高くなるという。有害物質の鉛を含むことや、温めたときに縮む温度と冷やしたときに膨らむ温度が一致しない問題もある。元素の種類や組成を変えて改良を目指す。
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