磁石を近づけると膨らむ新材料 東京大など、精密機器に
東京大学と名古屋大学の研究チームは、磁石を近づけるなどして磁場を加えると体積が大きくなる新材料を開発した。クロムとテルルを混ぜたセラミック材料で、磁場の強さに応じてもとの形状を保ったまま膨らむ性質を持つ。精密機器に使うアクチュエーター(駆動装置)やセンサーなどへの応用を目指す。

精密機器は伸縮するアクチュエーターを位置合わせなどに活用している。磁石を近づけたり電気を流したりすると変形する材料で作製する。ただ、こうした用途の従来の材料は縦方向に膨らむと横方向には縮む性質があり、形状の変化が大きいわりに体積の変化率は少なかった。成分に有害な鉛などを含んだりする問題もあった。
新材料はクロムとテルルから成るセラミック(焼結体)で、鉄や鉛を含まないことに加え、形を保ったまま縦にも横にも同じくらい膨らむ。セ氏-260度から80度という幅広い温度で磁場の強さに比例して膨らむ性質がある。実験に使った装置の最大値にあたる9テスラの磁場をかけたとき、体積は0.12%膨らんだ。
東京大学の岡本佳比古教授は、鉛などを使うことなく「従来の材料とほぼ同程度の膨張を実現できた」と話す。元素の種類や組成を変えて、より高性能な材料の開発を目指す。