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創造的破壊からの起業

SmartTimes インターウォーズ社長 吉井信隆氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

エストニアは人口わずか130万人の小国でありながら、多くのスタートアップが集まるハブとなっている。なぜ起業率が高く、スタートアップの集積地になっているのか、エストニアの投資家に聞いた。

第一に、国全体の取り組みでデジタル化政策を推し進めたことだ。所得税申告や運転免許証の更新など、行政手続きの99%がオンラインで完結する基盤を作った。

第二に、非居住者でも仮想国民になれる電子国民制度を導入したことだ。世界のどこからでもエストニアの電子行政サービスの一部を利用することができ、海外からの銀行振込や納税を可能にした。これにより実際にエストニアに行かずともオンラインで法人登記ができる。また法人税(20%)が利益ではなく配当金に課税される仕組みで、配当しない限り課税されないため、資金繰りが苦しいスタートアップに寄り添った税制となっている。

法人の年次決算報告書がオンラインで申告できることも起業を後押ししている。こうした魅力的な政策に加え、2017年からは「スタートアップビザプログラム(スタートアップ設立のための短期滞在許可)」が開始され、外国人の起業家や人材を引きつけている。

スカイプが03年にエストニアで誕生した後も、新たなユニコーンが7社誕生しているのは、成功した起業家が次世代のスタートアップに資金とノウハウを支援する、スタートアップエコシステムが形成されているからだ。

一方、現在の日本の起業率は世界最低水準となっている。それは技術や資本だけでなく、最も重要なリソースの起業家人材が圧倒的に不足しているからだ。日本は人材の流動性が低く、起業家を生むエコシステムが脆弱なため、スタートアップが誕生しない。

かつての日本ではハングリーで起業家精神の旺盛な多くのスタートアップが勃興し、経済を繁栄させたのだ。しかし1990年以降、先人の起業家たちが築いた企業の成功要因に固執し、情報革命の波に乗れないまま停滞している。

このような中でも、日本にイノベーションを起こした起業家は存在する。ファナック創業者の稲葉清右衛門さんや、ヤフー創業者の井上雅博さんなどだ。彼らのような起業家の共通点は、業界の外部からスタートした「企業内起業家」であることだ。業界の中心にいなかったからこそ、固定概念を持たずに業界の常識を覆した。

「新」という字は「立つ木に斧を入れる」と書く。それはまさに古い企業モデルの型を壊し新しいモデルを創る「創造的破壊」が既存企業の経営者に求められていることを表す。創造的破壊から企業内起業家を育成し、スタートアップを生み出すエコシステムを創ることが、日本の成長の要となる。

[日経産業新聞2022年2月7日付]

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