KDDI、IoT向け通信障害対策 複数キャリアに接続

通信障害時でも予備の通信回線に接続できるようにするサービスが広がっている。KDDIはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器向けに、1台の端末で複数の通信キャリア回線に接続できるサービスの提供を始める。あらゆる場面に通信が入り込む中、ひとたび通信障害が起きると社会活動に支障を来しかねない。危機に備えたいという需要を取り込む。
KDDIは12月23日から1台の端末で複数の通信キャリアの回線に接続できるサービスを始める。2枚のSIMカードで対応する方法のほか、海外渡航時などに利用される「ローミング(相互乗り入れ)」の仕組みを活用して1枚のSIMでも対応する。KDDIが他キャリアの通信回線の手配のほか、対応するルーター端末の導入や保守など一括して提供する。
インターネットイニシアティブ(IIJ)もIoT機器向けに1枚で複数の通信キャリアに接続できるSIMカードを開発した。サーバーと通信ができない状況を検知した端末がプロファイル(携帯電話網に接続するための情報)を切り替えることで、別の通信網に接続できる。それぞれのプロファイルの加入者データベースは独立しており、大規模な通信障害時でも通信の切り替えが可能になるという。
NTTコミュニケーションズ(コム)もIoT機器向けに緊急時に別の回線に自動的に切り替わるサービスを始める。決済端末を導入する小売店やATMを導入する銀行などIoT機器端末を対象にする。同社によると「複数キャリアの冗長化を行うことで信頼性の高いネットワーク構築を必要とする顧客が増加している」という。これまでは複数回線を利用企業が個別に調達や運用しており、導入のハードルが課題になっていた。

通信障害の影響は年々大きくなっている。KDDIが7月に起こした大規模な通信障害は、障害発生時間が61時間半に及んだ。個人の携帯のほか、コネクテッドカー(つながる車)やATM、スマートメーターなど様々なIoT機器でサービスが利用しづらくなる影響が出た。2021年10月に発生したNTTドコモの通信障害でも全面復旧に29時間以上かかり、タクシーの決済や自転車のシェアサービスにも余波が広がった。
大規模な通信障害を受け、総務省では他社の通信網に切り替える「ローミング」の導入の議論も進めている。緊急通報だけでなく、一般の通話やデータ通信も対象とする導入も視野に入れている。ローミング時の事業者間の費用負担の在り方や利用者の料金など運用ルールなどについて今後検討していく方針だ。ただ、導入までには時間がかかる可能性があり、予備回線を一括して提供するサービスが先行的に増えていきそうだ。
(河端里咲)
