細胞自食「オートファジー」、蛍光で可視化 医科歯科大
東京医科歯科大学の研究チームは、細胞が自らの成分を膜で包み込んで分解する「オートファジー」という仕組みを可視化する新しい手法を開発した。膜が隙間なく閉じて周囲から完全に隔離されたかどうかを、蛍光を使って見分ける。オートファジーの異常で発症する病気を治療する薬の開発に役立てる。

オートファジーは不要になったたんぱく質などの成分を、隔離膜と呼ばれる膜で袋のように包み込んで内部に閉じ込める。この袋が消化酵素で満たされた別の袋と融合して中身が分解される。従来の手法では膜を作るときに働く分子を目印にして観察していたが、閉じ込めの際に膜が完全に閉じたかどうかは顕微鏡でも見分けにくかった。
新手法は膜が完全に閉じたかどうかを、蛍光たんぱく質の光を利用して見分ける。細胞に蛍光たんぱく質を作らせて、膜に完全に包まれた蛍光たんぱく質だけが光を保てるよう工夫した。細胞に強い光を照射すると、膜に包まれていない蛍光たんぱく質は構造が変化して光が消える。
研究チームの清水重臣教授は「従来とは異なる仕組みで進むオートファジーの研究に役立てたい」と話す。例えば、抗がん剤の投与などで細胞のDNAに損傷が起きたり、細胞が分泌するインスリンなどのたんぱく質が細胞内に過剰に蓄積したりすると、従来の手法で観察に使っていた目印とは別の分子が働いてオートファジーが進む。新手法はこうした仕組みの解明や治療薬の開発につながる。