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アスクルと日野、宅配トラックEV化探る 輸送効率が鍵

日経ビジネス電子版

オフィス用品販売のアスクルは商品の配達に電気自動車(EV)のトラックを使う実証実験に乗り出した。日野自動車が開発した小型車両を導入し、かつて使い勝手の面で壁に突き当たったEVの導入に挑戦する。運輸部門の排ガス削減は国の脱炭素に欠かせない。アスクルの試みはEVシフトの今後を占う試金石となる。

アスクルは19日、日野とEVのトラックの活用に向けた実証実験を始めた。2022年夏に日野が発売する小型EVのトラック「デュトロZ EV」を東京都内の配送に試験導入する。日野と関西電力の共同出資会社CUBE-LINX(キューブリンクス、東京・新宿)が車両の充電管理をはじめとしたエネルギーマネジメントを担う。

脱炭素の流れが急速に産業界で進むなか、アスクルはサプライチェーン(供給網)全体で温暖化ガス排出の抑制を目指している。その一環で、同社は16年から配送現場でEVを部分的に導入してきた。

実際にEVを運用してみて課題として浮かび上がったのは、乗用車の議論でしばしば指摘される車両の価格や充電1回当たりの航続距離ではなく、「物流の現場でいつも通りのオペレーションをできるかどうかだった」と、アスクルのCSR(企業の社会的責任)部門を統括するコーポレート本部の東俊一郎部長は話す。

16年に試験導入したEVには積載量に難があった。搭載された電池が重く、エンジンで走る同じサイズのトラックと比べて4割少ない約600キログラムの荷物しか積めなかった。結果、トラックが物流拠点に戻る回数が増え、配送効率の低下につながってしまった。

オフィス用品が主力のアスクルは法人顧客に対して飲料水やコピー用紙をはじめとした重くてかさばる荷物を運ぶことが多い。また、同社の個人向けインターネット通販の「LOHACO(ロハコ)」では、消費者に対して配送時間を2時間単位で指定できるきめ細かいサービスを提供している。ドライバーは指定された時間通りに確実に荷物を届ける必要がある。

日野が優先したのは……

日野は都市部周辺の配送やラストワンマイルでの輸送に使われる小型トラックの使われ方を踏まえ、「航続距離は約100キロメートルで十分」と割り切った。そうすることで電池の積載量を抑え、荷物の積載量は1トンと従来車並みを確保した。

運転席から乗り降りしなくても、運転席と荷室の間を自在に行き来できる「ウオークスルー」といった設計も取り入れ、ドライバーの負担軽減を目指した。

輸送各社のEVへの切り替え需要を当て込み、日本メーカーの牙城だった国内トラック市場に、中国系の格安メーカーをはじめ海外勢が参入する動きもある。佐川急便は20年、スタートアップのASF(東京・港)と軽自動車タイプのEVのトラックを共同開発すると発表。生産は中国の広西汽車集団系の企業が担う。

EVシフトは中国や欧州が先行するため予想された事態ではあるが、日本メーカーは出遅れ気味との印象もあった。だが、日野の東野和幸チーフエンジニアは「顧客との接点があり、悩みを聞ける関係にあるのが強みだ」と自負を見せる。

国土交通省の公表資料によると、19年度に営業用貨物車が排出した二酸化炭素(CO2)は4193万トン。運輸部門全体の排出量の約20%、日本全体の約3.8%を占めた。事業者の多くはそれぞれ脱炭素目標を打ち出し、EVシフトを進めつつある。

次世代技術を取り入れながらも物流インフラの「日常」を止めない――。これを両立できるEVこそ、プロを相手とする商用車の世界で勝ち残る。国内商用車メーカーの反撃が始まろうとしている。

(日経ビジネス 大西綾)

[日経ビジネス電子版 2022年1月21日の記事を再構成]

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