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セブン&アイ傘下のヨーク まいばすけっと追撃なるか

日経ビジネス電子版

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下で食品スーパーを手掛けるヨーク(東京・江東)が11月20日、「ヨークフーズ」の早稲田店(東京・新宿)をリニューアルオープンした。検証店舗と位置付け、都市部の小型店舗の在り方を探る。都市部の出店で先行するイオングループの「まいばすけっと」を追撃できるか。

ヨークは、セブン&アイHD傘下のヨークマートが2020年6月に社名変更した企業。1都3県で「ヨークマート」「ヨークプライス」「コンフォートマーケット」など食品スーパー100店舗(20年6月時点)を運営する。都内では、店舗面積がコンビニエンスストアと同程度の小型店舗「ヨークフーズ」を約10店舗展開する。

セブン&アイグループは都市部の小型スーパーの展開ではイオングループの後じんを拝してきた。イオングループでは、まいばすけっと(千葉市)が東京都と神奈川県で小型食品スーパー「まいばすけっと」を展開。21年8月末時点で963店舗に達している。小型スーパーはコンビニに比べて生鮮品や調味料を多くそろえるのが特徴で、コンビニ価格ではなくスーパー価格であることも消費者にとっての魅力の1つとなっている。

セブン&アイが出遅れたのは、都市部ではコンビニ「セブンイレブン」の展開を優先してきた側面があるからだ。都内では2824店舗(21年10月末時点)を展開。競合するローソンの1692店舗(21年2月末時点)、ファミリーマートの2449店舗(21年10月末時点)より多い。これに対し、ヨークが運営する都内の食品スーパーは22店舗にとどまり、約80店舗を展開するライフコーポレーションやサミット(東京・杉並)に比べると規模は小さい。

都市部の食品スーパーを強化する必要が生まれたのは新型コロナウイルス禍がきっかけだ。生活様式が変わり、多数の人が集まるオフィス街や繁華街、大規模イベント会場などにおけるコンビニの売り上げが減っている。その代わりに、人々が過ごす時間が増えた自宅向けの食品需要が拡大した。ヨークも20年から、人口減少の影響が小さい都市部、特に東京23区内の事業拡大を目指して小型店舗のフォーマットづくりに力を入れ始めた。

ヨークは実証店舗と位置付けた早稲田店を、どんな店舗にしたのか。

リニューアルオープンの初日、記者が開店時間の朝10時に早稲田店を訪れると、既に多数の客が来店していた。

入店してまず目を引いたのがキャッシュレス決済できるセルフレジの多さだ。1~2階にある店舗のうち、2階は8つのレジすべてがセルフ方式になっていた。このセルフレジは10月から先行導入していたもの。ヨークによれば、来店のピーク時には各レジに4~5人程度が並ぶ状態だったが、そのレジ待ちの時間を大幅に解消できると期待しているという。

店内を歩いていると、品ぞろえが増えたような印象を受ける。総菜とカップみそ汁、サラダがすぐ近くにあるなど、コンパクトな買い回りを意識した陳列も見受けられた。来店客同士の会話からは「ずいぶんと品物が増えた気がする」「レジがすいていて便利」といった声が聞こえてきた。

近郊のサテライトキッチンで総菜を調理

ヨークが新しい早稲田店で取り組んだことの1つが、近郊に設けたサテライトキッチンの活用だ。狭い店舗では店内調理は難しい。そこで、自社開発のパンや総菜、サラダなどをサテライトキッチンで調理し、1日2便届ける体制を整えた。狙いはコンビニとの差異化だ。「小型店といっても、作りたての総菜やサラダが置けずにスーパーとして中途半端になってしまうことは避けたかった」(ヨーク)という。

記者が店頭で感じた品ぞろえの充実は、全高が高く多段の棚を導入したことで実現したという。早稲田店の商品数は約5400点から約6200点に増えたという。約3000点が一般的とされるコンビニに対して約2倍の品ぞろえになった。

さらに、店員の少なさを補う仕組みも設けた。それが店舗の入り口付近にタブレットを設置した「デジタルサービスカウンター」だ。来店客が自らタブレットを操作して売り場を調べられるようにしたほか、お中元やお歳暮などの季節商品について相談や予約をしたいときにはタブレット操作で店員を呼び出せるようにした。店員のスマートウオッチに通知が届く仕組みにしており、作業や接客をしながらでも呼び出しに気付ける。通常の店舗ではサービスカウンターに店員が常駐しているが、この仕組みによって常駐を不要にしつつ、サービス品質を低下させないようにした。

ヨークで営業本部長を務める小松好則常務執行役員は「都市型小型店の運営についての知見をさらに積み重ねていかなくてはならない」と話す。早稲田店をひな型にして小型店舗の刷新を進めるほか、いい立地を見つけて小型店を拡大したいと意気込む。

ただし、店舗展開で圧倒的に先行するイオングループを追うのは簡単ではない。セブンイレブンをはじめとするコンビニ業界も、住宅立地店舗における販売拡大を狙って総菜や生鮮品、冷凍食品の強化などを進めている。コンビニやスーパーの業態の垣根が低くなる中で、ヨークはどのような強みを発揮していくのか。グループ内のコンビニの売り上げの一部を奪ってでも成長するほどの覚悟が問われる。

(日経ビジネス 田中創太)

[日経ビジネス電子版 2021年11月24日の記事を再構成]

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