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ふるさと納税の返礼品に「再エネ電気」 国が一転容認

風力発電など再エネの拡大にふるさと納税も一役(写真はイメージ)
日経ビジネス電子版

国が掲げた、2030年度に温暖化ガス排出を13年度比で46%削減する目標。この実現に向けて期待されるのが、自治体を中心とした再生可能エネルギーの導入だ。

政府は自治体を資金支援するための複数年にわたる制度の創設を検討しているが、今後、再エネ普及の一助となりそうなのがふるさと納税だ。再エネ由来の電気を、近く、返礼品として取り扱えるようにするほか、再エネ導入に企業版ふるさと納税を使う動きも出てきている。

「国からの詳しい連絡を待って、条件に合うなら、また電気をふるさと納税の返礼品にしたい」。福島県楢葉町の担当者はこう語った。

電気を返礼品にするとはどういうことか。ふるさと納税をしてくれた人が、太陽光発電所などで発電した電気を扱う地元の新電力と契約すれば、寄付額の3割までに当たる電気代を自治体が負担する仕組みだ。21年4月、総務省の「地場産品に当たらない」との判断を受け、楢葉町は電気の返礼品を中止していた。ところが、6月9日、事態は急転する。6月中に総務省から出る通知を待って、再び電気を返礼品に加える方針だ。

2カ月で方針が180度転換

中止から一転容認へ。2カ月で方針が180度転換したのは、国が強力に推進するカーボンニュートラルが背景にある。政府の「国・地方脱炭素実現会議」(議長・加藤勝信官房長官)は9日、30年度までの行程表に「ふるさと納税の返礼品としての地域再エネの活用」と明記した。

自治体は、ふるさと納税が増えれば再エネ関連の投資を増やすことができる。国は、「脱炭素先行地域」を少なくとも100カ所設ける予定だが、自治体主導の再エネ普及の課題は、その費用を誰が負担するかだ。一般的に、財政の逼迫度合いは地方の自治体ほど深刻さを増す。政府は自治体を複数年、支援する新制度を検討するが、制度設計はこれから。頼りにできる財源が乏しいなかで、ふるさと納税は貴重な財源になり得る。

では、電気は「地場産品」なのかどうか。国の態度が一転したのはその判断が揺れたからだ。自らの自治体にある太陽光発電所などで発電された「地元産」の電気を返礼品にしたい自治体側と、「その電気が地元で発電したものだけとは言えない」と強調する総務省の間で意見が分かれた。

電気はその特性上、農畜産物のように、地域でつくったものだけを分類するのは難しい。再エネ由来をうたう新電力は、自らの太陽光発電所などで発電した電気を直接、契約世帯に送れるわけではないからだ。実際、世帯に電気を送るのは送配電事業を担う大手電力である。

また、多くの新電力が調達して利用している市場の電気も、「再エネの電気」「火力の電気」といった分類はされていない。もともと、色のついていない電気を地元産に限定することは不可能だ。

当初の総務省の判断はしゃくし定規にもみえる。そして、カーボンニュートラルを国を挙げて推進するためには、そうも言っていられないと考えるようになったのだろう。武田良太総務相は6月11日の会見で「地方自治体の取り組みを応援する観点から、一定の条件を満たした再エネ電気を『地場産品基準に適合する電気』として扱うことにした」と語った。楢葉町は「より使いやすいメニューで電気を返礼品として提供したい」と話す。

JERAやヤフー、企業版ふるさと納税でも

21年3月、北海道厚真町が再エネ強化を名目に寄付金7億4000万円を受ける際に利用したのは企業版ふるさと納税だ。寄付をしたのは、東京電力ホールディングス中部電力が共同設立したJERA。18年9月に発生した北海道胆振東部地震により甚大な被害を受けた厚真町が進める防災機能強化の取り組みに対し、JERAが共感、寄付に至った。

企業版ふるさと納税に返礼品はないが、企業は、通常の損金算入による、寄付額の3割の軽減効果に加えて6割を法人関係税から税額控除できる。厚真町は、この寄付で太陽光発電設備などを浄水場と公共の温浴施設に新たに設置、導入規模は当初の倍以上の1250キロワットの発電出力になる。同町担当者は「より充実した形で再エネを導入できる」と喜ぶ。

カーボンニュートラルをテーマに企業版ふるさと納税の納付先を公募しているのはヤフーだ。4月に公募を開始、寄付額は数億円を見込む。現在、公募に応じた自治体と面談して選定を進めている。ヤフーは、23年度に自社で利用する電力を100%再エネにする目標を掲げており、そうした理念に沿う自治体を応援する。同社によると、カーボンニュートラルをテーマにした企業版ふるさと納税の公募は国内で初めてという。

電気を返礼品にしていたのは4月時点で約10の自治体だが、正式に国が返礼品と認めることで、導入事例の増加が期待できるだろう。

「再エネ推進、自治体のPRにもなる」

全国で初めて、地元海域における洋上風力発電の事業者を公募した長崎県五島市も4月まで電気を返礼品にしていた。同市の担当者は「今後、寄付が増えればより有効な財源の1つになる。再エネを推進している自治体としてのPRにもなる」と話す。

30年度、さらには温暖化ガス排出の実質ゼロを目指す50年度に向けて、国内の再エネ関連事業が拡大していくのは確実。企業は、企業版ふるさと納税によって自らの事業と関連する分野への寄付もしやすくなる。カーボンニュートラルの機運の高まりに、ふるさと納税が一役買いそうだ。

(日経ビジネス 中山玲子)

[日経ビジネス電子版 2021年6月23日の記事を再構成]

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