/

GoogleとAmazon、データセンター脱炭素化への道

CBINSIGHTS
デジタル社会に不可欠なデータセンターは電力を大量消費するため、温暖化ガスの排出削減が課題となっている。その解決の参考になるのが米国のグーグルとアマゾン・ドット・コムだ。グーグルは電力貯蔵システム企業と組み、データセンターで利用する太陽光で発電した電力の貯蔵に取り組んでいる。アマゾンも電力会社と提携し、再生可能エネルギー由来の電力供給を受けている。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

データセンターはクラウドコンピューティングを支える柱だ。データの保存や処理、インターネットへの配信に必要となる物理的なインフラとリソース(資源)を提供している。

だが、データセンターの電力を賄うのは簡単なことではない。データセンターは既に世界の電力消費量の約1%、温暖化ガス排出量の1%近くを占めている。今や生成AI(人工知能)や大規模言語モデル(LLM)など、電力を大量に消費する新たなテクノロジーの利用が急拡大しつつあり、電力の消費量やコストの増加に拍車がかかっている。

企業のこの問題への関心は高まりつつあり、決算説明会でデータセンターのエネルギー消費について論じる機会も増加傾向にある。一方、米グーグルや米アマゾン・ドット・コムなどの巨大テックはデータセンターを持続可能にするテックシステムを導入するため、エネルギー会社と提携している。

今回のリポートでは、グーグルとアマゾンがデータセンターの温暖化ガス排出量を削減し地域の送電網を安定させるために、エネルギー管理にどう取り組んでいるかについて取り上げる。

グーグルとアマゾンはデータセンターをどう最適化しているのか

グーグル

グーグルは自社のデータセンターのサステナビリティー(持続可能性)を向上させるため、複数のエネルギー貯蔵会社と提携している。必要な電力を全て再生可能エネルギーで賄う目標の達成に向け、様々な規模のエネルギー関連会社と共同で蓄電システムを開発している。

米フルエンス(Fluence)、英セントリカ・ビジネス・ソリューションズ(Centrica Business Solutions)

関係:提携

グーグルは2022年4月、ベルギーのデータセンターに同社初の「ゼロエミッション(排出ゼロ)」バックアップ電源システムを構築するため、エネルギー貯蔵システムを手掛けるフルエンスおよびセントリカ・ビジネス・ソリューションズと提携した。グーグルとしてはこれまでで最大の規模となるフルエンスの出力2.75メガワット(メガは100万)の蓄電池システムを導入したほか、セントリカのソフトウエア「フレックスポンド(FlexPond)」によりデータセンターに安定した送電網対応機能を確保した。

このシステムにより、グーグルは太陽光発電などの再生エネを利用しているデータセンターで、曇天や無風の日のために再生エネ電力を蓄えておくことが可能になる。これにより再生エネの使用量が増え、脱炭素目標に向けて前進できる。

米NVエナジー

関係:提携

グーグルは20年1月、米ネバダ州最大の電力会社の一つであるNVエナジーと提携した。出力350メガワットの太陽光発電と280メガワットのエネルギー貯蔵設備から電力を調達し、ネバダ州ヘンダーソンにあるグーグルのデータセンターを運営する。提携時点では、これは民間企業としては世界最大の太陽光発電と蓄電池を組み合わせたプロジェクトだった。プロジェクトは23年に完成する予定だ。

アマゾン

アマゾンは25年までに事業運営に必要な電力を全て再生エネで賄う目標の達成に向け、蓄電池会社に投資、提携している。世界各地にあるアマゾンのデータセンターに電力を供給・管理するために、既存の電力会社や新興の蓄電会社と提携している。

米AES

関係:提携

アマゾンは22年5月、米国の電力会社AESとの提携を発表した。米カリフォルニア州にあるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のデータセンターなどの事業用に、再生エネ由来の電力の供給を受ける。

AESは新旧プロジェクトによってアマゾンに太陽光エネルギー450メガワットと蓄電システム225メガワットを提供する。これはアマゾンが掲げる25年までに事業運営に必要な電力を全て再生エネで賄う目標の一環だ。

米モキシオン・パワー(MoxionPower

関係:出資

アマゾンは22年9月、気候変動対策に特化した投資ファンド「クライメート・プレッジ・ファンド」を通じ、移動式の蓄電装置を手掛けるモキシオン・パワーのシリーズB(調達額1億ドル)に参加した。モキシオンはアマゾンの映画・テレビ撮影用のセットで、ディーゼル発電機に代わって電力を供給する。

アマゾンは21年、データセンターでモキシオンの製品に似た移動式の蓄電装置を使うと示唆した。小型のバッテリーパックと需要に応じた電力供給によって発電効率を高め、安定を確保できるとしている。アマゾンはデータセンターでモキシオンの蓄電池を使うとは明言していないが、モキシオンは自社の顧客としてデータセンターを挙げている。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません