GoogleとAmazon、データセンター脱炭素化への道

データセンターはクラウドコンピューティングを支える柱だ。データの保存や処理、インターネットへの配信に必要となる物理的なインフラとリソース(資源)を提供している。
だが、データセンターの電力を賄うのは簡単なことではない。データセンターは既に世界の電力消費量の約1%、温暖化ガス排出量の1%近くを占めている。今や生成AI(人工知能)や大規模言語モデル(LLM)など、電力を大量に消費する新たなテクノロジーの利用が急拡大しつつあり、電力の消費量やコストの増加に拍車がかかっている。
企業のこの問題への関心は高まりつつあり、決算説明会でデータセンターのエネルギー消費について論じる機会も増加傾向にある。一方、米グーグルや米アマゾン・ドット・コムなどの巨大テックはデータセンターを持続可能にするテックシステムを導入するため、エネルギー会社と提携している。

今回のリポートでは、グーグルとアマゾンがデータセンターの温暖化ガス排出量を削減し地域の送電網を安定させるために、エネルギー管理にどう取り組んでいるかについて取り上げる。
グーグルとアマゾンはデータセンターをどう最適化しているのか
グーグル
グーグルは自社のデータセンターのサステナビリティー(持続可能性)を向上させるため、複数のエネルギー貯蔵会社と提携している。必要な電力を全て再生可能エネルギーで賄う目標の達成に向け、様々な規模のエネルギー関連会社と共同で蓄電システムを開発している。
米フルエンス(Fluence)、英セントリカ・ビジネス・ソリューションズ(Centrica Business Solutions)
関係:提携
グーグルは2022年4月、ベルギーのデータセンターに同社初の「ゼロエミッション(排出ゼロ)」バックアップ電源システムを構築するため、エネルギー貯蔵システムを手掛けるフルエンスおよびセントリカ・ビジネス・ソリューションズと提携した。グーグルとしてはこれまでで最大の規模となるフルエンスの出力2.75メガワット(メガは100万)の蓄電池システムを導入したほか、セントリカのソフトウエア「フレックスポンド(FlexPond)」によりデータセンターに安定した送電網対応機能を確保した。
このシステムにより、グーグルは太陽光発電などの再生エネを利用しているデータセンターで、曇天や無風の日のために再生エネ電力を蓄えておくことが可能になる。これにより再生エネの使用量が増え、脱炭素目標に向けて前進できる。
米NVエナジー
関係:提携
グーグルは20年1月、米ネバダ州最大の電力会社の一つであるNVエナジーと提携した。出力350メガワットの太陽光発電と280メガワットのエネルギー貯蔵設備から電力を調達し、ネバダ州ヘンダーソンにあるグーグルのデータセンターを運営する。提携時点では、これは民間企業としては世界最大の太陽光発電と蓄電池を組み合わせたプロジェクトだった。プロジェクトは23年に完成する予定だ。
アマゾン
アマゾンは25年までに事業運営に必要な電力を全て再生エネで賄う目標の達成に向け、蓄電池会社に投資、提携している。世界各地にあるアマゾンのデータセンターに電力を供給・管理するために、既存の電力会社や新興の蓄電会社と提携している。
米AES
関係:提携
アマゾンは22年5月、米国の電力会社AESとの提携を発表した。米カリフォルニア州にあるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のデータセンターなどの事業用に、再生エネ由来の電力の供給を受ける。
AESは新旧プロジェクトによってアマゾンに太陽光エネルギー450メガワットと蓄電システム225メガワットを提供する。これはアマゾンが掲げる25年までに事業運営に必要な電力を全て再生エネで賄う目標の一環だ。
米モキシオン・パワー(MoxionPower)
関係:出資
アマゾンは22年9月、気候変動対策に特化した投資ファンド「クライメート・プレッジ・ファンド」を通じ、移動式の蓄電装置を手掛けるモキシオン・パワーのシリーズB(調達額1億ドル)に参加した。モキシオンはアマゾンの映画・テレビ撮影用のセットで、ディーゼル発電機に代わって電力を供給する。
アマゾンは21年、データセンターでモキシオンの製品に似た移動式の蓄電装置を使うと示唆した。小型のバッテリーパックと需要に応じた電力供給によって発電効率を高め、安定を確保できるとしている。アマゾンはデータセンターでモキシオンの蓄電池を使うとは明言していないが、モキシオンは自社の顧客としてデータセンターを挙げている。

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