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次世代の「声」聞いてますか? 10代の意見、経営に反映

SDGsが変えるミライ

SDGs(持続可能な開発目標)を支える次世代の声を経営に反映させようとする動きが出始めている。環境事業などを手掛けるユーグレナは、公募した10代がプロジェクトへの意見を述べる「CFO(最高未来責任者)」のポストを設置。経営に次世代の視点を盛り込み、大人たちだけの考えに偏るのを防ごうとしている。

「CFO」の「F」は「Future」

ユーグレナが2019年、「未来を生きる当事者である子どもたちが議論に参加すべきだ」との思いから設けたポスト「CFO」。「CFO」の「F」は「Future」を意味する。同年代のメンバーらと議論しつつ、同社が持続可能(サステナブル)な会社であるために何ができるかのビジョンをつくるのが主な仕事だ。

2020年秋に2代目の「CFO」についた川崎レナさん(16)は2月、千葉県柏市のラーメン店「Noodles & Cafe MEN-OH」の開業イベントにいた。同店の運営会社の役員が「SDGsを主眼にした新業態のラーメン店をつくりたい」と、ユーグレナに相談。川崎さんたち10代が店づくりや商品のアイデアを出してきたためだった。

店はカフェのようなつくりで、運営会社が別に経営する「町中華」とは大きく異なるイメージにした。店づくりなどの提案には、川崎さんたちとともに、地元の私立麗澤中学・高等学校のSDGs研究会も加わった。同会がフェアトレードで販売する東ティモール産コーヒーや、タマネギの皮など自然素材で染めたエプロンを採用。生ごみゼロや食器の脱プラも実践するようにした。

川崎さんは「利益をお金だけでとらえる考え方は変わる必要がある」と訴え、ラーメン店運営会社の宮崎孝志統括部長ら運営側も「ギリギリの価格設定で試行錯誤したが、町のラーメン屋も食品ロスなどを考えなければならない」という。川崎さんたちが提案した20近い項目のうち、8~9割が実現した。「思いつくままに提案したので、ここまで実現するとは思ってもみなかった」(川崎さん)

執行役員なみの影響力

ユーグレナの永田暁彦CEOが「CFO」のポストをつくる前、思い描いていたのは子どもたちが会社の株を持つ「こども株式」だった。実際の株主総会に準じて、経営陣の提案への賛否について次世代の株主らに問う。ただ年齢などで制度の壁にぶつかった。実現難しく、二転三転して「CFO」ポストを設ける今の形に至った。

永田CEOは「ある程度、強制力をもって取締役会などに声が反映される形にしたかった」と話す。「CFO」は業務委託契約だが、社内では執行役員なみの影響力を持つようにした。「株主や社外取などの役員と同じ並びに『次世代』がいる」(永田CEO)

日経スペシャル SDGsが変えるミライ』25日午後9時放送

 ・老若男女が集う"場"を作る。元サッカー日本代表の挑戦
 ・企業の未来を創る。次世代リーダーの育成活動
 ・育児と保育の負担を軽くする。現場に広がるデジタル化
本記事の関連映像も紹介します。

同社は、1人の従業員に2人の先輩社員らが相談役につく「ペアレンツ制度」を今春導入する準備をしている。この制度も川崎さんたちが提案したものだ。永田CEOは語る。「これだけそばで『次世代』に経営を見られていたら、恥ずかしい選択はできないですよね」

「次世代」をめぐるSDGs、教育も


「次世代」をめぐるSDGsの目標の一つとして、国連は「質の高い教育をみんなに」を掲げる。先進国を中心に保育や教育現場にITツールの導入が進み、保育士や親の事務的な負担軽減につながっている。その分、デジタルとアナログの使い分けなど「子どもたちに本当に大切なことは何か」を考える必要も生まれている。

3月上旬の昼下がり。ぽけっとランド赤羽保育園(東京・北)の0歳児の部屋で、園児らが寝息をたてる様子を2人の保育士が見守っていた。手元にはタブレット端末。眠りについた時間や姿勢を入力し、睡眠中の体調悪化がないことを確認したり、保護者への連絡を記入したりしていた。
使っているのは保育ICTシステム「CoDMON(コドモン)」だ。食事や睡眠時間、排せつなどの情報を入力すると、園側の日誌記録と保護者側のアプリに同時に保存される。こども2人を同園に通わせてきた保護者は「(保育園と連絡事項をやりとりする)連絡帳が手書きだった頃は前日の夜から書き始めないと登園までに間に合わなかった」と話す。

保育そのものをオンラインで提供する動きも出ている。ポピンズは新型コロナウイルスの感染が拡大した20年春から、系列園に通う園児に保育士やほかの園児とオンラインで触れ合うシステムの提供を始めた。「担任の先生に会いたい」と電話してきた園児の声がきっかけだったという。

保育・教育現場でのITツール活用は保育士らの事務作業の負担を軽くし、子どもたちをきめ細かくケアできるようになったとの声が多い。労働環境の改善にもつながる。一方、現場では手書きの文字のあたたかみや保育士手作りのカード、直接のスキンシップなども大切にされてきた。ポピンズの轟麻衣子社長は「本当に子どもにとって大事なことは何かを考える必要がある」と指摘する。

歴史をみれば、「子ども」が「子ども」として扱われるようになったのは大昔ではない。「体の小さな大人」ではなく、子どもにふさわしい扱いをすべきと訴えたのは18世紀の思想家ルソーだった。当時は産業革命の変革期。IT革命で社会が大きく変わる今も、子どもにふさわしい環境を見つめ直す機会かもしれない。
(猪俣里美)

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SDGs

SDGsは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった略語で、国連サミットで2015年9月、全会一致で採択された世界共通の行動目標。国や民間企業の取り組みに関する記事をお読みいただけます。

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