筋ジス治療法、自閉症にも効果期待 マウスで確認
国立精神・神経医療研究センターと東京医科歯科大学は筋肉が衰える難病「筋ジストロフィー」の治療法で自閉スペクトラム症(自閉症)も治療できる可能性を示したと発表した。マウスを用いた実験で、筋ジストロフィーに見られる遺伝子変異が自閉症の症状にも関連することを発見した。既に実用化された筋ジストロフィーの治療薬などを用い、この症状の改善にも成功した。
「デュシェンヌ型」と呼ばれる筋ジストロフィーの患者では、特定のタイプの遺伝子変異があると社会的コミュニケーションの異常といった自閉症の症状も見られやすいことに着目した。この遺伝子変異により、感情をつかさどる扁桃(へんとう)体で一部の神経細胞(ニューロン)の機能が下がることをマウスの実験で確かめた。
さらに、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬と同様の仕組みを持つ核酸医薬をマウスの脳内に投与した。変異で失われたたんぱく質が作られるようになり、低下していたニューロンの機能や社会的コミュニケーションが正常になった。この薬剤は遺伝子からたんぱく質を作り出す過程に働き、変異の周辺部分を読み取らないようにしてたんぱく質を正常に作れるようにする。
このたんぱく質を作らせる機能を持つメッセンジャーRNA(mRNA)を投与しても同様の効果が見られた。研究チームは今回の成果を踏まえ、既に承認された核酸医薬を自閉症治療に応用できるか検討するという。