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ガソリン高、沖縄・山形も常連に 地域差が映す構造変化

2021年11月には約7年ぶりの高値を付けたガソリン。原油高はガソリン価格を押し上げる大きな要因だが、過去10年の価格の推移を都道府県ごとに見てみると、その動きには地域差も目立つ。背景にあるのが製油所の閉鎖やガソリン需要の減少だ。「脱炭素」が進むなか給油インフラをどう維持していくのか、課題も浮かび上がる。

資源エネルギー庁が公表する週次のデータをもとに、全国のガソリン価格について12年から21年まで10年分の年平均を計算すると、121円(16年)から163円(14年)の幅で動いていた。都道府県別で「割高」ぶりが目立つのは長崎県だ。単年では計7年で最も高く、全国平均との差は最大で11円超。鹿児島県は21年を含む3年で1位だった。

ガソリンの小売価格は原油相場や周辺スタンドとの競合状況のほか、輸送費の影響を受けやすい。長崎県や鹿児島県は離島が多いことなどから、ガソリンの輸送価格が高くなりがちだ。両県は都道府県ごとの記録が残る04年ごろから常に高めだった。

製油所廃止で輸送コスト上昇

一方、全国の動きと連動しない形で全国平均と比べて割高の常連になった県もある。代表格が沖縄県だ。

沖縄県では本土復帰した1972年以降、揮発油税などが軽減されている。その額は1リットル当たり7円で、かつてはガソリン価格が全国的に見て安い県だった。12年当時は47都道府県のうち3番目に安く、全国平均を3円程度下回っていた。ところが16年には全国平均を5円超上回る水準になり、全国で3番目に高くなった。17年は全国2位の高さだった。

石油産業が専門の桃山学院大学、小嶌正稔教授は「南西石油(沖縄県西原町)の製油所閉鎖が要因の一つだ」と指摘する。南西石油の製油所は沖縄県唯一の製油所だったが15年、経営の悪化などを理由に、当時の親会社だったブラジル国営のペトロブラスが精製を停止。翌16年には正式に廃止された。

現在もガソリンなどを一時的に貯蔵する油槽所としては稼働しているが、一般的に原油はガソリンなどの石油製品の状態よりも大量輸送に向いており「製油所閉鎖で輸送コストが高くなった可能性がある」(内閣府沖縄総合事務局)。この輸送費や油槽所の賃料などが、全国と比べ割高な県に転じた要因とみられている。

小嶌教授は製油所だけではなく、石油産業の再編が地域のガソリン価格に影響を与える可能性を指摘する。企業の経営統合などを機に油槽所の運営方針が変わり、地域によっては独立系のガソリンスタンドがガソリンの調達ルートを見直す必要が出てくる例もあるという。

厳しさ増すガソリンスタンド経営

ここ数年でじわり高くなっているのが山形県だ。山形県の20年度の揮発油販売量は13年度比で17.4%減り、東北6県全体(13.8%)と比べても減少幅が大きかった。

販売量が減ればガソリンスタンドの経営は厳しくなる。市場が縮小する中では価格を下げても販売量の増加は望みにくい。「新型コロナからの戻りも鈍い。少ない販売量で経営を維持しようと、値段を下げにくい心理が働いているようだ」(山形県石油商業組合)

国内産業の低迷や自動車の燃費改善も一因になって、製油所やスタンドは全国的に減少している。石油連盟によると、11年時点で27カ所あった製油所は21年3月末には21カ所になった。スタンドは1994年度末の約6万カ所がピークで、2020年度末には半分の約2万9000カ所まで減っている。

ガソリンの販売量は今後も減少が避けられない。値動きの地域差から見えてくる、市場縮小による価格上昇の構造。今は一部の地域で顕著だが、やがて全国の問題になる可能性がある。

「SS過疎地」市町村の2割

経営悪化を背景にガソリンスタンドが全国的に減少する中で、1つの市町村の中に給油所が3カ所以下しかない「SS(サービスステーション)過疎地」が広がっている。経済産業省によるとSS過疎地は2012年度末の257市町村から20年度末には343市町村まで増加。全国の市区町村の2割を占め、スタンドが1つもない市町村は青森県西目屋村など10町村ある。

こうした地域では車や農機などへの給油、冬場の灯油確保などに悪影響が出かねない。福島県三島町では20年12月、全国的にも珍しい公設民営のスタンドができた。町内唯一のスタンドが閉鎖されたためだ。ただ「冬は灯油の需要が多いが、夏の経営は厳しい」(三島町役場)状態で、国や町の補助金が無ければ赤字。持続性に課題が残る。

(柘植衛)

ガソリンにはノッキング現象と呼ばれる異常燃焼をしないように、添加物が入っている。異常燃焼の起こりにくさを示す指標が「オクタン価」で、レギュラーは89以上、ハイオクは96以上と定められている。レギュラーは相互に融通しやすいように日本の石油元売り3社が同じ規格で製造しており、どのスタンドで給油しても製品の中身や基本的な性能に違いは無い。

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