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値下げ傾向の自動車保険 損保各社「古いクルマ」に照準

日経ビジネス電子版

2023年1月、損害保険各社は自動車保険の商品改定を実施し、大手2社が値下げに踏み切った。事故件数の低減などを背景に、近年は保険料水準が引き下げ傾向にある。そんな中で各社は、保険料収入を高めようと、近年の車の保有スタイルの変化に合わせた特約をそろえ始めた。

契約によっては値上げとなる場合もあるが、1月の改定では損害保険ジャパンと三井住友海上火災保険が平均的な保険料水準を若干引き下げた。21年以降、自動車保険の保険料水準は引き下げ傾向にある。背景にあるのは事故件数の減少だ。警察庁によると、交通事故の発生件数は04年の約95万件をピークに年々減り、19年には60年ぶりに40万件を割り込んだ。自動車の安全性能やドライバーの安全運転に対する意識の向上などが背景にあるとされる。

事故件数はピークの3分の1

19年の交通事故発生件数は38万1237件、20年は30万9178件、21年は30万5196件。新型コロナウイルス禍が始まった20年以降は、外出控えの影響で事故の発生件数が顕著に減った。それに伴い、各社の自動車保険の保険金支払いも減っている。

足元では経済活動の正常化や修理費の高騰など、保険金支払いが増える要素もある。ただし、損保の業界団体である損害保険料率算出機構がはじき出す、損保会社が保険料のベースにする「参考純率」には、コロナ禍による事故減少がまだ織り込まれていないため、短期的には保険料のさらなる値下げも想定される。安全性能が高い車や自動運転技術の普及などで事故発生件数の減少に拍車がかかり、中長期的に保険料水準の引き下げ傾向が続く可能性がある。

値下げの恩恵を受けるのは主に無事故歴が長く、等級が高いドライバーだ。最高の20等級に当てはまる契約者は年々増加しており、損害保険料率算出機構によると20年度には契約者全体の5割にまで達した。損保各社は「値下げした分、これまで契約者が費用面を鑑みて付けたくても付けられなかった補償を付加する特約を提案する機会だ」(損保ジャパンの担当者)と捉えている。

消費者の自動車購買行動も大きく変化してきた。足元ではコロナ禍でのサプライチェーン(供給網)の混乱による新車の納期遅れによって中古車を選ぶ人が増えており、中古市場価格は高騰している。加えて車の耐久性が高まっていることもあり、老朽化による買い替えの必要性も減ってきた。こうした事情により、比較的古いクルマに乗り続ける人が増えている。

損保各社はこうしたトレンドに合わせて、長期間乗り続けたクルマへの補償を手厚くする内容の商品改定を進めている。

東京海上日動火災保険は初めての自動車登録から84カ月を超えたクルマを対象に、故障による車両の損害を10万円まで補償する特約を、一定の条件に該当する契約についてこの1月改定から自動付帯とした。登録月の翌月から60カ月以上のクルマを対象に100万円の補償を限度とする、内容が似た任意付帯特約を先駆けて導入している損保ジャパンでは、22年9月時点で同特約の加入件数が10万件に達した。

損保ジャパンは事故時に全損、または修理費が新車価格相当額の50%以上となった際、新車価格相当額を限度に保険金を支払う特約について、1月から車両保険金額が新車価格相当額の50%以上の場合はどんなに古いクルマでも付帯できるようにした。従来は自動車登録翌月から満期までの経過月数が74カ月以上になる契約には付帯できなかった。他の大手3社の同様の特約と、付帯条件をほぼ同様とした形だ。

三井住友海上とあいおいニッセイ同和損害保険は、登録の翌月から61カ月を超え車両保険金額が新車価格相当額の50%未満となる契約向けに、車が全損状態となったときに車両保険金額の2倍、もしくは車両保険金額に100万円を加えた額を限度に支払う特約を1月に新設している。東京海上は同様の特約を22年1月に導入しているが、23年1月からは廃車や買い替え時の諸費用に充てる分として別に支払う保険金の額を引き上げている。

ドライブレコーダー設置で恩恵も

優良ドライバーの契約向けの増収策として、各社はドライブレコーダーを貸し出す特約など、いわゆる「テレマティクス保険」と呼ばれる領域も強化している。

あいおいや損保ジャパンは、ドライブレコーダーなどから得た走行データを基にはじき出した安全運転の度合いに応じて保険料を割り引く。等級別の割引率が上限に達した20等級のドライバーにも保険料を割り引く余地をつくり、シェア拡大を図っている。東京海上はドライブレコーダー特約契約者向けのスマホアプリを通じ、優良ドライバーにコンビニなどで使える電子クーポンを配布するサービスを22年末から始めた。

日本でも物価高が顕著になってきており、消費者のコストパフォーマンスへの意識が高まっている。各社の自動車保険を比較するウェブサービスの利用なども一般的になっており、カーライフのスタイルに合った最適な自動車保険を選ぶ傾向は、一層強まっていきそうだ。

(日経ビジネス 高尾泰朗)

[日経ビジネス電子版 2023年1月19日の記事を再構成]

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