リッチモンド、eスポーツや日本文化を体験できるホテル

外食大手ロイヤルホールディングス(HD)は22日、27日に新装開業する東京・押上のリッチモンドブランドのホテルを報道陣に公開した。新型コロナウイルスの感染拡大前は浅草などを訪れる訪日外国人やビジネス客が多かったが、eスポーツを体験できる部屋などを設け、国内の若年層や滞在自体を目的とする需要を取り込む。同社はビジネスホテル以外の高単価領域を強化する方針で、押上を足がかりにする。
「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」として開業する。京成線や東京メトロなどが通り、東京スカイツリーの最寄り駅である押上駅から徒歩1分。同地にはもともとロイヤルHD傘下のアールエヌティーホテルズが運営するホテルがあり、営業を続けながら、10月から受付のある5階と客室の6階、13階の改装工事をしていた。
「これからは訪日客だけではなく、国内客のレジャー需要なども満たす必要がある」。アールエヌティーホテルズの本山浩平社長は力を込める。リッチモンドホテルの主な客層は出張などのビジネス客や訪日客だった。「出張利用は先細る。東京の人が非日常を求めて自宅近くのホテルに泊まるなど、需要が多様化している」(本山社長)とみる。
このため、13階は部屋ごとに特色を持たせた。まず、32部屋のうち4部屋をeゲームに特化した客室「トライアルゲーミングルーム」に改装した。大型モニターとコンピューター、専用のゲーミングチェアを置いてeスポーツを楽しめる。1室あたりの単価は1万5500円からで「興味はあるけど一度試してみたいといった消費者に応えられる」(担当者)。
日本文化をテーマにした部屋も用意した。通常の客室の約3倍にあたる70平方メートル強の大きな部屋に、畳やちゃぶ台を配する。長期滞在する訪日客向けにキッチンも取り入れた。4人まで宿泊でき、1室単価は4万2000円からと手ごろな価格だ。
このほか、「蔦屋書店」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が独自に選んだ、芸術や食など分野別に多くの本を並べた客室「ブックルーム」もある。

6階にはサウナと大浴槽、水風呂を併設した部屋も用意した。パートナーや家族でも楽しめる設計で近年のサウナブームを取り込む。
また、5階にはCCCが展開する「シェアラウンジ」を設けた。軽食を楽しめるラウンジとシェアオフィスの機能を併せ持った空間で、今後は宿泊客と地域住民が交流できるイベントも催す予定だ。
政府の水際対策の緩和や観光喚起策「全国旅行支援」を受けてリッチモンドホテルの客室稼働率や客室単価は回復傾向だ。9月時点で既に稼働率は85%、既存店売上高の2019年同月比は8割にまで持ち直した。本山社長は「(押上の)改装費用は通常の約2倍だ。他施設よりも早く単価と稼働率を19年の数字に戻し、超えていく必要がある」と語った。消費者の反応や売り上げなどを見つつ、横浜や京都のホテルへも展開していきたい考え。