車各社、小型船も電動シフト ヤマハ発は操船システム
ヤマハ発動機やホンダが小型船舶の電動シフトに乗り出した。ヤマハ発はジョイスティック型機器などで操縦しモーターで動く電動操船システムの国内発売に向けて実験を始めた。ホンダは船外機のエンジンとガソリンタンクをモーターと電池に置き換えた試作機の製品化に動く。脱炭素は船による輸送など海上交通でも急務だ。ただ電池や船の性能などで電気自動車(EV)以上に課題が多く、各社とも開発を急ぐ。
ヤマハ発は「HARMO(ハルモ)」と名付けた電動操船システムの国内発売を検討中だ。電池を搭載しており、小型ボートを時速5キロメートル程度で約5〜6時間航行できる。
北海道や徳島県などで試乗会などを通じた運航実験を始めた。静粛性が高く直感的に操作できる。小回りもききやすい。湖や河川巡りなどの観光需要を見込む。船の電動化で先行する欧州では2022年にすでに発売している。
ヤマハ発は23日、横浜市で開いた展示会にハルモを出品して顧客の需要を探った。「日本での発売時期は検討中だが、先行発売した欧州では引き合いが強い」(ヤマハ発の井端俊彰マリン事業本部長)という。

ホンダは小型の電動船外機の試作機を造り、時期は未定だが日本などでの導入を目指して開発に入った。現時点では、5人ほどが乗る小型ボートを動かせる出力を持ち、時速20キロで40分程度動かせるという。電池を交換式にしたのが特徴で、利便性を向上させるため二輪車向けなどと規格を共通にして使い回せるようにすることも視野に入れる。
現状、製品が少なく船舶の電動シフトはほとんど進んでいない。価格が高く、重い電池などが課題で普及に向けたハードルはEVよりも高い。
日本マリン事業協会の渡部克明会長は「脱炭素のため電動化や水素エンジンなどの選択肢があり検討が必要だ。航続距離などを考えると現時点では電動化だけでの対応は難しい」と指摘する。
ただ、世界の船外機でヤマハ発など日本メーカーのシェアは半分を超えているとされる。電動シフトに出遅れれば、米テスラや中国勢が先行したEVのように他メーカーに市場を奪われかねない状況だ。
内燃エンジンを使った船では、トヨタ自動車がカスタム部品ブランド「モデリスタ」と連携させて装飾や色合いなどのデザイン性を高めた「PONAM-31 Z Grade(ポーナナム31ゼッドグレード)」を22年秋に発売した。新型コロナウイルス禍で認知度が上がった働きながら休暇を楽しむ「ワーケーション」の需要や大人数でのパーティーなどが楽しめるように船内スペースを広くとった。
スズキが一部の船外機向けにマイクロプラスチックを回収できる装置の生産を始めたと発表するなど、車メーカー各社が船関連の新製品を発売する動きが相次いでいる。
(行方友芽)