電通大、指をバラバラに動かせる義手を開発 AIを活用

電気通信大学の山野井佑介特任助教らの研究グループは、人工知能(AI)を使って筋肉が発する電気信号を読み取り5本の指をバラバラに動かせる義手を開発した。ビー玉をつまむなど細かい作業ができる。同大発のスタートアップを通じてこのほど売り出した。他社従来品では手を握ったり、開いたりする単純な動作しかできなかった。
開発した義手は腕の筋肉の動きによって発生する電気信号を検知し、動作する筋電義手の一種だ。研究グループは利用者の筋肉の動きのパターンをAIで分析する手法を開発し、利用者が登録した電気信号に応じて義手の動きが変えられるようにした。実験では義手を4種類程度の形に変えられたが、機能上は8種類まで可能だという。
「握る」「つまむ」といった3種類の動作で85%程度の生活動作に対応できるという先行研究もあり、4種類で日常的に高頻度で使う動作に対応できる。利用者からは「以前より細かい動作ができた」といった声もあがる。
従来の義手ではあらかじめ決めた電気信号を送るためにリハビリなどで腕の動かし方を学ぶ。利用者ごとの違いを反映できず、使いづらい面があった。
従来品では400~500グラム程度だった重さも330グラムに軽量化できた。「義手は腕にかかる負担が大きく軽さは重要だ」(山野井特任助教)という。5キログラムのかばんを持てるほか、1回の充電で2.5時間程度の連続稼働が可能だ。
開発した義手は国産の5指が独立で動く電動義手として初めて厚労省で認定を受けた。研究グループの横井浩史教授が最高経営責任者(CEO)を務めるスタートアップMu-BORG(ミューボーグ、東京都調布市)で義手をつくる際に必要な複数の部品を販売中で、利用者は自己負担1割で購入できる。