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カインズ、都心部に攻勢 東急ハンズ買収で客層拡大

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ホームセンター最大手のカインズは、都心部に強い東急ハンズ(東京・新宿)の買収により郊外主体の店舗網をつくり直す。これまでIT(情報技術)による経営効率の改善に力を入れてきた。その効果が出始めたところで200億円超を投じ、手薄だった若者向けの品ぞろえが充実している東急ハンズを傘下に置き、業容拡大を急ぐ。

カインズは群馬地盤のベイシアを中核とするベイシアグループの1社で、アパレル大手のワークマンなど成長企業がグループにいる。ベイシアグループは各社の自主性を重んじて専門性を磨く経営で業績を伸ばし、2020年度に初めて売上高が1兆円を超えた。

カインズ自身もワークマン同様に製造小売りによる安い自主企画商品(PB)を武器に19年度に売上高が4410億円となり、DCMホールディングスを超えて最大手になった。

そのカインズが初めての買収を決めた背景には、ホームセンター業界への危機感がある。経済産業省によると19年度のホームセンター市場規模は3兆3010億円と、15年度比0.4%減った。一方、店舗数は4355店と3.2%増えた。20年度は巣ごもり需要で一時的に盛り上がったが、オーバーストアの状態で先行きは厳しい。

カインズは飽和状況を打破するために郊外への積極出店を取りやめ、19年に「IT(情報技術)小売企業」を掲げて小売業界ではデジタル改革の先陣を切ってきた。3年間でデジタル関連に100億~150億円を投資し、「ゲームチェンジを打ち出してきた」(高家社長)という。

本社は埼玉県本庄市にあるが、東京・表参道にIT部隊の拠点を設立。10万品種にも及ぶ商品が売り場のどこにあるか一目で分かるアプリを開発。生産効率を高め、経常利益率も約8%と他の大手(6~7%台)と比べ高い。店舗改革の効果が出てきたと判断し、東急ハンズの買収による攻めの投資で郊外主体の脱却をめざす。

東急ハンズは都心部を中心に国内外で86店舗展開する。豊富な品ぞろえで消費者の支持を集めてきた。ただ外出自粛や時短営業などの影響を受け、厳しい状況が続く。21年3月期の連結売上高は631億円で前の期比35%減った。コロナのせいだけではなく独自商品が充実していないからだ。

東急ハンズの売上高に占めるPBの比率は全体の10%程度にとどまる。従業員のノウハウで魅力ある商品を仕入れられれば来店者を呼び込める。一方、仕入れコストが膨らみ、価格面でも思い切った手を打てない。

カインズはPB商品などを強みとしており、自前のPBのノウハウをいかせば東急ハンズの商品力を高められるとみる。

20年には神奈川県海老名市で都心1号店を出店した。「都市部に店舗を構えている東急ハンズと相互補完できる部分がある」(高家社長)と判断し、東急ハンズの店舗をいかして都市部の需要取り込みを急ぐ。買収後は一定期間後に「東急」を冠した店舗名を変える。

グループ企業の独立経営を重視してきたベイシアにとって、初めての買収の相乗効果をどう引き出すかが課題となる。

ベイシアグループはカインズ、ワークマンなど主要企業の幹部がオンライン会議でノウハウを共有する会議を20年に始めた。通常のグループで当たり前のような取り組みも従来は自主性を重んじ、手掛けていなかった。

自主性を重視する姿勢はイオンなどに対抗するための原動力となったが、いまは連携を重視する姿勢に切り替えつつある。こうしたなかでグループ経営をどう高めるか、今回の買収はその試金石となりそうだ。

買収後に店名変更も

カインズの高家正行社長は22日開いた記者会見で、自社のプライベートブランド(PB)商品を東急ハンズでも販売するなどして収益力を高める考えを明らかにした。主なやり取りは次の通り。

――買収協議はいつごろ始めましたか。

「時期については差し控える。東急ハンズの屋号については今は『東急』が使われているが(買収すると)様々な課題がある。東急グループを離れる以上変更を検討する必要がある。現在の店舗名を一定の期間は使うことについては了解をいただいている」

――買収を決断した理由は。

「これまでカインズでM&A(合併・買収)はしなかった。市場が飽和するなかで、単純な規模拡大は追求しない。今回は買収というよりパートナーとして迎え入れた。(消費者は)家事や料理をきっかけにカインズに来るし、困りごとを解決するために東急ハンズに行く。両者が連携して新しい暮らしを根付かせたい」

――足元で東急ハンズの業績が厳しいです。

「東急ハンズは(創業した)45年前から生活文化をつくってきたのが最大の魅力だ。実現できたのは(従業員の)深い商品知識があったからだ。(商品を売り場に並べるための)編集力や目利き力は一朝一夕では作れない。カインズのノウハウと同様に、東急ハンズの接客や知識は一夜にしてできるものではない」

「休業・時短勤務や訪日客需要の喪失により、都心部の店舗が多い東急ハンズは新型コロナウイルスの影響を受けやすかった。(買収で)必ず価値は磨かれ、業績も回復するはずだ」

――具体的にはどうテコ入れしますか。

「カインズが主に出店してきた(郊外)エリアと相互補完がある。ハンズの売り場にカインズの商品を並べることで価値を提供できるならやっていきたい。逆にカインズは来店者が多い。東急ハンズの商品をカインズに置くメリットがあるならば(売り場に)導入していく」

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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