JERA、欧州再エネ大手を買収 2200億円で

東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAは22日、ベルギーの洋上風力発電大手、パークウィンド(ルーバン市)を15.5億ユーロ(約2200億円)で完全子会社化すると発表した。日本企業による再生可能エネルギー会社買収としては過去最大規模となる。これまでJERAは洋上風力開発にあたって日本に近い適地である台湾中心の戦略を組み立てていたが、市場が先行する欧州に手を広げて電源を分散する。
JERAが英子会社を通じて、パークウィンド親会社のビリヤエナジーから株式の100%を取得する。株取得は2023年内に完了する予定だ。資金は借り入れや社債発行でまかなう。今回の買収でJERAの再生エネの発電容量は権益の持ち分に応じた容量ベースで280万キロワットと従来比60万キロワット増えることになる。
パークウィンドは洋上風力の開発から運転まで10年以上かかわってきた実績と水素製造の知見をもつ。ベルギーとドイツで風車を海底に固定するタイプの洋上風力を手掛ける。現在の容量に加えてさらに20年代後半にかけて、欧州などで約450万キロワットの洋上風力プロジェクトの開発を予定する。
これまでJERAの洋上風力は出力ベースで全体の9割の電源が台湾に立地し、リスク分散が課題だった。同社は同日、台湾で進めていた洋上風力事業「フォルモサ3」(最大出力200万キロワット)の権益を仏エネルギー大手のトタルエナジーズなどに売却する手続きを進めていることも明らかにした。
建設費の高騰で採算悪化が見込まれ新規開発への参画が困難になった。台湾域内からの調達拡大を求める制度改定や、固定価格買い取り制度(FIT)による売電単価の引き下げも負担となっていた。
現状約44%の権益を保有しているが、22年末までに台湾当局にプロジェクトから手を引く意向を通知しており、トタルなどに出資分を全て売却する。稼働済みの「フォルモサ1」(12.8万キロワット)と近く稼働する「フォルモサ2」(37.6万キロワット)の2つの洋上風力プロジェクトについては事業を継続する。
今後は欧州を中心にM&A(合併・買収)も活用して洋上風力事業の拡大を進める。再生エネ開発にかかわる人材も台湾から一部を欧州などに移すことも検討する。同日、オンラインで開いた記者会見でJERAの松田健・海外洋上風力事業部長は「アジアを含めグローバルで再生エネなどの開発を拡大していく」と話した。
JERAは25年までに国内外で計500万キロワットの再生エネを開発する目標を掲げる。火力発電所では今後、化石燃料に環境負荷の低い水素やアンモニアを混ぜて発電する取り組みを始める。将来はパークウィンドの知見を活用し、再生エネ由来の電力で水素やアンモニアを調達・製造することを目指す。

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