USB端子の性能を徹底比較 こんなに違う「A」と「C」
USB Type-C あるある落とし穴(2)
複雑怪奇な規格と仕様のUSB Type-Cを理解する連載の2回目。今回からはQ&A形式でType-Cの迷宮を解き明かしていこう。
Q:Type-C端子の規格は見分けられる?
自分のパソコンに搭載されているUSB端子の規格は何か──。 従来のType-Aだったら端子を実際に見て、内部の色やピン数から規格を推測できるが、Type-Cではこういった方法が通用しない(図1)。というのも、3.2、USB4といった規格に起因するデザイン的、構造的な違いがType-Cにはないからだ。端子の形状を見て規格がわからないのも、Type-Cがややこしい理由の1つ。基本に立ち返ってメーカーサイトの仕様で確認しよう。

パソコンにType-C端子が搭載されるようになってから、メーカーのスペック表も複雑になった。記載内容をしっかりと読み解こう。例えば図2のパソコンは、USB3.2 Gen 2のType-C端子が1つと、3.2 Gen 1のTypeーA端子が2つ、2.0のType-A端子が1つという構成だ。Type-A端子のうち1つは電源オフ充電にも対応している。このほか、USB4とサンダーボルト4の規格に両対応したType-C端子、オプション規格のオルタネートモードやUSB PDに対応したType-C端子などもある。

端子近くにあるマーク(アイコン)は規格の判断材料になる。マークに「SS」と付いていれば3.2 Gen 1で、逆にマークがなければ2.0の可能性がある。「3.1」マークが付いているなら3.2 Gen 2だ(図3)。

以上はType-AとCで共通。一方、稲妻の矢印マークはサンダーボルト3もしくは4を意味し、Type-Aに矢印のない稲妻やコンセントのマークが付いている場合は電源オフ充電に対応した端子だ。

Q:Type-CはType-Aより高速なの?
Type-C端子は2017年ごろからパソコンや周辺機器で使われるようになった。だが「新しいから無条件に速い」というわけではなく、Type-A端子よりも転送速度が遅いType-C端子もある(図4)。Type-A、Cといった端子の形状と、2.0、3.2、USB4といったUSB規格(転送速度)は、基本的に無関係(例外もあるが)と割り切って考えたほうがよい。

Type-AとCで利用できるUSBの規格を図5にまとめた。2.0と3.2 Gen 1、同Gen 2はType-AとCのどちらでも使える。同じ規格なら端子がAでもCでも転送速度に違いはないので、例えばパソコンに3.2 Gen 1のType-AとCの端子が両方あるなら、どちらにUSBメモリーを挿してもかまわない。

注意したいのはUSB3.2 Gen 2×2とUSB4 Gen 2×2、同Gen 3×2の3つだ。この3つの規格はType-C端子でしか実現できないので、対応機器は必ずType-Cに挿して使う。Type-A端子に挿すと性能が出ないこともあるので注意しよう。
旧世代の2.0規格がType-Cの端子として現役なのは、電力供給のためだ(図6)。データ転送と給電の規格は別物であり、Type-CのほうがType-Aよりも供給電力が大きい。データ転送を主目的としない給電専用なら、2.0規格のほうがケーブルを安価に作れる。大電力規格のUSB PDを使う際も同様で、PD対応のケーブルであれば、USB規格が2.0であっても問題はない。


Q:外付けSSDはType-Cにつなぐべき?
最近はポータブルHDDの代わりにポータブルSSDを使う人も増えてきた。ほかの携帯ストレージを圧倒する高速転送が魅力だが、迷うのがパソコンとの接続。ポータブルSSDにはType-AとCの両方のケーブルが付属する製品もあり(図7)、どちらを使うべきか悩ましい。

パソコン側のType-AとC、どちらに接続するかはSSDの転送速度を基準に考える。最大転送速度が500MB/秒以下のSSDなら、同等の転送速度を持つ3.2 Gen 1のType-A端子につないでも性能をフルに発揮できる(図8、図9)。このタイプのSSDは「SATA(シリアルATA)」という内部インターフェースを採用しており、仕様にSATAと記載されていればType-AでOKと判断してよい。


500MB/を大幅に超える高速SSDは、Type-Aではなく3.2 Gen 2以上のType-Cにつなぎたい。Type-Aは500MB/秒で頭打ちとなり、高速SSDの性能を引き出せない。そうした製品は「PCIe」「NVMe」と呼ばれるタイプで、仕様にそうした記載があれば3.2 Gen 2以上のType-Cに挿すべきだと判断できる。実際に、SATAとPCIeのSSDでテストした結果を図10、図11に示す。



(ライター 石坂勇三)
[日経PC21 2022年2月号掲載記事を再構成]
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