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スパコン富岳、計算速度で3連覇 防災や車設計に活用拡大

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理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、28日に公表された世界のスパコンの能力ランキングで首位を維持した。2020年6、11月に続き3期連続で米国や中国の計算機を上回った。高い計算能力を車の設計などの産業用途や防災対策に活用する動きが広がっている。

富岳は11年に世界一となった国産スパコン「京(けい)」の後継機。専門家の国際会議で公表されたランキングで、1秒あたり44.2京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を達成。2位だった米国の「サミット」(14.8京回)など米中のスパコンを大きく上回った。

理化学研究所などは富岳の開発にあたり、利用促進のためソフトウエアの作りやすさに配慮したという。東北大学は南海トラフ沿いで巨大地震が起きた際の津波予測に、東京大学などは相模トラフ地震の被害の研究に富岳を活用している。

日本自動車工業会は富岳で車の構造と衝突のダメージの関係を分析し、衝突に強い車の構造を見つける。自動車各社が分析結果を実際の車づくりに応用する。富岳は3月に本格運用が始まっており、今後も産業利用が広がると期待される。

米国や中国は富岳以上のスパコンを年内にも投入することを目指している。両国は産業用途だけでなく、軍事研究の目的も想定し、核兵器を含む先端兵器の開発に利用しているとみられる。

ランキングのエネルギー効率部門では、人工知能(AI)開発を手がけるプリファード・ネットワークス(東京・千代田)のスパコン「MN-3」が1年ぶりに首位になった。

「富岳」創薬・素材で活用 米中猛追、逆転される恐れも


富岳の活用が先行して進むのは新型コロナウイルス関連の研究だ。理化学研究所などは23日、インド型(デルタ株)は従来型に比べて飛沫感染の感染リスクが約2倍高いことを明らかにした。

富士通子会社の富士通Japan(東京・港)は6月から、富岳の高いシミュレーション(模擬実験)能力を生かし、新型コロナ治療薬の候補物質の探索を始めた。

素材開発でも威力を発揮すると期待される。住友ゴム工業は劣化しにくい低燃費タイヤの開発に富岳を利用する。

世界では次世代計算機の量子コンピューターも実用化に向けた開発が進む。将来的には蓄電池開発などでの利用が期待されているが、現時点では研究段階にとどまる。幅広い用途での活用が期待できる点で、当面はスパコンが高速コンピューターの主役を担うことになる。

富岳が3連覇したものの、近年のスパコン開発競争の主役は米中だ。米国は計算速度が富岳の2倍以上となる「エクサ(エクサは100京)級」の次世代機を開発。21年中の稼働を目指し、オークリッジ国立研究所の「フロンティア」とアルゴンヌ国立研究所の「オーロラ」のどちらが先行するか競っているとされる。

中国も開発の実態はベールに包まれているが、かつて世界最速を誇ったスパコンの後継機にあたる「天河3号」の計画などが取り沙汰されてきた。エクサ級スパコンの早期実現を目指しているとみられ、21年中に登場する可能性もある。米中は量子コンピューターの開発競争も主導している。

米商務省が4月、中国でスパコン開発を手掛ける企業など7社・団体に事実上の禁輸措置の発動を明らかにするなど、スパコンは米中がしのぎを削る分野だ。産業競争力や安全保障に関わり、米中は国家の威信をかけて競い合う。

日本も今後、仮にスパコンで首位から陥落し存在感が低下すれば、強みであるものづくりにも影響が及びかねない。文部科学省の検討部会では「ポスト富岳」の議論も始まったが、日本として戦略をどう描くか、官民を挙げた重要な課題になる。

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