月着陸断念の「オモテナシ」、来春以降に別実験めざす
日本初の月面着陸を断念した超小型探査機「オモテナシ」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、通信が不安定になった原因などの調査や今後の対応を検討する対策チームを設置したと発表した。2023年3月以降に太陽電池が太陽の方向に向いて充電できるようになれば、電源や通信を確保できる可能性があるという。復旧できれば月着陸以外の実験を検討する。

JAXAは22日にオンラインで記者会見を開き、オモテナシの詳細な運用状況や今後の見通しを説明した。プロジェクトを率いるJAXAの橋本樹明教授は「皆さまからの期待も高かったが、月面着陸ができず大変申し訳ない」と話した。
オモテナシは米国主導の有人月探査「アルテミス計画」の第1弾として米国が16日に打ち上げたロケットに搭載された。旧ソ連、米国、中国に次ぐ4カ国目となる月面着陸を目指していた。開発費は数億円規模で低コストの探査手法の検討に役立てる狙いだった。
ロケットからの分離には成功したが、継続して通信ができない状態が続いた。太陽電池が太陽と逆の方向を向き、想定を超す高速で回転し姿勢制御が困難になった。22日午前2時になっても探査機の電波を地上から確認できなかったため、月への着陸を断念した。22日午後2時の時点でも電波をとらえていないという。
オモテナシは月を離れ、太陽を周回する軌道で移動している。JAXAの推定によると、23年3月ごろから太陽電池に太陽の光が届く可能性があり、7月には太陽の方角に最も向きやすくなる。今後は探査機への通信や電力を復旧させた後、放射線量の計測や搭載する固体ロケットの点火などの実験の実施を目指す。
ただ月面着陸は不可能になった。着陸に挑むこともできなかったことから、橋本教授は「失敗以上の失敗だ」と悔やんだ。
日本初の月面着陸に向けては次の計画が控えている。宇宙開発スタートアップのispace(アイスペース、東京・中央)の月着陸船が28日に米スペースXのロケットで打ち上げられる計画だ。月への到着は5カ月後となる見通しだ。