住友鉱山、パワー半導体材料の開発設備を新設

住友金属鉱山は22日、電力の供給や制御を担う次世代パワー半導体材料の基板となる新たなウエハーの開発に向け、試作品用の設備を新設すると発表した。産業用結晶材料などを手掛ける子会社の大口電子(鹿児島県伊佐市)の本社工場内に開発用の製造ラインを設ける。2024年3月に完工する予定。
開発するウエハーは直径は8インチの円盤状。17年から量産に向けた実証を進めている直径6インチの製品よりも大きく、効率的にパワー半導体の量産が見込める。大量の電気が流れる電気自動車(EV)のインバーターや車載充電器などへの採用を見込む。
素材には炭化ケイ素(SiC)を用いる。SiCの素子は従来品に使われているシリコン(Si)の素子に比べて電気抵抗が少なく、効率よく電気を流すことができる。インバーターや充電器などの電力損失を抑え、EVの航続距離の向上が期待できる。パワー半導体の高性能化にもつながり、装置全体を小型・軽量化できる。
結晶が規則正しく並んでいないため割安に入手できる「多結晶SiC」の下地の上に、電力ロスを大幅に抑えられる高価な「単結晶SiC」を貼り付けて1枚のウエハーにする独自技術を応用する。単結晶SiCのみを使った従来品に比べて安いのも特徴だ。
試作品用の設備の生産能力は、半導体メーカーなどに試験的に供給するための規模となる。需要に合わせて設備増強を進め、25年にウエハー全体で月産1万枚(6インチ換算)の生産を目指す。
住友鉱山は17年、電子部品商社の加賀電子傘下だったSiC基板開発のサイコックス(東京・港)を買収し、ウエハーの研究を進めてきた。SiCパワーデバイスの世界市場規模は25年に、21年比5倍の3500億円前後に拡大するとみる。