ライブ配信アプリ利用、2年で2倍に 夜に習慣化
読み解き 今コレ!アプリ フラー執行役員カスタマーサクセスグループ長 林浩之氏
新型コロナウイルスの影響が長期化していることで、人々の生活習慣はこの1年半あまりで大きく変容した。特にライブ配信系アプリは、「余暇時間に視聴するコンテンツ」と「双方向のコミュニケーション」という二つの要素が相まって、利用の習慣化が顕著になっている。
フラー(新潟市)が手がけるアプリ分析ツール「AppApe(アップ・エイプ)」によると、2021年9月のライブ配信系月間利用者数(MAU)上位10アプリの合計MAUは663万人と前年同月比で11.3%増えた。19年9月と比べると2.1倍にもなっている(iOS・アンドロイド合算)。

中国など海外での盛り上がりを受け、日本でも新型コロナウイルスの影響が出る前からライブ配信アプリの利用が増えつつあった。そこに新型コロナウイルスの感染拡大の影響で平日、休日を問わず家に滞在する時間が増えたことに加え、人と人とのリアルなコミュニケーションの機会が減少したことも重なり、さらなるユーザー規模の拡大をもたらした。
各ライブ配信アプリの時間帯別の利用者数を見ると、いずれのアプリも午後9~11時に利用のピークを迎えている。一方で、動画やコミックなどコンテンツ系アプリでよくある正午の小さなピークが存在しない。昼間のすきま時間は動画を視聴したり漫画を読んだりといったことはできても、配信者と視聴者がコミュニケーションを取るのには少々時間が短い。仕事や学校が終わってからじっくりライブ配信に向き合う生活習慣が透けて見える。
ライブ配信アプリの中で21年9月にMAUが首位だったのは「ツイキャス」。2位以下は「Twitch(ツイッチ)」、「17LIVE(ワンセブンライブ)」、「Mildom(ミルダム)」「Pococha(ポコチャ)」、「SHOWROOM(ショールーム)」「Mirrativ(ミラティブ)」、「ふわっち」、「LINE LIVE(ラインライブ)」「ビゴライブ」と続く。
ユーチューブやインスタグラムなど巨大プラットフォーマーもライブ配信を強化する中、単体のライブ配信アプリの強みは、何といっても「自分たちのアプリ」というコミュニティーだと筆者は感じている。
例えば2年間でMAU、DAUともに5倍以上に成長している「ポコチャ」は、ユーザーがアプリを使い続けるためのコミュニティー作りを重視している。配信者対ユーザーだけでなく、ユーザー同士の関係性が構築されるような仕掛けをアプリの内外に用意することで、自分の居場所であるアプリを開くきっかけが増やし、アプリ利用の定着につなげている。
多くの配信者が視聴者との会話で配信を成立させている構造ゆえに、ライブ配信アプリは配信者と視聴者との距離の近さを生み、コロナにより人との接触が抑制されている昨今において、人々の寂しさも埋めてくれる。
コミュニケーションが人を集め、人がモノやお金を集中させるのは世の常だ。ライブ配信はまだまだ成長の余白が大きく、各社の次の一手に注目していきたい。