メルカリのアプリ、ビットコイン買える機能は両刃の剣
メルカリは11月8日、アプリ利用者が不用品などを売却した売上金で、仮想通貨を購入できる機能を付けると発表した。金融子会社のメルコイン(東京・港)がシステムをつくった。
ターゲットは初めて仮想通貨を使う層だ。一般的な仮想通貨交換事業者では口座開設や本人確認に手間がかかる。メルカリでは利用者がすでに売上金の振込口座の登録などを済ませているため、最短1分で申し込みが完了する。山本真人執行役員は「(仮想通貨取引を始める)ハードルを可能な限り排除した」と話す。サービス開始時は最も有名なビットコインを扱う予定だ。

当初はアプリでの決済に使うことはできないが、将来は決済に応用すると見込まれている。ビックカメラは17年に全店舗でビットコイン決済を導入、楽天も21年からビットコインを電子マネーにチャージして使えるサービスを始めた。
注目したいのはメルカリのビジネスがビットコイン決済に適しているという点だ。仮に商品をビットコインで購入できるようになれば、仮想通貨の潮流を変えるかもしれない。
仮想通貨は現在、投機目的で売買されることが多く、決済に使われることは少ない。ただ、海外では14年ごろから、導入する実店舗や電子商取引(EC)サイトが増えている。
スペインにある仮想通貨の取引所「2gether」が欧州の利用者を対象にまとめた20年の調査によると、女性の支払額の37%が食品・雑貨の支払いだった。交通費(17%)、金融(15%)、余暇(12%)を上回り最も高い。
メルカリの累計利用者約4800万人のうち半数超が女性とされ、決済も1回数千円と小さい点がビットコイン決済と親和性がある。発表会の後にはSNS(交流サイト)で「ビットコイン決済もできるなら少額で使ってみたい」という声が上がった。決済方法がクレジットカードからビットコインに移れば、メルカリはカード会社に支払う手数料を抑えられる。
楽天市場の場合、利用者が大型セールで買い込むなどして、買い物の金額が数万円になることも多い。家電販売が中心のビックカメラも、支払額は大きくなりがち。ビットコイン決済の分野で先行する企業は複数あるものの、国内ではいまだ普及途上。支払額が大きいことがハードルの一つになっている。
メルカリの「小口決済が中心」という特徴が需要とマッチすれば、日本でも仮想通貨の実用的な活用が広がる可能性はある。
ビットコインの価格は足元までの半年で約4割下がっており、値動きが荒い。メルカリ利用者は数百円から数千円の売上金を少しずつ貯金する場合も多い。売上金が一気に「蒸発」すれば、顧客体験が悪化して利用者の減少を招きかねない。少額利用を促す、利用者の教育といった工夫が必要になるだろう。
(日経ビジネス 朝香湧)
[日経ビジネス電子版 2022年11月21日の記事を再構成]
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