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CO2排出量取引テックへ投資活発 Amazon系も出資

CBINSIGHTS
二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」へ向けた世界的な潮流を受け、排出量の測定・取引技術を手掛けるスタートアップへの投資が活発になっている。最近はエネルギー業界だけでなく、米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトなど世界の大手IT(情報技術)企業も出資や連携に動いている。排出量取引を支えるスタートアップの動向や今後の見通しなどについてCBインサイツが分析した。

世界で最も利益の多い企業の8割が今や、これまで任意とされていたサステナビリティー(持続可能性)について報告している。多くの主要企業が「カーボンニュートラル」に向けて取り組んでおり、排出量のモニタリング、管理、相殺(オフセット)を支援するプラットフォームを探し求めている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

排出量を管理しようとする企業の需要の高まりを受け、2021年に入ってからの排出量の算定や取引市場を手掛ける企業の資金調達件数は15件、新株発行を伴う調達総額は1億ドル近くと件数、金額ともに既に過去最高を更新した。

例えば、米パーセフォニ(Persefoni)は21年4月、人工知能(AI)を活用した排出量算定・報告プラットフォームを拡充するため、シリーズAで970万ドルを調達した。同じく4月には、排出量取引市場を運営する米パチャマ(Pachama)がシリーズCで1500万ドルを調達した。このラウンドには米アマゾン・ドット・コムや米ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ、米ローワーカーボン・キャピタルなどが参加した。

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は最近の株主への手紙で、同社の気候変動に特化した投資ファンド「クライメート・プレッジ・ファンド」の(出資先の)一つとしてパチャマを取り上げた。この分野がなぜ盛り上がり、次にどんな動きが予想されるかについて調べる。

今回の分析では、CBインサイツがまとめたCO2の回収・利用・貯留(CCUS)分野でイノベーションを起こしている企業の一覧「CCUSエキスパートコレクション」のうち、「排出量追跡&管理」「カーボンオフセットテック&取引市場」のカテゴリーの企業を対象にした。

知っておくべきこと:

・政府や投資家の視線が厳しさを増すなか、企業は排出量の算定戦略を定めるよう迫られている。英国や日本、韓国など110以上の国・地域は20年末、50年までにカーボンニュートラルを達成すると宣言した。一方、米証券取引委員会(SEC)は21年初め、企業の気候変動やESG(環境・社会・企業統治)に関するリスク開示状況を調べる初の「気候・ESGタスクフォース」を設置した。投資家も積極的に動いている。物言う株主(アクティビスト)の投資会社「エンジン・ナンバーワン」は、より持続可能なビジネス戦略を促すために米石油大手エクソンモービルの取締役会で3席を獲得した。

・エネルギーや化学業界だけでなく、巨大テック企業もより厳しい排出量削減に動いている。例えば、米マイクロソフトは自社のCO2排出量を削減するため、排出量取引市場を運営するフィンランドのピューロ・アース(Puro.earth)と連携している。一方、米アップルは最近、植林などCO2を大気から除去する策に投資するため、米金融大手ゴールドマン・サックスや環境保護のNGO「コンサベーション・インターナショナル」と共同で2億ドルのファンドを組成した。

・企業は排出量を効率的・包括的に管理できるデジタルツールを求めている。排出量の追跡では通常、工場やサプライチェーン(供給網)から直接排出された温暖化ガスが対象になるが、企業はもっと細かい排出についても考慮しなくてはならない。つまり、出張で使った航空機から排出されたCO2やオフィスビルの冷暖房など、ビジネス活動に伴う間接的な排出量もモニタリングする必要がある。オーストラリアのパスゼロ(Pathzero)やフランスのスウィープ(Sweep)などは、顧客企業がこうした排出量をより細かいレベルで計算できるプラットフォームを開発している。

・排出量取引市場は自然に基づく相殺に大きく依存している。植林や持続可能な農業、湿地の再生などがその主な例だ。例えば、米NCXやパチャマは企業と森林開発者の仲介役となり、米ノリ(Nori)は持続可能な農法で排出枠をためている農家と企業の取引を仲介する。もっとも、自然に基づく相殺にはいくつかの課題がある。例えば、森が育つには数年かかり、CO2を吸収した量やその速度を確認するのは難しい。植林は火災による破壊や二重計算などの課題もあるが、なお気候変動を緩和する重要な役割を果たしている。

次の動きは

・新興テクノロジーが排出量取引市場を後押しし始めている。CO2を大気から直接回収するダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)や、CO2の有効利用などのテクノロジーが開発されれば、排出量取引市場が提供できるサービスの幅が広がる可能性がある。DACを手掛けるスイスのクライムワークス(Climeworks)とカナダのカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)はこの1年で、電子商取引(EC)システムのショッピファイ(カナダ)、米オンライン決済のストライプ、独アウディなどの顧客にCO2を大気から除去する能力を販売し始めた。

・企業の報告義務を強化する新たな政策が導入されている。欧州連合(EU)は21年、「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」を発効した。企業に対し、自社の事業が環境や社会に与えうるリスクや、こうした要素が投資家に及ぼす影響について説明した年次報告書を発行するよう義務付ける。EUの欧州委員会は「企業持続可能性開示指令」案を公表した。この案では企業に対し、自社の排出量と排出削減目標が地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」にどれほど合致しているかを報告するよう義務付ける。開示ルールが強化されれば、排出量を追跡、管理、相殺する策を求める企業が増えるだろう。

・カーボンオフセット認証が進展する。カーボンオフセットは植林など自然に基づく解決策に大きく頼っているため、企業はプロジェクトの質が基準を満たしているかどうかの認証を第三者に委ねている。広く使われている基準には「ゴールド・スタンダード」「ベリファイド・カーボン・スタンダード(VCS)」「クライメート・アクション・リザーブ(CAR)」「アメリカン・カーボン・レジストリ」などがある。

それでもなお、カーボンオフセットのプロジェクトには常に明確な追跡記録があるとは限らない。森林が大気中のCO2をどれほど吸収したかを測定するのは困難だからだ。テック企業が新たな認証手段に道を開く可能性がある。例えば、英シルベラ(Sylvera)とNCXは地理空間データを使ってプロジェクトの実績を追跡している。

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