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AIに論文書かせてみた

日経サイエンス

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この夏、人工知能(AI)に関する1本の論文が、フランス国営のデータ共有サイトで公開された。論文のタイトルは「GPT-3は自身についての学術論文を書けるか」。GPT-3とは人工知能の研究所OpenAIが開発した文章生成用AIだ。著者はGPT-3自身。つまり、AIが自分自身について書いた論文である。

もちろんAIが自ら思い立って論文を執筆したわけではない。発案したのは共著者になっているスウェーデン・イエーテボリ大学のA・トゥンストローム博士だ。AIやバーチャルリアリティーを用いた精神科治療を研究している博士は「これまでGPT-3が筆頭著者になっている論文は見当たらなかったので」書かせてみたという。

GPT-3はGenerative Pre-trained Transformer-3の略で、ごく自然な文章を生成できる。Transformerとは自然言語処理のための深層学習モデルで、Generativeは文章生成、Pre-traindは事前に学習済みであることを意味する。GPTは2017年に登場し、機械翻訳の質を格段に向上して注目された。2020年に3番目のモデルであるGPT-3が発表され、広く利用されている。

トゥンストローム博士は、学術論文のように序論、方法論、結論と考察を作成するようGPT-3に指示したが、それ以上の介入は控えた。試行は3回までとし、編集やいいとこ取りはしなかった。その結果、GT-3は2時間で論文を書き上げた。それはきちんとした論文の体をなしており、文献が適切に引用され、新しい内容が書かれていた。

ただし論文の各章は通常の方法ではなく、トゥンストローム博士がAIにした質問に答える形で生成されたものだ。博士は各章に、どのような指示により生成されたものかを明記した。

「総合的に判断して、我々はGPT-3に自分自身について書かせることの利点はリスクを上回ると考える」とGPT-3は結論づけた。「ただし、潜在的な悪影響を低減するために、執筆には研究者による注意深い監視が推奨される」。論文は査読のある学術誌に投稿されたが、2022年11月22日の段階では、まだ掲載されていない。

しかしAIは少なくともそれらしい論文を書けるレベルに達しており、今後、様々な問題が浮上してくるだろう。査読者が論文の修正を求めてきたらどうするのか。論文を投稿する際にAIを使っていないとの証明が必要になるのだろうか。そもそもAIは論文の共著者たり得るのか、それとも単なる道具なのか。

こうした問題に答えるのは、今は難しくないかもしれない。だが近い将来さらにAIが発展したとき、この技術が学術界にどのような問題をもたらすかは、まだ誰にもわからない。

(詳細は11月25日発売の日経サイエンス2023年1月号に掲載)

  • 著者 : 日経サイエンス編集部
  • 発行 : 日経サイエンス
  • 価格 : 1,466円(税込み)

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