/

オートバックスを救うか おしゃれな新業態店に活路

日経ビジネス電子版

オートバックスセブンが「ガレージライフ」をコンセプトに新業態「GORDON MILLER(ゴードンミラー)」を立ち上げた。カー用品にとどまらず、アパレルやインテリア小物、キャンピングカーまで扱い、独自のライフスタイルを消費者に提案する。カー用品の売り上げが伸び悩む中、生え抜き社員と中途入社組の混成チームが編み出した新事業によって成長への突破口は切り開かれるだろうか。

街角にたたずむビンテージ感のある小じゃれた店舗。11月半ば、東京都墨田区にプレオープンした「ゴードンミラー」の1号店だ。入り口をくぐって見てみると、目立つ場所にキャンピングカーが鎮座し、アウトドアに使える折り畳み椅子、おしゃれな服を身に着けたマネキンやバッグが並ぶ。

店の奥にはリビングに置いても違和感がないスタイリッシュなカー用品がきれいに陳列されている。見渡しても「オートバックス」の文字は見当たらない。「お買い得」「最安」などという文字に価格が添えられている、おなじみのド派手なポップ広告とも無縁なようだ。

オートバックスは2017年にプライベートブランド(PB)として「ゴードンミラー」を立ち上げ、カー用品やアパレル、キャンピングカーなどを扱ってきた。その商品群を一堂に集めた、いわば旗艦店がこの新店舗だ。現在は週末のみの営業だが、22年1月21日からは平日営業も始める。

これまでは、自社の電子商取引(EC)サイトや「スーパーオートバックス」の一部店舗などで商品を扱ってきたが、「実店舗を構えることで、ガレージライフの世界観をより浸透させる」と執行役員マーケティング担当の小曽根憲氏は話す。

ターゲットは20~30歳代の若い消費者で、300以上のアイテムをそろえている。「オートバックスよりも女性の利用客が多い」と小曽根氏が言うように、「車好きの男性」のイメージが強い既存の店舗とは一線を画す、老若男女問わず入りやすい店づくりや商品を意識している。

21年5月には住宅ブランドをフランチャイズ運営するベツダイ(大分市)の東京支社と組み、「ガレージハウス」の販売にも乗り出した。耳慣れない言葉かもしれないが、趣味空間のガレージを住宅の一部として組み込んだものだ。ガレージを車やバイク、DIYグッズ、アウトドア用品など趣味のモノを置く空間として活用しつつ、ゆったり座ってリラックスできる生活空間としても活用する。

若い女性に人気、SNSが威力

オートバックスセブンが新規事業に乗り出した背景には、カー用品市場の停滞がある。カーステレオやカーナビゲーションシステムなど、かつて経営を支えた高単価の電装品は新車への標準装着が進んで後付け需要が縮小してしまった。所得がなかなか伸びない中、消費者が車にお金をかける余裕がなくなった面もあるだろう。

中古車、自動車部品・用品、自動車整備など5事業の合算値を調査した、矢野経済研究所の「自動車アフターマケット市場に関する調査(2021年)」によると、18年の国内市場規模は約19.6兆円だったのに対し、20年には約19兆円規模まで縮小したもようだ。

難しい市場環境はオートバックスセブン自身の業績にも表れている。過去10年間の連結売上高はおおむね2000億~2300億円、純利益は同じく40億~80億円の範囲に収まる。安定的に利益を出している一方で、成長力に欠ける印象は否めない。

「カー用品市場は決して伸びている市場ではない」と小曽根氏も認める。既存事業の邪魔にならない新規事業を始められないかと考え、アパレルにたどり着いた。「百貨店などの人気商品はコスメ、スイーツ、洋服だと思った。前の2つは既存事業から遠すぎるが、洋服なら可能性があると考えた」という。

頭に浮かんだのはガレージで身に着けるDIYなどのワークウエア(作業着)だった。ゴードンミラーのアパレルは、基本的に男性向けに開発しているが、大きいサイズの服をだぼっと着るはやりのスタイルとマッチし、予想外に女性に人気があるという。

若い女性の目に留まった理由には、宣伝の工夫もある。既存事業ではチラシを配るなど、プッシュ型広告がメインだったが、ライフスタイル事業ではブランドのホームページを作り込み、商品などをSNS(交流サイト)に掲載するプル型で宣伝している。

すると、キャンピングカーやワークウエアなどがかわいいと話題になり、徐々に知名度と人気が上がってきたという。「SNSから認知度を上げ、店舗に来てもらう。自動車に興味を持ってもらえれば、既存店舗にも流入してもらえるはず」と小曽根氏は期待する。

「アウトドア進出ではない」

新型コロナウイルス禍のアウトドアブームの後押しもあり、20年度のゴードンミラー全体の売上高は前年度の約3倍に増えた。ただし「オートバックスセブンはあくまでカー用品店であり、アウトドアに進出したわけではない」と小曽根氏は強調する。

キャンプ需要に後押しされて売り上げが伸びていることは認めつつも、「あくまでガレージライフの延長にある自然の中で使える商品を販売している。そのため、テントなどは取り扱う気はない」という。

それでも、買い手の側が「折り畳み椅子やバーベキューグリルはあるのに、なぜテントは売っていないのだろう」と疑問を持つ可能性はある。そこにビジネスチャンスがある一方で、手を広げすぎると在庫などの事業リスクも高まる。このあたりのさじ加減をどうするかは今後のブランドの成長と経営判断に委ねられる。

「社内で認められ始めた」

ライフスタイル事業はカー用品と売り方も店員に求められる知識も異なる。足りない知識を補うため、ゴードンミラーに携わっているスタッフは、アパレルなど他業界から中途入社してきたスタッフと生え抜きスタッフの半々で構成している。

このチームにとって、ゴードンミラーの店舗を開いたことはブランドの成長に向けた大きな足がかりとなる。かつては慣れないライフスタイルブランドへの進出に対して慎重な意見もあったというが、「やっと社内でも認められ始めた」と小曽根氏は感じている。

いまも新規事業に付きものの苦労は続いている。例えば新商品の開発・製造では、これまでオートバックスセブンとして取引したことがないメーカーなどの協力を得ることが欠かせない。ライフスタイルブランドとしてはまだまだ新参者のゴードンミラーだけに、良縁が見つかるまでは難しい交渉の繰り返しという。

コロナ禍を受けてアウトドア活動やキャンピングカーで生活するバンライフが見直されており、多くの人々がコロナ後もこうした形で余暇を楽しむとみられる。ゴードンミラーが彼らから末永く選ばれるブランドに育つかどうかはまだ不透明だが、いま追い風を受けていることは確かだろう。

(日経ビジネス 藤原明穂)

[日経ビジネス電子版 2021年12月21日の記事を再構成]

日経ビジネス電子版セット

週刊経済誌「日経ビジネス」の記事がスマートフォン、タブレット、パソコンで利用できます。「日経ビジネス電子版」のオリジナルコンテンツもお読みいただけます。日経電子版とセットで月額650円OFFです。

お申し込みはこちらhttps://www.nikkei.com/promotion/collaboration/nbd1405/

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経ビジネス

企業経営・経済・社会の「今」を深掘りし、時代の一歩先を見通す「日経ビジネス電子版」より、厳選記事をピックアップしてお届けする。月曜日から金曜日まで平日の毎日配信。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン