給湯器の12月出荷数、過去10年で最低 納品3カ月後

冬本番を迎えるなか、給湯器の品薄状態が続いている。経済産業省が31日に公表した2021年12月の出荷数(速報値)は、約33万台と過去10年間で最も低かった。新型コロナウイルスの感染再拡大で部品工場の稼働率が落ち、半導体などの部品不足が響いた。工場の完全復旧や部品不足の解消のめどは立っておらず、販売店では発注しても納品までに数カ月かかる状況だ。
リンナイでは21年7月から通常の1~2割程度の減産が続く。給湯器の部品を製造するベトナムでは7月、新型コロナウイルスの感染拡大で都市封鎖(ロックダウン)が始まった。9月末まで外出制限の措置がとられ、現地の工場がほぼ稼働しなかった。
給湯器は東南アジアなどで部品を製造した後、国内で完成品に仕上げる。リンナイは部品の発注先を変えるなどして対応しているが、それでも新たに給湯器を納品できるのは2~3カ月後になるという。
ノーリツでも減産が続く。従来使用していた部品が調達できていないためだ。ほかの部品で代替できないかや、複数のエリアから調達できないかなどを検討している。ノーリツは「今年の早い段階で回復させたいが、新型コロナの状況次第の面もあり完全復旧の見通しが立たない」という。
米国での寒波も影響する。南部のテキサス州で21年2月、寒波を原因とする数百万件の停電が起きた。給湯器の部品に使用される樹脂の多くは同州の化学メーカーで製造されている。樹脂は主に部品どうしをつなぐコネクターなどに使われる。リンナイによると、化学メーカーの工場が数カ月にわたって操業停止を余儀なくされたという。この停止期間で在庫が減り、現在の給湯器向け需要に対して供給が追いつかない原因になっている。

事態を重く見た政府は21年12月、東京五輪・パラリンピックの選手村に設置されていた給湯器約1400台を貸し出すと発表した。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が1月下旬から、日本ガス協会と日本ガス石油機器工業会への引き渡し作業を始めた。各協会から給湯器メーカーや都市ガス業者へ引き渡され、消費者へと届く仕組みだ。日本ガス協会の担当者は「2月上旬のうちに消費者への貸し出しを始めたい」と話す。
厳冬期は給湯器の中の水が凍ることによる故障が相次ぎ、例年交換を求める消費者が増える傾向にある。給湯器や部品の生産地域で新型コロナの感染拡大の影響によるロックダウンなどの措置がとられるようなことがあれば、再び工場が稼働しない事態に陥る可能性がある。

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