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日本製鉄、タイ電炉2社買収 低炭素製法でアジア開拓

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日本製鉄は21日、2021年度中にタイの電炉大手2社を買収すると発表した。完全子会社化を目指しており、買収額は負債を含め最大で約880億円を見込む。同社が東南アジアに製鉄所を持つのは初めて。いま主流の高炉より二酸化炭素(CO2)排出量が少ない電炉をいかし、現地で需要が拡大する建材や自動車向けの需要を取り込む。

製鉄方法は石炭由来のコークスを使って鉄鉱石から酸素を取り除く高炉法と、鉄スクラップを電気炉の中で溶かし、不純物を除いて鋼材に再生する方法がある。日本では電炉のCO2排出量は高炉の4分の1とされる。

日鉄が買収するのは、電炉を使うGスチールとGJスチールだ。2月をめどに資産運用会社の米アレス・マネジメント傘下のファンドがそれぞれ50%弱、40%強持つ株式全てを買い取る。その後は公開買い付けにより他の株主からも取得し、今年度中の完全子会社化を目指す。

「インドや北米、南米などに加え、東南アジア諸国連合(ASEAN)で成長戦略を担うメンバーがもう一人そろう」。同日にオンラインで開いた会見。日鉄の森高弘副社長は東南アジアに拠点を持つ意義を強調した。

GスチールとGJスチールの粗鋼生産能力はそれぞれ年158万トン、150万トン。日本製鉄が国内に持つ4700万トンと比べて大きくはない。

それでも日鉄は東南アジアで初めて一貫製鉄所を持つことになる。一貫製鉄所は鉄鉱石や鉄スクラップを溶かして鉄の大元をつくり、圧延工程をへて鋼板などに仕上げる拠点だ。圧延だけを手掛ける場合と比べ、コスト競争力などは高い。

タイの2社は建材など汎用品を主に手掛ける。「まず汎用品の市場を押さえ、将来は(車用など)高級品も視野に入れる」(森副社長)という。

日鉄にとって日本の市場が縮むなか、海外での事業拡大は成長戦略の要。東南アジアで多かったのは、国内から送った鋼材の母材を現地で加工して出荷するスタイルだ。ただ近年は中国や韓国の鉄鋼会社などとの価格競争の激化に加え、現地では地元産の鋼材を使う動きが強まっていた。

これまでの戦略に限界が見え始めたなか、打開策として重視したのが輸出コストを省くために現地で一から生産する体制づくりだった。

そのために掲げたのが、世界全体での粗鋼生産能力を足元の7000万トン弱から海外を中心に1億トンに引き上げる計画だ。「海外事業は全体の需要を捉えられる一貫製鉄所を中心にやっていく」(橋本英二社長)とし、19年末には欧州アルセロール・ミタルと共同で約7700億円を投じインドの製鉄所を買収した。

立花証券の入沢健氏は今回の買収を「生産規模は大きくないが、海外戦略の拠点を得るという意味ではリーズナブル」と分析する。日鉄はこの先も海外拠点の拡充を続ける方針で、21日の会見では森副社長は「ASEAN(での買収)はこれで終わりではない」と述べた。

「脱炭素の観点からも戦略的な意味合いが持てる」。森副社長は記者会見で電炉2社を傘下に置くことのもう一つの意義にも触れた。

CO2を大量に排出する鉄鋼会社は、世界的な脱炭素のうねりのなかで生産工程の抜本的な変革を迫られている。有力なのはコークスの代わりに水素を使う製法だ。大学などと連携し、CO2を化学原料などに再利用する「CCU」技術の研究にも取り組む。

もっともこれらの開発には膨大なコストや時間が必要となる。日鉄は水素製鉄などの実用化には1社で4兆~5兆円の設備投資が必要とみる。一方、一般的な電炉は脱炭素にむけた「つなぎの技術」として活用できる。

自動車会社などは、製造時の環境負荷が低い素材を求める動きを強める見通し。素材会社は対応が遅れれば、取引が減りかねない。今回の買収は海外大手との競争と、脱炭素への挑戦という2つの壁を乗り越えられるかを占うものとなりそうだ。

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