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ウエアラブル端末、百花繚乱 スタートアップ注目70社

CBINSIGHTS
ウエアラブル端末を開発するスタートアップが増え、悪夢を見ているか分析するリストバンドや、タイムや距離を示す水泳用ゴーグルなど、百花繚乱(りょうらん)状態になっている。投資マネーも集まっており、この分野のスタートアップの2021年の資金調達額は約14億ドル(約1900億円)で過去最高だった。こうしたスタートアップの半数が創業間もない企業で、CBインサイツがその中から代表的な約70社を選び出した。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ウエアラブル機器や技術はメタバース(仮想空間)から睡眠、フィットネスに至るまで、消費者の日々のあらゆる活動をシンプルにし、最適化するために使われている。

ウエアラブルテックはしばらく前から注目されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大と消費者の健康やウエルネスへの関心の高まりが重なり、ブームに火がついた。今やペットの追跡機器やスマートジュエリー、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)ヘッドセットなど新たなウエアラブルテック機器の利用が拡大しつつあり、この分野の資金調達額は過去最高に達している。

2021年のウエアラブルコンピューティングのスタートアップによる資金調達額は14億ドル近くに上った。特に、アーリーステージ(シード/エンジェルとシリーズA)の企業の調達件数はこの分野全体の半数近くを占めた。21年のアーリーステージのラウンドで最も調達額が多かったのは、AR眼鏡を手掛ける中国の太平洋未来科技(Pacific Future、調達額3800万ドル)や、子ども向けの健康やウエルネスのウエアラブル端末の米キッド(Kiddo、1600万ドル)などだった。

消費者向けウエアラブルは個人の日常生活をシンプルにするだけでなく、位置情報などの機能によって企業やマーケティング部門に新たなデータを提供する可能性もある。企業は広告の受け手と効果的につながったり広告のターゲットを定めたりするために、こうしたデータを活用してウエアラブル端末でのアプリや店舗との関わり方など消費者の習慣について知見を得られるようになるだろう。

今回の記事ではCBインサイツのプラットフォームを活用し、消費者向けウエアラブル技術の未来を構築するアーリーステージの企業約70社を抜き出した。

この図は未上場の存続企業のみで構成され、この分野を網羅するのが目的ではない。カテゴリーは重複している場合もあり、企業は主な用途に応じて配置されている。

ウエアラブル医療機器メーカーや遠隔・診断モニタリング、遠隔医療システムなど医療用に特化しているスタートアップは除いた。

ウエルネスモニタリング

大まかな心拍数や特定の慢性症状など、利用者に関するデータを常時収集するパーソナルデバイスを手掛ける企業。新たな兆候や助言を伝えるため、振動やアプリとの接続により利用者にシグナルを送るシステムもある。

一般向けリストバンド:米ナイトウエア(NightWare)のリストバンドは、生理学的データを分析して利用者が悪夢を見ているかどうかを判断し、睡眠を妨害することなく悪夢を止めるために振動を送る。同様に、米アポロニューロ(Apollo Neuro)と米フィール・セラピューティクス(Feel Therapeutics)のリストバンドは振動を送って神経系を落ち着かせ、精神を安定させる。

子ども向けリストバンド:リストバンドを使って特定の行動や慢性症状をモニタリングし、モバイルアプリを通じて保護者などにデータを返送するスタートアップ。

米リバイブ・テクノロジーズ(Revibe Technologies)は子どもの注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対処する人工知能(AI)を搭載したリストバンドを手掛ける。子どもの動きや行動を常時分析し、毎日や毎週、毎月のリポートや実用的な知見を親や教師、医師に提供する。夜尿症(米ゴーゴーバンド、GOGO Band)、安全やウェルビーイング(米ピンクロータス、Pink Lotus)、ぜんそくなどの慢性疾患(キッド)などの解決策に取り組むスタートアップもある。

ペットの首輪:ペットの健康や日々の活動、位置データを収集し、モバイルアプリを通じてその情報を飼い主に送る首輪やベルトを手掛ける企業。

例えば、インドのワグル(Wagr)のウエアラブル端末には米クアルコムの無線テクノロジーを活用した全地球測位システム(GPS)センサーが搭載されている。飼い主はペットを追跡し、ペットが指定の安全圏を離れたら警告を受ける。動きを検知する技術も備えており、飼い主はペットの活動や睡眠のパターンをモニタリングできる。

ペットボイス(PetVoice、日本)など日々の食習慣やトイレのモニタリングを手掛ける企業や、イヌパシー(Inupathy、日本)など感情や心拍数を追跡する企業もある。

パッチ:ぜんそくの発作(オーストラリアのレスピア・テクノロジーズ、Respia Technologies)や幼児の発熱(台湾の愛微科、iWEECARE)などを検知するため、皮膚に貼るパッチを手掛ける企業。

フェムテック機器:女性や生物学的女性の個人だけに影響するか、特有の影響を及ぼす問題に対処する機器を提供する企業。

米ケッグ(Kegg)やドイツのトラックル(Trackle)は妊娠のチャンスを追跡して予測する。

頭部装着型の機器:オンイヤー(耳乗せ型)ヘッドホン、イヤーバッズ(耳の穴に差し込むタイプのイヤホン)からサングラス、ヘッドバンドまで様々な製品を開発・提供する企業。

例えば、米フィールモア・ラボ(Feelmore Labs)は振動を使って脳の経路を活性化し、ストレスや不安を抑えるウエアラブル機器を手掛ける。英コクーン(KoKoon)は利用者が自分の睡眠習慣をモニタリングし、改善できるよう支援するヘッドホンやイヤーバッズを開発している。

スポーツ&フィットネス

フィットネスレベルを数値化し、けがを防ぎ、リハビリテーションを追跡するために健康データを収集するウエアラブル端末を手掛けるスタートアップ。多くは衣類などに埋め込むセンサーテクノロジーを活用している。

衣類:アイスランドのタイムウエア(Tyme Wear)や英プリベイル(Prevayl)は小型の追跡センサーと特殊なシャツを組み合わせ、モバイルアプリで健康やパフォーマンスについて個別の知見を提供する。

同様に、米フォームセンス(formsense)のウエアラブルシステムはスポーツ用のベースレイヤーに20のセンサーを埋め込み、着用者のフォームを追跡することで、けがを減らし、疲労回復を促す。同社の製品はプロのスポーツチームやアスリート向けに開発された。

米サイファースキン(Cipher Skin)も同様の方法で埋め込みセンサーを使っている。同社は心拍数などのバイタルサインを測定し、3次元(3D)で動きを追跡する「バイオスリーブ(袖)」を手掛ける。同社は21年3月のシリーズAラウンドで500万ドルを調達した。ウエアラブルテックでいくつかの特許を取得している。

眼鏡:アスリートのパフォーマンス追跡を支援するAR眼鏡を開発している企業。

例えば、カナダのフォーム(FORM)はタイムや距離、ペースなどを表示できるスマートスイミングゴーグルを手掛ける。陸上では、イスラエルのエブリーサイト(Everysight)がサイクリスト向けスマートサングラスを提供している。このサングラスはデータをリアルタイムで処理し、サイクリストが理想的なルートを走行してパフォーマンスを最大化できるようにする。

センサー:個人が健康やパフォーマンスのレベルを追跡できるよう支援するセンサー技術を提供するスタートアップ。

例えば、米ニックス(Nix)は汗をモニタリングし、アスリートの水分補給レベルを追跡するバイオメトリックセンサーを手掛ける。一方、英カーブ(Carv)のセンサー機器はスキーのブーツや中敷きに取り付け、スキーヤーの動きを追跡してパフォーマンスを向上させる。

コミュニケーション

障害者向けにコミュニケーションを拡張するツールや補助するウエアラブルテック機器を提供する企業。

米コグニション(Cognixion)は脳をモニタリングし、利用者が体を動かさなくてもコミュニケーションできるヘッドセットを手掛ける。同社は21年11月、米アマゾン・ドット・コムのアレクサファンドが出資したシードラウンドで1200万ドルを調達した。

さらに、聴覚や視覚の障害者に振動で音を伝える触覚リストバンドを手掛ける企業(米ネオセンサリー、Neosensory)や、視覚障害者に振動で道を案内する企業(米ウェアワークス、WearWorks)もある。

ゲーム&娯楽

触覚グローブやベストなど、ゲーム・娯楽向けウエアラブルの次の波を主導しているスタートアップ。

グローブ:仮想世界に触感をもたらす技術を開発している企業。米ハプテックス(HaptX)やオランダのセンスグローブ(SenseGlove)などのスタートアップは空気抵抗、振動、モーショントラッキング(自分の動きを追跡する機能)技術を使い、利用者がARやVRのデジタル物体に触感や硬さ、重さがあるように感じるグローブの開発に取り組んでいる。

ヘッドセット:VRや複合現実(MR)ゴーグルを開発している企業。

例えば、フランスのリンクス(Lynx)はゲームや教育、職業訓練に活用できるヘッドセットを開発している。米メタのオキュラスや米マイクロソフトのホロレンズなどテック大手のVRヘッドセットがライバルだ。

身体を傷つけないウエアラブル型の脳とコンピューターのインターフェースを手掛ける米マインドポータル(MindPortal)は、AIを活用して人間の考えや意図を理解する機器の開発に取り組んでいる。同社のブレイン・コンピューター・インターフェースは人間をコンピューターにつなぎ、その思考を使ってAR/VR体験をつくり出せるとされる。同社は21年5月、シードラウンドで米クライナー・パーキンスや米フィットビットの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジェームズ・パーク氏などから500万ドルを調達した。

眼鏡:AR機能付き眼鏡を開発している企業。

香港のマッドゲイズ(MAD Gaze)などのスタートアップは、店内の道順の案内やバーチャル試着など小売りで活用できるAR眼鏡を手掛ける。

ベスト&ベルト:ベストやベルトを通じて身体的感覚を生み出す触覚システムを開発している企業。

例えば、スペインのオウォ(OWO)の触覚ベストはビデオゲームの利用者のアクションや環境に応じ、風や虫刺され、パンチなど30の感覚を再現できる。

セキュリティー&安全

個人の安全やセキュリティー向けに指輪やネックレス、キーチェーン型のウエアラブル端末を提供する企業。

例えば、米トークン(Token)は決済やログインなどの認証情報を保存し、買い物の決済や機器へのログインなどができる生体認証を活用したスマートリングを開発している。この指輪は指紋と光学近接センサーを使い、登録している利用者だけに機能する。

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