メタバースでの販売支援サービスに成長期待
奔流eビジネス(スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
米小売り大手のウォルマートが登録した商標や特許の記録から、電子機器やインテリア、おもちゃ、スポーツ用品、パーソナルケアなどのバーチャルグッズの販売を計画していることがわかったと米国で報じられている。ナイキも2021年、バーチャルスニーカー制作スタジオのRTFKT(アーティファクト)を買収。また、仮想空間のプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」内にNikelandを設置するなど、積極的な動きを見せている。

各社がメタバースへの取り組みを進める中、それを助けるスタートアップも注目を集めている。
例えば、バーチャル店舗の店員。ニュージーランド発のスタートアップSoul Machinesは、「デジタルピープル」を開発している。2月にソフトンバンク・ビジョン・ファンド2などから、7000万ドルの資金調達をしたことを発表した。
同社が提供する「Digital DNA Studio」を使えば、デジタルピープルを作成することができる。肌や目の色、髪の毛といった見た目を細かくカスタマイズできるだけでなく、声や言語、表情や身ぶり手ぶりも設定することができる。
同社のウェブサイトで実際にデジタルピープルと話すことができる。自然な瞬きや少し左右に揺れ動く様子、視線の動かし方、笑みを浮かべるしぐさなどは、本当に人間のようだ。顧客が笑ったら、笑い返すような設定も可能だという。
ウェブサイトには、化粧品ブランドのスキンケアコンサルタント、銀行のカスタマーサービスといったデジタルピープルの活用事例動画が掲載されている。
米国発のスタートアップInworld AIも、人間とやりとりできるバーチャルキャラクターを開発している。21年創業の会社だが、米大手VCのKleiner Perkinsや、メタ(旧フェイスブック)が投資するスタートアップで注目が高い。
Inworld AIはキャラクターが自然言語処理や会話型AIなどの機能を備え、人間の表情や身ぶり手ぶりを模倣でき、質問に答えたり、会話を続けたりすることができる。人間とやりとりする使われ方も想定しているが、ゲーム内の住人といったノンプレーヤーキャラクターとしての活用なども想定している。

3Dモデル制作プラットフォームのThreeKitは、製品情報や画像をアップロードすると3Dモデルを制作してくれるサービスだ。通販サイトなどに掲載したその3Dモデルを、顧客は拡大や回転し、詳細を閲覧できる。高級家具ブランドやスーツブランドなどが導入している。今後その3Dデータはメタバースの世界での物品販売にも役立つだろう。
フェイスブックの社名変更以来、頻繁に聞くようになった「メタバース」。まだまだ様子見という人も多いことだろう。一方で子供たちがRobloxやフォートナイトで遊んでいる様子を見ていると、すでにみんなそちらの世界の住人であると感じる。Z世代がターゲットのブランドは「メタバース」に積極的に取り組む必要に迫られているのを感じる。
[日経MJ2022年2月25日付]