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スポーツは経営に好影響 上原浩治氏×東京ガス内田社長

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

元メジャーリーガーの上原浩治さんが2021年の都市対抗野球で初優勝した東京ガスの内田高史社長と対談した。メジャー時代、シーズンオフに日本で練習場所の提供を受けるなど、東京ガスと上原さんは関係が深い。互いに感謝の気持ちを抱く両氏が会社経営におけるスポーツのプラス効果や、世界を見据えた挑戦について語り合った。

2021年は今までにない成果

内田氏「まずはお礼を申し上げたいです。2021年は東京ガスにとって、スポーツで今までにない成果を上げた年でした。東京パラリンピックの競泳で所属する木村敬一選手が金メダルを獲得し、冬には野球部が都市対抗野球で初優勝しました。どちらも上原さんに応援していただき、バックアップしてもらっています。おかげさまで良い成績が残せました」

東京ガス所属の木村敬一選手はリオデジャネイロのパラリンピックで金メダルを逃し、米国コーチの指導を受けに渡米した、米国在住の上原さんは家族ぐるみで木村選手を受け入れて自宅に泊めたり、車で練習拠点まで送ったりした。

上原さん「僕の方がお礼を言わないといけません。現役時代、東京ガス野球部のグラウンドを10年ぐらい使わせていただきました」

内田氏「うちの選手のご指導をいただいたというように聞いています」

上原さん「指導というほどのことはしていません」

内田氏「なかなか都市対抗にも出られず、出ても1回戦、2回戦負けというのが続いているチームを応援、ご指導いただき、選手からは『うれしかった、ありがたかった』という話を聞いています」

上原さん「ユーチューブで応援解説をさせていただきましたが、優勝するまで試合ごとに強くなっているというのがわかりました」

内田氏「過去の都市対抗はチャンスに打てず、ピンチでエラーが出る典型的な負けパターンでした。2021年は先発と抑えが活躍してくれて、守りでもピンチの時にダブルプレーでしのぐなど、過去のチームにはなかったことでした」

グループの一体感

上原さん「昔は金属バットでしたが今は木製バットで、点も入らない中、投手が重視されます。投手が良かったことが優勝の要因の一つだと思います。ところで野球部を廃部にしてしまう企業が多く出ていますが、東京ガスはずっと続けようと考えていますか」

内田氏「(廃部にする)つもりはないですね。東京ドームに集まった時のグループ社員の一体感は何物にも代えがたいです。私が『グループ一体となって頑張ろう』と言っても駄目ですが、都市対抗野球で選手が頑張ってくれると、何も言わなくても一体になれます。お互いに喜びを分かち合って一体になっている実感が持てます。スポーツ、特に野球にはかないません」

上原さん「野球部員の日常の仕事はどんなことをされていますか」

内田氏「午前中は仕事をしています。彼らは野球の練習をする時間をもらっているという意識が強いと思います」

上原さん「普通に働いている人たちは、妬みみたいなものはないのですか」

内田氏「自分たちの仲間が会社を代表しているわけですから、応援する気持ちの方が非常に強いと思います」

上原さん「選手も社員の気持ちを感じて練習しないといけませんね」

内田氏「感じていると思いますよ。ですから引退してからは『今度は仕事で会社に返そう、職場の仲間に返そう』という気持ちが強く、一般の社員以上にがんばってくれます」

仕事ができる前提で採用

上原さん「引退してからも、ほぼ全員が東京ガスに残るのですか」

内田氏「プロに行く選手以外は、まず残ります。仕事ができる前提で採用しており、野球だけで採用してはいません」

上原さん「他の企業で聞くと、残らない人は結構います。『引退したら残れよ』と言ってくれた方がやりやすいですね」

内田氏「野球を終われば『長年ご苦労さん、今度は仕事を一緒にやろう』となります」

上原さん「僕らの世代は上下関係が厳しく、あいさつだったり、言葉遣いだったり、しっかりしていて企業から好かれるイメージがありました」

内田氏「リーダーの資質を持つ野球部出身者は多いですよね。個人スポーツよりチームスポーツの経験者の方がそうした資質を持っている気もします。もちろん個人個人で異なりますが、支社などに配属されると、まとめ方が非常にうまいですね」

内田氏は1979年に入社してから東京ガス一筋で社長になった。日本にとどまらず、メジャーリーグへ挑戦した上原さんの決断について聞いた。

内田氏「私は入社して43年になります。他の会社に行ってもう一花咲かせようとか、そういう気持ちはありませんでした。上原さんは読売巨人軍で活躍しました。どうしてメジャーに挑戦する気持ちになったのですか」

上原さん「野球というスポーツは世界一となると、やはり米国です。世界各国の素晴らしい選手がどこを目指すかといったら、米国を目指す人が多いです。日本一も経験しましたし、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)も経験していく中で、もうひとつ上の舞台で戦ってみたくなりました」

内田氏「失敗するかもしれません」

上原さん「半分失敗すると思っていました。巨人で10年プレーしていたので米国に行く時は34歳でした。正直終わりかけですよね。最初に2年契約をした時、この2年で終わるという気持ちで行きました」

内田氏「巨人を世界一にしようとは思われなかったのですか」

上原さん「日本一のチームと世界一のチームが戦うようなことがあれば面白かったのですが、そういう大会がありません。オーナーでそういう発言をするのは孫正義さんくらいですよね。そういう方々が12球団にいれば、日本の球界が世界一を目指す可能性はゼロではないと思います」

地球温暖化対策、地政学リスクを意識して、世界のエネルギーをめぐる環境はめまぐるしく変わっている。上原さんは長い歴史を持つ東京ガスの新しい挑戦について聞いた。

上原さん「東京ガスはエネルギー企業として、どんな挑戦や決断をしていますか」

内田氏「東京ガスは1885年に実業家の渋沢栄一が創立した会社です。できた時から挑戦の連続です。最初にガスが使われたのはガス灯です。2022年は横浜にガス灯が灯って150年になります。照明から入ったのですが、トーマス・エジソンがフィラメントを作るとガスは勝てなくなり、どうやって生き残るかを考えました。それで照明ではなく、台所で調理に使ってもらおうとしました。ただ、ガス器具を見たことはない人ばかりです。大正時代に料理教室を開き、ガス器具の使い方を教えました。その後はガス風呂も作りました」

合成メタンに挑戦

「ガスは石炭から作っていたのですが、空気を汚してしまいます。それで石炭から天然ガスに代えるのですが、日本で初めて実現させました。今は二酸化炭素を出さないように、天然ガスを合成メタンに代えようとしています。天然ガスを使うと、空気がきれいでも二酸化炭素を出してしまいます。合成メタンへの切り替えが今の挑戦です」

上原さん「どこまで進んでいますか」

内田氏「水素と二酸化炭素を反応させてメタンを作ります。2022年度中に横浜市と連携し、年間200軒から300軒で使うぐらいの合成メタンを作る実験装置を作ります。2~3年後に数万軒に広げ、さらに2~3年したら100万軒規模に持って行こうとしています」

上原さん「何年を目指した計画ですか」

内田氏「まさにイノベーションであり、明確にいつとは言えません。2040年代にかかってしまうかもしれません。設備を米国や中東、オーストラリアに置き、できた合成メタンを日本に持ってきます。世界規模のプロジェクトになります。東京ガスは液化天然ガス(LNG)プロジェクトを実現した挑戦の歴史があります。今度は合成メタンでも世界で初めての企業になりたいと思っています」

=対談のもようはBSテレ東「日経ニュース プラス9」で3月23日(水)に放送する予定です。

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