著名YouTuberが日本移住、海外目線で魅力発信
アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏
5月に世界一チャンネル登録者数の多いユーチューバーが日本に移住をして話題になったのをご存じだろうか。「ピューディーパイ」というちょっと変わったチャンネルの登録者数は、なんと1億1千万人以上。スウェーデン人でイギリス在住だったフェリックス氏が運営している。
2019年ごろにインドの企業とユーチューブのチャンネル登録者数世界一をかけて競った後、一時的に活動を休止するなどした関係で、今は昔ほど注目されるチャンネルでは無くなっているようだが、それでもフェリックス氏の日本移住を報告する動画は800万近い再生数となり、注目の高さがうかがえる。
世界から注目されるユーチューバーというと、富士の樹海で自殺者の遺体が映った映像を投稿して世界中から批判をされた「ローガン・ポール騒動」を思い出す方も多いかもしれないが、フェリックス氏はいわゆる「迷惑系」ユーチューバーではなく、日本でいうとヒカキン氏のような「良識派」とされている。

妻と何度も日本を旅行した結果、日本を移住先に選択し家を購入。直後にコロナ禍の影響で来日ができなくなり、2年半以上待ってようやく移住を果たしたという経緯がある。
フェリックス氏の動画は全編英語のため、英語が苦手な方には少しハードルが高いかもしれないが、動画をのぞいてみると、ようやく来れた日本の生活を心の底から楽しんでいることが分かるはずだ。
特に注目したいのは、フェリックス氏が私たちからするとなんでもない日常の中の風景一つ一つに、驚きや感動を持って受け止めてくれている点だ。自動販売機やカプセル玩具、自然の風景など、実は私たち日本人が普通と思っているものが、海外の方からすると実に日本的で新鮮だったりするのだ。
コロナ禍で長らく禁止されていた海外からの旅行者の受け入れも、段階的に緩和されていく予定になっており、インバウンドの復活に向けてヒントが満載のチャンネルとも言えるかもしれない。
こうした海外の視点が重要になるのは観光業だけではない。例えば集英社「少年ジャンプ+」にて連載中の漫画を原作としたアニメ「スパイファミリー」が日本のテレビ放映のタイミングで世界にも配信され世界中で注目されている。

従来日本のアニメが海外で注目されるには、ある程度日本で人気になったものが配信されて人気になるという流れが通常だった。ネットフリックスなどの配信サービスの普及により、日本のテレビ放映と同時に世界中で視聴できるようになり、いきなり海外でも勝負できるようになったのだ。
最近では日本のテレビ番組としておなじみの「はじめてのおつかい」がネットフリックスで配信され海外でも話題になるなど、日本のコンテンツが海外でも勝負できることが証明されはじめている。
日本企業の製品においても、日本人よりも海外からニーズが高くなるポテンシャルを秘めている製品がいろいろあるはずだ。この機会に日本の常識をリセットし、海外の視点で自社の事業の魅力を再発見してみてはどうだろうか。
[日経MJ2022年6月24日付]