たんぱく質作らないRNA、細胞分化を制御 早稲田大など
早稲田大学などの研究チームは、たんぱく質を作らないRNA(リボ核酸)の一部が細胞の分化を制御していることを酵母で突き止めた。RNAでは塩基の配列を解析する手法が一般的だが、RNAが作る立体構造に注目することで効率的に探索できた。人間の細胞の研究に応用すれば、病気になる仕組みの解析などに役立つ。

細胞中のRNAはたんぱく質を作るメッセンジャーRNAと作らないノンコーディングRNAに大別される。ノンコーディングRNAのうち、塩基数が比較的多い長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)は重要な役割を持たない「ジャンク(ごみ)」と呼ばれていたが、最近の研究でがんなどの病気に関連することが分かってきた。人間で数万種類、酵母でも約1800種類と膨大で、機能が分かっているのは1%ほどにとどまる。
研究チームは人間と多くの遺伝子が共通するもののlncRNAの種類が少なく、扱いやすい酵母で実験した。lncRNAは合成された直後は1本の鎖のような状態で、折り畳まれて複雑な立体構造を作ることで機能を発揮する。生存に必要な重要なlncRNAは異なる酵母間でも似た立体構造が保たれるとみて、4種類の酵母のゲノム解析から重要と考えられるlncRNAを絞り込んだ。
絞り込んだ71種類のうち、「nc1669」というlncRNAが無性状態での細胞分裂から性別を利用した分裂へ移行する「性分化」を制御していることが分かった。酵母は栄養が豊富にある環境では無性状態で盛んに増殖し、栄養が少なくなるとプラスとマイナスの性に分化して休眠状態に入る。nc1669を欠損させた酵母は、栄養が豊富にあっても一部が性分化を始めた。
早稲田大学の佐藤政充教授は「開発した手法は人間の細胞にも応用できる。病気に関連する重要なlncRNAの発見に役立てたい」と話す。