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米スーパーがEC用の配送拠点 自動化でAmazonに対抗

CBINSIGHTS
米食品スーパーがスタートアップなどと組み、高度に自動化したEC(電子商取引)用の小型配送拠点の開設に力を入れ始めた。店舗の売り場から商品を手作業でピックアップして届けるより、迅速かつ低コストで運用できるからだ。食品EC事業を拡大する米アマゾン・ドット・コムなどに最新の自動倉庫で対抗する米ウォルマートなど米大手3社の取り組みをまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ECの需要がかつてないほど高まり、小売り各社の業績を圧迫している。特に食品スーパーは利益率がただでさえ低く、痛手を負っている。

こうした状況を受け、食品スーパーはマイクロフルフィルメント(小型の受注配送システム)に活路を求めつつある。マイクロフルフィルメントとは高度に自動化した小型の受注配送拠点で、既存の食品スーパーの店内かエンドユーザーにより近い倉庫に設置する。配達を迅速化するほか、自動化によってコストを削減する。

マイクロフルフィルメントは非常に有望だ。小売り各社は手作業による商品のピッキングプロセスをこのシステムに置き換えることで、注文1件当たりのコストを推定75%削減できる。

こうしたコスト削減の可能性からこの分野は勢いを増しており、ウォルマート、米クローガー、米アルバートソンズなどの大手食品スーパーはマイクロフルフィルメントを手掛ける企業への投資や提携を進めている。産業用機械大手もこの分野に投資しており、米大手ハネウェル・インターナショナルのベンチャー投資部門はカナダのアタボティックス(Attabotics)に、独シーメンスは米デマティック(Dematic)にそれぞれ出資している。

企業が決算説明会でこの分野を話題にしていることからも勢いはうかがえる。新型コロナウイルスの感染拡大以降、マイクロフルフィルメントについての言及回数は大幅に増えている。

今回は米大手食品スーパーのウォルマート、クローガー、アルバートソンズによるこの分野での取り組みについて取り上げる。

ウォルマート、クローガー、アルバートソンズはこの分野で何をしているのか

米3大食品スーパーのウォルマート、クローガー、アルバートソンズはいずれもマイクロフルフィルメント活用の可能性を積極的に探っている。3社のうちでこれまで最も活発に動いていたのはウォルマートだったが、クローガーとアルバートソンズはここにきて活動を本格化し、新しいシステムを試験導入している。

3社のアプローチは様々だ。ウォルマートとアルバートソンズは既存店の中(またはすぐ隣)にマイクロフルフィルメント機能を設けているのに対し、クローガーは新たな施設を一から築いている。

ウォルマート

ウォルマートはマイクロフルフィルメントシステムを手掛ける米アラートイノベーション(Alert Innovation)、デマティック、イスラエルのファブリック(Fabric)と提携し、既存店の中か隣にマイクロフルフィルメントセンター(MFC)を築いている。ウォルマートはMFCを「マーケットフルフィルメントセンター」と呼んでいる。

アラートイノベーション(ウォルマートとの関係:提携、買収予定)

ウォルマートは2022年10月、アラートイノベーションを買収すると発表した。16年にアラートと初めて提携して以来、既存店内に設置する自動倉庫(ASRS)「アルファボット(Alphabot)」を共同開発してきた。

このシステムは縦横の3次元(3D)に動くロボットと保管ラックで構成される。中核となるロボットは倉庫管理システムで制御され、ラック内を移動する。アルファボットで動くのはロボットのみで、昇降リフトやコンベヤーはないため、資本効率が高い。

アルファボットは20年1月にウォルマートの店舗で初めてフル稼働し、スタッフと一緒に働いた。このシステムの導入により商品のピッキング速度が上がり、効率が高まった。ウォルマートは他のマイクロフルフィルメントの取り組みとともに、アルファボットも積極的に拡大する計画だ。

ファブリック(ウォルマートとの関係:提携)

ウォルマートはファブリックと提携する方針も明らかにしている。ファブリックは米東海岸を拠点とするネット専業スーパー、フレッシュダイレクト(Fresh Direct)を既存顧客に抱える。ウォルマートはアラートやデマティックと同様に、既存の店内やその隣にMFCを構築するためにファブリックと提携している。

デマティック(ウォルマートとの関係:提携)

ウォルマートはデマティックともMFC構築で提携しているとされる。

クローガー

クローガーは英ネット専業スーパーのオカド・グループへの出資と戦略的提携により、マイクロフルフィルメント分野で特に活発に動いている。オカドは全米各地でMFCの共同開発を手掛ける。

オカド(クローガーとの関係:出資)

クローガーはオンライン食品事業を強化するため、マイクロフルフィルメントの草分け的存在であるオカドとの提携と出資を通じて全米各地にMFCを築いている。

同社は18年にオカドと提携する方針を発表し、その後米オハイオ州に初のMFCを開設した。これは20カ所に上るMFC開設計画の第1弾だった。クローガーのMFCでは1000台を超えるロボットが格子状の棚から注文商品を集めて仕分け、配送準備を整える。

こうしたフルフィルメントセンターに映像解析技術(コンピュータービジョン)と通信設備を導入すれば、コスト削減と在庫の精度向上につながり、在庫管理を効率化できる。さらに、配送センターをエンドユーザーの近くに置くことで輸送時間を短縮し、食品が傷みにくくなる。

クローガーはここ数年、上場企業であるオカドの株式7%近くを取得し、関係を強化している。

アルバートソンズ

アルバートソンズはウォルマートやクローガーほど活発ではないが、ロボットシステムを手掛けるエストニアのクレベロン(Cleveron)や米テークオフテクノロジーズ(Takeoff Technologies) との提携によりマイクロフルフィルメント機能の構築に一丸となって取り組んでいる。

クレベロン(アルバートソンズとの関係:提携)

アルバートソンズは21年1月、クレベロンとの提携を発表した。

提携の一環として、シカゴにある店舗の脇に、ネットで注文した商品を自動で受け取れる非接触型の店舗を設置した。顧客がその受取店舗でスマートフォンのコードをスキャンすると、中の冷蔵保管庫や冷凍保管庫から注文品が自動で出てくる。

アルバートソンズは近く、サンフランシスコにもこの受取店舗を設置する。

クオフテクノロジーズ(アルバートソンズとの関係:提携)

アルバートソンズは18年、既存店でテークオフテクノロジーズのMFCシステムを実証するためにテークオフと提携した。20年には提携を拡大し、テークオフのMFCを全米各地に広げている。

テークオフのMFCは最大1万5000種類の商品を保管できる。幅広い品をそろえつつも顧客の近くに設置できるため、地域の注文の配送体制を強化できる。一部のMFCは週最大4000件の注文に対応している。

今後の見通し

大手食品スーパーは活発に動いているが、MFCの導入率はなお低い。インフレ高進とEC需要の減速により、各社は他の分野に目を向けているからだ。

とはいえ、米アマゾン・ドット・コムなどの大手がEC事業の収益強化を図っているため、食品スーパー各社は今後もMFCテックに活路を求めるだろう。MFCがあれば各社はいつでも注文の配送準備を整えることができ、需要の低迷期には労働コストを抑えられるからだ。特にロボットをサービスとして提供する「ロボティクス・アズ・ア・サービス(RaaS)」は魅力的だ。ロボットの改良が進む一方で人件費は上昇しているため、ロボットの時間当たりの労働コストは人間よりも低くなり、各社の収益を引き続き向上させるだろう。

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