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米GM、新興企業が切り崩し EVやつながる車で

CBINSIGHTS
自動車業界の巨人、米ゼネラル・モーターズ(GM)に対し、特定分野に特化した新興企業が包囲網を築いている。電気自動車(EV)メーカーの米リヴィアン・オートモーティブなど、電動化やつながる車、自動運転といった分野で次々に強力なライバルが現れ、業界に創造的破壊をもたらしている。日本の自動車メーカーにとっても大きな脅威となりそうだ。

113年前に創業した米ゼネラル・モーターズ(GM)は、自動車産業の巨人としての地位を確立している。同社は世界最大級の自動車メーカーで、年間売上高は1200億ドルを超える。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

もっとも、自動車産業では地殻変動が起きており、様々な側面でGMのライバルが次々と現れている。

例えば、電気自動車(EV)メーカーは市場シェアを急速に拡大し、投資家から注目を集めている。一方、豊富な資金を誇るスタートアップは自動車市場に自動運転技術やコネクテッドカー(つながる車)の製品やサービスをもたらそうと励んでいる。

上の図はこの分野を網羅するのが狙いではない。カテゴリーは重複している場合もある。

一方、自動車産業はなお新型コロナウイルスの感染拡大の影響に揺れている。サプライチェーン(供給網)の混乱により自動車メーカーはシリコンチップの調達に奔走し、GMはシリコンチップ不足で数カ所の工場の休止に追い込まれている。

既存自動車メーカーが様々な逆風に見舞われるなか、GMはリードを保つために自社の事業を速やかに現状に適応させようとしている。この記事では、電動化から自動運転、コネクティビティー、サービスに至るまで、各社がGMの事業をどう切り崩して(アンバンドリングして)いるかに注目する。

カテゴリーの内訳

GMの投資状況や取り組み、弱い分野に基づき、同社の事業を切り崩しているテクノロジーやサービスをまとめた。

電動化:クリーンエネルギーへの移行と二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組み

・自動化:自動車の死亡事故や渋滞を減らし、価格を下げるために様々な分野で提供している自動運転の技術やサービス

・自動車販売:車の購入や保険加入、所有の方法を変える新たなサービス

コネクティビティー:車同士をつなぐ新しいテクノロジーや、商用車の運行管理、安全を支援するサービスに加え、こうしたつながりを更新し、強固にするテクノロジー

電動化

EV

自動車産業が完全自動運転車に向かうなか、既存各社は市場シェアを守りながら内燃機関車から移行する方策について戦略を練っている。

乗用車部門では、GMは2025年までに低価格帯のEV30車種を新たに投入する。これらは既存工場を改修したEV工場「ファクトリー・ゼロ(Factory Zero)」で生産される。

GMなど既存の自動車メーカーは米リヴィアンや米ローズタウン・モーターズ、中国の上海蔚来汽車(NIO)など乗用車のEVに特化した企業からの攻勢を受けている。3社はいずれもここ数年で上場した。一方、以下のように未上場企業もこの分野に創造的破壊をもたらそうとしている。

・クロアチアのリマック・アウトモビリ(Rimac Automobili)や米カルマ・オートモーティブ(Karma Automotive)などは高級EVを開発している。

・ドイツのソノ・モーターズ(Sono Motors)やオランダのライトイヤー(Lightyear)は太陽光を使って自ら発電するEVの生産を手掛ける。

EV各社は商用車の開発も進めている。GMは21年、商用EVブランド「ブライト・ドロップ(BrightDrop)」を立ち上げた。主力の電動バン「EV600」を米物流大手フェデックスに、第2弾の電動バン「EV410」を米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズに販売する。

商用車分野に創造的破壊をもたらそうとするEVメーカーの間で関心が高いのは、次のような小型商用車だ。

・リヴィアンは米アマゾン・ドット・コムから10万台の配送用EVを受注した。数年かけて納入する見通しだ。

・英アライバル(Arrival)と米カヌー(Canoo)はともに小型商用EVの新規参入組だ。アライバルは米宅配大手UPSから1万台の配送用EVを受注した。カヌーは法人顧客向けに低価格の配送用EVを開発しようとしている。

EV充電

EV所有者は充電時間が長く、充電インフラが不足しているという共通の悩みを抱えている。こうした問題に対処するため、GMは充電事業者と提携し、スマートフォンのアプリを使ってアクセスできる充電ネットワーク「アルティウム・チャージ360(Ultium Charge 360)」を提供している。

スタートアップ各社も以下のように高速充電やアクセスしやすい充電サービスに取り組んでいる。

・米アンプアップ(AmpUp)は充電ステーションのオーナーと運転手、商用車の運行管理業者をつなぎ、充電スケジュールを調整し、車や充電ステーションを監視する。

・より効率的な充電器の開発に力を入れている企業もある。例えば、米フリーワイヤ・テクノロジーズ(FreeWire Technologies)は内蔵している蓄電池を活用し、送電網との接続を容易にした高速充電器を開発している。

車載電池

GMは韓国・LG化学との提携により、リチウムイオン電池セル「アルティアム・セルズ(Ultium Cells)」を量産する計画だ。このセルはGMの未来のEVに搭載される。

だが、リチウムイオン電池の製造ブームに伴い、必要な原料の採掘を巡る問題や製造時のCO2排出の抑制、寿命を迎えた電池の最適な扱い方など多くの課題が生じている。この分野の企業は電池の量産化に加え、以下のようにこうした課題の解決に取り組んでいる。

・米24Mテクノロジーズ(24M Technologies)などはリチウムイオン電池の製造方法を変えることで、性能向上やコスト低下、リサイクルしやすさの向上を図る。

・スウェーデンの電池スタートアップ、ノースボルト(Northvolt)はより環境に優しい電池の量産に力を入れている。同社は独フォルクスワーゲンや独BMWなど大手自動車メーカーと契約し、各社の未来のEVに電池を供給する。ノースボルトはリサイクルの取り組みにも多額の資金を投じている。同社のリサイクルプログラム「リボルト(Revolt)」はこのほど、初の100%リサイクルの電池セルを製造した。

水素燃料電池

このカテゴリーの企業は水素を燃料として使い、車が自力で発電できるようにするという別のアプローチで車の電動化に取り組んでいる。電池駆動のEVの方が燃料電池車(FCV)よりもエネルギー効率が高いという点では業界の意見は一致しているが、用途によってはFCVの方が大きなメリットがある場合もある。例えば、燃料の充塡時間が大幅に短く、積載量が大きい場合に適しており、航続距離も長い。

GMは航空宇宙、トラック輸送、海洋、定置型バックアップ電源向けに燃料電池技術「ハイドロテック(Hydrotec)」の開発を進めている。21年にはこの燃料電池パワーキューブを米トラック大手のナビスター・インターナショナルの未来のFCVに供給すると発表した。

多くのスタートアップが以下のように同様のシステムの開発に取り組んでいる。

・米ユニバーサル・ハイドロジェン(Universal Hydrogen)は既存のリージョナル航空機を改造して燃料電池駆動にするシステムの開発を進めている。

・中国の上海重塑(Refire)は公共交通機関や大型トラック、作業車などに使う燃料電池システムを開発している。

・英リバーシンプル(Riversimple)などは燃料電池車を完全に自前で開発している。

自動化

自動運転

自動運転分野の多くの企業は、人工知能(AI)や専用センサー、地図作製技術など自動車メーカーが自動運転機能を向上させるために必要としている技術の供給に力を入れている。

この分野で最も資金力のある企業はこうしたテクノロジーをひとまとめにしている。GMの自動運転子会社クルーズは自社の技術を運転支援システム「スーパー・クルーズ(Super Cruise)」「ウルトラ・クルーズ・システムズ(Ultra Cruise Systems)」としてパッケージにし、サブスクリプション(定額課金)方式で提供している。

中国のモメンタ(Momenta)、米モーショナル(Motional)、中国の小馬智行(ポニー・エーアイ、pony.ai)などはいずれもこうした自動運転の総合システムを手掛けており、自動車メーカーと提携して一部の都市にロボタクシー車両を展開している。

以下のように、ロボタクシーを完全に自前で開発している自動運転開発企業もある。

・ニュージーランドのオーミオ・オートメーション(Ohmio Automation)は決まったコースを走行するモジュラー式の自動運転車を設計し、展開している。

・米ローカルモーターズ(Local Motors)は3Dプリンターで製造した自動運転EV「オリー(Olli)」を開発した。

・アマゾンに20年に買収された米ズークスは、都市部で次世代移動サービス「MaaS(マース)」を提供しようとしている。

自動車販売

保険

このカテゴリーの企業は、保険比較サイトの提供から走行距離に応じて保険料を算出する保険会社まで、販売プロセスをデジタル化することで自動車保険を合理化しようとしている。スタートアップがこの分野に創造的破壊をもたらすなか、自動車メーカーや保険会社は対抗するために新たな策を講じている。

GMは車載テレマティクス(通信技術)サービス「オンスター(OnStar)」を活用し、車と保険商品をセット販売する計画だ。車から取得したデータを使い、個人の運転特性に基づいて保険料を算出する。

この分野を手掛けているスタートアップは以下の通りだ。

・米ケンブリッジ・モバイル・テレマティクス(Cambridge Mobile Telematics)など走行距離ベースで保険料を算出する保険会社は、センサーやテレマティクス機器から収集した走行距離や運転特性に基づく消費者の行動に保険料を合わせる。

・運転手は米ザ・ゼブラ(The Zebra)などの保険比較サイトを活用し、ニーズや予算に応じた保険を見つけることができる。

融資

GMは融資事業の一環として、個人の顧客にリースや融資を提供している。21年1~9月期のこの部門の売上高は100億ドル近くに上った。

この事業に狙いを定めている企業は以下のように、融資申し込みプロセスを合理化したり、顧客に様々な融資オプションを提供したりすることで、中小の貸し手が競合できるよう支援している。

・米defi SOLUTIONSはローン組成や債権回収、分析が可能なブラウザベースのシステムを提供し、貸し手がより迅速に判断を下せるようにしている。

・米フェア(Fair)は顧客の経済状況に基づいて月々の支払い可能額を算出し、地元のディーラーが予算内の車を勧めるサービスを手掛ける。

MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス、マース)

自動車産業は半導体不足に悩まされ、自動車価格は上昇しつつあるため、消費者は所有に代わる手段に目を向ける可能性がある。

米ウーバーテクノロジーズや米リフト、中国の滴滴出行(ディディ)などのMaaS大手はすでに消費者が様々な時間や場所で車を利用できる手段を提供している。一方、消費者がもっと柔軟に車を利用できる手段を編み出しているスタートアップもある。例えば以下の通りだ。

・スイスのカーボリューション(Carvolution)などは消費者がサブスクベースで車を所有し、既定の時間と距離で車を使えるサービスを提供している。

・米トゥーロ(Turo)などは車の持ち主が自分の車を貸し出せる個人間カーシェアサービスを運営している。

こうしたサービスが消費者に広く採用されれば、車の年間販売台数は減り、GMの収益をむしばむ可能性がある。一方、GMのロボタクシー「クルーズ・オリジン(Cruise Origin)」はMaaS分野でのシェア獲得を目指している。

コネクティビティー

運転手の安全&テレマティクス

GMの商用車向け部門GMフリートと、中小企業や商用車の運行管理業者向けのサービス「オンスター・ビジネス・ソリューションズ(OnStar Business Solutions)」は、カナダの車載テレマティクス企業ジオタブ(Geotab)と提携し、商用車の顧客向けにテレマティクスに加えて運転手のモニタリングや指導を提供している。

多くのスタートアップは車両テレマティクスと運転手の安全を確保するための製品やサービスで使う独自の通信機器を開発している。こうした企業は以下のように、法人や消費者を対象に、運転手のモニタリングや車両テレマティクスを手掛ける。

・米リティックス(Lytx)やイスラエルのシピア(Cipia)は車内センシング技術を使い、商用車の運行管理者が運転手の挙動を監視できるようにする。この技術は車の安全システムやコントロールシステムにデータを提供するために使われる。

・米ゼンドライブ(Zendrive)などはデータを活用して運転手にフィードバックを提供したり、保険会社が運転手の行動特性に基づいて情報を得た上で保険を提供したりできるようにする。

車載ソフトウエア

車はますますソフトウエアに頼るようになっているため、ソフトウエアを遠隔でアップデートし、サイバー攻撃などから車を守る機能は有意義な運転体験を確保する上で重要な要素になるだろう。

GMはこのほど、新たな車載ソフトウエアプラットフォーム「アルティファイ(Ultifi)」を発表した。運転手が車内アプリを利用したり、サブスク方式でソフトウエアを無線アップデートしたりできる。このプラットフォームは23年に運用を開始する。

大半の自動車メーカーは総合的なコネクティビティーシステムの開発を進めているのに対し、多くのスタートアップは娯楽や対話型ディスプレー、メンテナンス、セキュリティーを提供する新たな手段の開発に力を入れている。例えば、以下の通りだ。

・イスラエルのオーロラ・ラボス(Aurora Labs)などは無線アップデートやソフトウエア管理、車載ソフトウエアの遠隔診断を手掛ける。

・イスラエルのアップストリーム・セキュリティー(Upstream Security)は自動車メーカーやアプリ開発者、商用車の運行管理者にコネクテッドカーを狙ったサイバー攻撃からの防御手段を提供する。こうしたセキュリティーは自動運転システムでも重要な検討事項になるだろう。

・スイスのウェイレイ(WayRay)などは車載向けの拡張現実(AR)ヘッドアップディスプレー(HUD)と関連ソフトウエアを開発している。

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