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三菱重工、新型原子炉で水素量産 脱炭素へ低コスト技術

三菱重工業は22日、「高温ガス炉(HTGR)」と呼ばれる次世代原子炉を使って、水素を大量生産すると発表した。2022年中に実証実験を始め、30年代前半に実用化をめざす。原子力発電所でつくった電気で水素を製造すると、低コストと脱炭素を両立できるという。二酸化炭素(CO2)排出が多い鉄鋼業など産業界での利用を目指す。

原発の電気で製造する水素は「ピンク水素」などと呼ばれる。日本原子力研究開発機構(JAEA)の高温工学試験研究炉(HTTR、茨城県大洗町)で、高温ガス炉による発電設備を使って水素をつくる。24年3月期以降に本格的な水素プラントを建設し、高温ガス炉と接続する。30年までの実証実験で、約300億円の投資を見込む。

高温ガス炉でつくる熱の温度は最高セ氏950度。通常の原子炉の3倍高温で、大量の水素をつくれる。実用化する際は1時間あたり25トンと100倍に増やす。水素の製造方法を改良し、CO2排出をゼロにする技術も開発する。余熱を使って蒸気タービンを回せば、クリーンな電力を生み出せる。

東日本大震災による原発事故を踏まえ、高温ガス炉は安全性を高めた。炉心の主な構成材に黒鉛やセラミックを使い、核分裂でできた熱を外に取り出す冷却材にヘリウムガスを用いる。黒鉛やセラミックは2500度程度でも溶けないため、従来の炉心に比べて耐熱性が高く、放射性物質の放出を抑えられるという。高温でも化学反応しにくいヘリウムガスで冷却し、事故を起きにくくする。

国内の鉄鋼メーカーを主な導入先と見込む。産業別で国内のCO2排出量の約14%を鉄鋼業が占め、脱炭素が急務なためだ。鉄鉱石と混ぜる石炭の代わりに水素を用いて鉄をつくる方法もあるが、多量の水素が必要になる。欧州は水素をつくるのに再生可能エネルギーを使いCO2排出を減らしているが、日本は再エネの発電比率が欧州ほど高くないため、原発で水素をつくる手法が役立つ可能性がある。

世界で脱炭素の流れが強まり、水素は注目されている。日本では再エネからつくる「グリーン水素」や、製造過程で出るCO2を回収・貯留する「ブルー水素」を海外から調達する例が多かった。三菱重工は、国産水素は輸送費や液化のコストを抑えられる利点が大きいとみている。

高温ガス炉を商用運転した例は世界でまだない。技術開発では東芝が先行している。750度まで熱を上げられる高温ガス炉の技術を持ち、米国の次世代原発事業に加わっている。米国ではスタートアップ企業X-energyが次世代炉を開発しており、米政府が支援している。英国は日本に技術協力し、高温ガス炉を共同開発する方針。日本は英国のほか、ポーランドとも高温ガス炉の開発で協力する。

欧米諸国は原発を脱炭素の重要な手段とし、技術開発を進めている。日本は東日本大震災後の原発停止以降、原発政策に関する議論が進んでいない。三菱重工は高温ガス炉の安全性を訴えて理解を求めていく考えだが、国内での導入は課題も多い。

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