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ホンダ社長「今こそ守りから攻めへ」 EV時代の勝算

日経ビジネスなどのインタビューに応じたホンダの三部敏宏社長
日経ビジネス電子版

新車のガソリン車をゼロにする目標を国内の自動車メーカーの中で初めて掲げたホンダ。日経ビジネスなどのインタビューに応じた三部敏宏社長は「電動化を新しいモビリティー産業と捉えれば、歓迎すべき環境だ」と自信を見せた。

「エンジニアもぼちぼちエンジンの終焉(しゅうえん)を迎えると分かっていた。その時期が早まり、いよいよきたか、と」

長年にわたりエンジン開発に携わってきた三部社長。自身が掲げた「2040年に新車のガソリン車をゼロにする」という目標について聞かれると、エンジニア視点でも納得できるものであると強調した。その上で、「ノスタルジックな思いはあるが、次の世代に向けて競争力のある決断をし、方向転換をしたことについては揺らぐものはない」と改めて決意を示した。

ホンダは自動車メーカーとしては後発ながら、エンジンの技術力を武器に世界的企業にまでのし上がった。ただ、21年シーズンを最後に自動車レースのフォーミュラ・ワン(F1)から撤退するなど、着実に電動化へと舵(かじ)を切ってきた。三部社長は「ホンダの強みはエンジンではなくエンジニア。(ガソリンエンジンに代わる)次世代のパワーユニット開発でも十分戦える」と自信を見せる。

4月に打ち出したホンダの電動化目標は、国内勢の中では意欲的なものといえる。「40年に脱ガソリン車」を実現するためのマイルストーンとして、欧州や北米、中国などでは電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)の販売比率を30年に40%、35年に80%とする計画としていた。

ところが、世界の規制はそれを上回るスピードで進む可能性がある。14日には欧州連合(EU)の欧州委員会が、2035年以降の新車販売を二酸化炭素(CO2)を排出しない「ゼロエミッション車」のみとする規制を提案。ホンダが示した40年よりも前倒しとなる格好だ。

世界で加速する規制強化や開発競争、積み上がる研究開発費など、数々の高いハードルが自動車メーカーを待ち受けている。ホンダはこれまで自前主義が強かったが、三部社長は電動化時代に向け、スピード感を重視して他社との提携や協業を積極的に進める考えを示した。現在、北米では自動車大手の米ゼネラル・モーターズ(GM)とEVを共同開発中。こうした提携関係をソフトウエア会社などの異業種にも拡大し、「できるだけ早く事業の収益性を確立する」(三部氏)と述べた。

守りから攻めへ

三部社長は「既存事業をベースに組み立てると、電動事業が成り立たない」と従来型のビジネスモデルへの危機感もにじませた。新興のEVメーカーやソフトウエア企業などの異業種が自動車産業に参入することで、産業全体の収益構造が複雑化しつつある。そうした中、「単純に車を生産して売るのではなく、電動化時代のビジネスモデルをつくっていく」とし、バッテリーのリユースビジネスや、コネクテッドカー(つながる車)でのサブスクリプション(定額課金)型モデルなど、デジタル技術を使いながら新しい価値を生み出す収益モデルを検討していると語った。

ホンダの三部敏宏社長

「電動時代のビジネスモデルを新しいモビリティー産業と考えれば、歓迎すべき環境ではないか」。三部社長は電動化がもたらす変化はホンダにとってチャンスであるとの見方を示す。「攻めに転じるという部分にはホンダの企業風土が生きると確信している。たとえ指示を出さなくても、色々な社員が自主的にやっていく。そこがホンダの歴史であり、得意技だ」(三部社長)

ここ数年、工場閉鎖による生産能力の削減や組織改革、モデルラインアップの見直しなど、低迷する四輪事業のテコ入れに追われていたホンダ。「効率を追いかける施策が前面に出ていたため、攻めから守りの部分に変わってしまったところはあった」と三部社長は振り返る。これからの電動化時代は、守りの姿勢では太刀打ちできない。再び「攻めのホンダ」となれるか、正念場となる。

(日経ビジネス 橋本真実)

[日経ビジネス電子版 2021年7月19日の記事を再構成]

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