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H2O、百貨店とスーパーの2本柱「関西ドミナント戦略」

日経ビジネス電子版

阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)が、食品スーパーマーケットを中心とする食品事業の強化を急いでいる。新型コロナ禍で百貨店は厳しい経営を強いられ、業態としての限界が指摘された。大手各社が生き残りに向けた手を模索する中でH2Oが選んだのは百貨店とスーパーの小売り2本柱戦略。成算はあるだろうか。

「食品事業を第2の柱として育てていきたい」。7月28日、関西のスーパーマーケット大手の万代(大阪府東大阪市)と包括業務提携をすると発表したH2Oの荒木直也社長は会見でこう話した。

主力の百貨店業態で、H2Oはかねて非対面の売り方を模索してきた。オンラインで社員が説明しながら商品を販売していくライブコマースや、電子商取引(EC)商品と店頭商品の在庫連携に力を入れている。

百貨店でデジタルシフトを進めながら、成長に向けて選んだ当面の策が食品スーパー中心の食品事業の強化だという。H2Oと同様に関西圏で店舗を展開し、156店を持つ万代と組み、プライベートブランド(PB)の共同開発、物流機能の相互利用のほか、デジタル分野ではポイントシステムの協業に取り組む。

H2Oの荒木社長は万代について「生鮮品や売り方、価格設定などで(H2Oのスーパー業態である)阪急オアシスなどにはない部分を持っている」と話した。

H2Oと万代は出店地域もばらつきがある。万代の主な商圏は大阪市内のほか、大阪府の東部、南部、奈良県などが中心で、H2Oは大阪市内のほかに京都市内や大阪北部を含む北摂地域などが中心だ。商圏のかぶっている地域でも物流機能の相互利用などで相乗効果が図れると見ている。

新モデルでの競争が始まった

百貨店業界はコロナ禍で強烈な逆風にさらされ、多くの店が幾度もの一時休業や営業時間の短縮に追い込まれた。ただ、業態としての弱さは以前から指摘され、コロナ禍でインバウンド需要が消失すると、業績を支えるすべを持たなかった。

大手はこぞってビジネスモデルを見直しており、三越伊勢丹ホールディングスは仮想現実(VR)を使った販売や、店舗で客の全身を3D計測するといった新たな取り組みを急ぐ。高島屋は千葉県流山市で複合型商業施設を運営するなど不動産業に力を注ぐ姿勢が鮮明だ。

一方、H2Oが選んだのは食品スーパーマーケット。既に高級スーパーの阪急オアシスのほか、2014年に経営統合したイズミヤなど178店舗を持つ。H2Oの21年3月期決算は百貨店事業の売上高が3478億円なのに対し、食品スーパー中心の食品事業は2811億円と百貨店業界の他社に比べてもスーパーの比率が高い。現状の事業ポートフォリオのなかで即効性が高いと判断したようだ。

百貨店と対照的にスーパーマーケット業界に追い風が吹いていることも食品事業強化の背景にある。経済産業省の商業動態統計によると、2020年の業界の販売額は約14.8兆円。約13.1兆円だった19年に比べ1割以上増えた。巣ごもりで消費が郊外のスーパーにシフトしている。

しかし、荒木社長はスーパーマーケット業界について「21年の秋以降はコロナ禍も落ち着き、厳しい経営環境になると思う。デリバリーの伸長やドラッグストアなどの他業態の参入もあり、競争が激化する」と話した。コロナ禍の間、業界にイノベーションが起きたわけではなく、消費者の買う場が変わっただけだという現実を冷静に判断している。

感染症が収束すれば消費の動向が再び変わり、スーパーに向かい風が吹くシナリオも考えられる。そうなれば、百貨店とスーパーの両輪で関西地域の小売りを一挙に担うH2Oの「関西ドミナント戦略」は行き詰まりかねない。

万代との提携は事業の効率を引き上げ、利益率を高めるうえでプラスになるとみられる。ただ、ポイントの相互利用などだけでは、努力をしただけのリターンにとどまってしまう。これまでにない商品や新たなソリューションを買い手に提供できるようなジャンプアップの枠組みが必要だ。

それでも「関西圏」「小売り」という2つのキーワードで巻き返す当面の策は明示したといえる。スーパーと百貨店の両業態で相乗効果を生んだり、H2Oの潜在力を引き出したりするような次の一手が求められる。

(日経ビジネス 田中創太)

[日経ビジネス電子版 2021年8月19日の記事を再構成]

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