NTTのIOWN、まずエンタメから お笑いやeスポーツ

NTTと吉本興業は20日、NTTが開発中の通信基盤「IOWN(アイオン)」を使い、大阪市内の計3会場をつないだお笑いライブを開いた。IOWNは映像や音の遅延を大幅に抑えられるのが特徴。国内のエンターテインメント分野から活用事例を積み上げ、2030年ごろに実用化が見込まれる通信規格「6G」の世界標準としたい考え。
ライブでは、お笑いコンビ「ジャルジャル」の後藤淳平さんと福徳秀介さんは約5キロメートル離れた2つの会場に分かれて登場。福徳さんが国名を途中で区切り、続きを後藤さんが即座に答え続けるネタをテンポよく披露した。

通常の回線を使った場合、映像や音声を一度圧縮するため数秒の遅延が生じる。そのためコンビが別々の場所から漫才の掛け合いを披露することは難しかった。
IOWNを使った専用回線は映像や音を圧縮せず光信号にのせて送るため、遅延時間を20ミリセック(ミリセックは1000分の1秒)に短縮した。5メートル離れた場所にいる人同士が話す場合の遅延と変わらず、ほぼリアルタイムでの伝送が可能になった。
IOWNは半導体の内部の伝送まで電気から光に置き換える構想で、NTTは30年をめどに完全商用化を目指している。まず遅延を200分の1に抑えた専用回線の提供を16日に始めた。

将来は伝送容量を125倍、消費電力を従来の100分の1にすることを目標にしている。川添雄彦副社長は「海外の通信キャリアとも協力しながらグローバル展開を目指したい」と話す。
普及にはさまざまな分野で活用事例を積み上げる必要がある。NTT東日本は19日、IOWNを使ったゲーム対戦競技「eスポーツ」のイベントを開いた。
eスポーツは競技人口が世界で増えるが、ネットワーク環境の勝敗への影響が大きく、競技者間でどう公平にするかが課題になっている。ダンスや楽器演奏の遠隔指導にも活用したいという。