HPVワクチン、キャッチアップ接種率の向上必要 大阪大
大阪大学の八木麻未特任助教や上田豊講師らは、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、接種の機会を逃した世代に無料で接種する「キャッチアップ接種」だけではがんによる死亡などのリスクを十分に軽減しづらいとの研究をまとめた。接種に前向きでない人にも情報提供して接種率を高めるほか、子宮頸がん検診を強化することが重要としている。
HPVワクチンは2013年4月に小学6年~高校1年の女子生徒を対象に定期接種が始まった。だが接種後の痛みや運動障害などの報告が相次ぎ、同年6月に厚生労働省が積極的な勧奨を中止した。接種率は公費助成のあった1997年度生まれでは約79%に達したが、勧奨中止後に定期接種の対象年齢になった2002年度生まれでは1%未満にとどまる。
厚労省はワクチンの安全性に懸念が認められないことを確認し、2022年4月から積極的勧奨を再開した。中止から再開までの間に定期接種の対象年齢だった1997~2005年度生まれへのキャッチアップ接種も始めた。
研究チームはキャッチアップ接種により接種率が高まった場合に、がんの発症や死亡のリスクがどの程度下がるか推計した。「22年度中に接種率が9割に高まる」という最も理想的なシナリオでは、全ての生まれ年度で1997年度生まれのリスクとほぼ同等まで軽減できた。
ただこのシナリオは非現実的とみられる。チームがインターネット調査でキャッチアップ接種の対象者の意向を調べると、接種に前向きな人は3~5割にとどまった。接種率が5割止まりのシナリオでは、2000年度以降生まれのリスクが1997年度生まれよりも大幅に高くなった。