/

難関資格取得に役立つ、手軽なオンライン講座を展開

KIYOラーニングの綾部貴淑社長。難関資格の取得を動画講座で支援する。低価格が売りで、コロナ禍での資格取得ニーズの高まりも追い風になっている
日経ビジネス電子版

難度の高い資格取得のための受験勉強を手軽な動画講座で支援するのがKIYOラーニングだ。利用者数は右肩上がりで、法人向け動画研修支援事業への需要も高まっている。

社会保険労務士や司法書士、税理士──。難度が高いとされる資格の取得をオンライン講座「STUDYing(スタディング)」で支援している。「忙しい人が勉強するには隙間時間をうまく使うことが大事」(綾部貴淑社長)との考えから、スマートフォンやパソコン、タブレット上の動画講義で学ぶスタイルにした。紙のテキストや問題集とは違い、場所や時間を選ばずに学習できるのが大きな売りだ。

自社専用スタジオでの収録の様子

コンテンツやシステムはすべて自社開発し、授業も集客もウェブ経由。教室やスタッフのコストを抑えられるため、価格も資格学校の数分の1程度。例えば、人気の中小企業診断士のコースは5万円弱だ。講座数は年々増え、現在は28に上る。旧サービス名「通勤講座」時代からの累計で、今年2月には有料会員数が10万人を突破した。「仕事との両立に非常に有効だった」「コストパフォーマンスがとても良かった」。資格試験に合格したスタディングの利用者からはこうした声が寄せられる。

効率的な勉強法を模索

スタディングは綾部社長自身が資格取得に苦しんだ経験を踏まえて作り上げた学習サービスだ。

「30歳までに起業したいと考えていた」(綾部社長)。当初は事業分野を絞っておらず、起業するにはマーケティングや財務、法務と幅広い知識を身につけておく必要がある。MBA(経営学修士)は時間もお金もかかるので、中小企業診断士の資格を取ろうと決断する。

意を決して数十万円を大手資格学校に支払うと、届いたのは巨大な段ボール箱だった。紙のテキストや問題集がぎっしりと詰め込まれ「どこからどう手をつけたらいいのか、手引きもなくあぜんとした」(綾部社長)。挫折しても起業の夢を諦めきれず別の大手通信講座を申し込んだが、結果は同じで長続きしなかった。

「効率的に学習するにはどうすればいいか」。勉強法や心理学に関する書籍を100冊以上読みあさり、ありとあらゆる勉強法を試しては、自分自身で効果を検証する。この作業をひたすら繰り返した。紙のテキストを読み込んだり、ノートに学習内容をまとめたり……。だが、時間がかかる割に頭に入ってこなかった。

たどり着いたのはコンサルティング業務でよく使っていた「マインドマップ」だった。中核となるテーマやキーワードを中心に置き、関連・派生する内容を枝葉のように付け加えていく図で、中小企業診断士の学習にも応用。実にA3サイズの用紙100枚以上を作ったという。このマップの内容を説明するように声に出していくうちに理解度が一層高まり、試験合格につながった。

「学習×IT」がカギ

こうした地道な努力が起業の突破口となる。綾部社長は日本オラクルを経てIT(情報技術)コンサルティング会社に勤めていた。100個以上のビジネスアイデアから起業する分野を絞り込む際に、自身の経験から「学習にもITを使えばうまくいくはず」と確信する。教育分野だとアイデア次第で幅広く事業展開ができる絵も描けたという。

当時はスマホが普及する前で、携帯型音楽プレーヤー「iPod」がはやっていた。同じころ英語の聞き流し学習のサービスも話題を呼んでいた。「この資格版を作ればいいのではないか」。自身が講師も務め、中小企業診断士の資格取得を支援する音声講座「通勤講座」を2008年にスタートさせた。

一定程度まで販売が伸び、10年に「KIYOラーニング」を設立する。その後、宅地建物取引士やファイナンシャル・プランナーなど他の資格講座にも手を広げるなかで「もっと合格実績を積み上げないと事業を拡大できない。そのためには講座をより分かりやすくする必要がある」と考え、行き着いたのが、スマホで学べる動画講座だった。スマホの急速な普及に加え、YouTubeの台頭にも着想を得た。

KIYOラーニングの売上高推移

スマホの特性が生かせる学習システムをくまなく探せど、「ふさわしいと思えるものが見つからず」自作。動画講座の撮影スタジオなども構えた。ベンチャーキャピタルからの出資を受けながら事業を続け、次第に利用者が増えると講座数も増え、合格者や新規利用者も増える好循環が生まれ、20年7月には念願の東証マザーズ上場を果たした。

「あなたには、その資格がある」。今年に入ってからは初のマス広告としてテレビCMも打ち出した。漠然と「資格を取りたい」と思っている人も含め、顧客層の拡大を図る。人工知能(AI)を用いて受講者の学習計画を作り、合格点に必要な勉強時間を助言する機能も一部の講座で取り入れている。

法人向け事業として、社員教育用のクラウドサービス「エアコース」にも力を入れている。ビジネスマナーやコンプライアンスなど一般的なビジネス知識を学べる動画講座に加え、マーケティングとは何かなど、経営の知識や事例が基礎から学べるコースもある。

特にコロナ禍では「テレワークが浸透し、集合研修もできないなかで企業のニーズがかなり高まっている状況」(綾部社長)という。今後も学習や管理がしやすいシステム改良を重ね、個人向け事業と並ぶ2本目の柱に育てていく考えだ。

(日経ビジネス 生田弦己)

[日経ビジネス2021年7月19日・26日号の記事を再構成]

日経ビジネス電子版セット

週刊経済誌「日経ビジネス」の記事がスマートフォン、タブレット、パソコンで利用できます。「日経ビジネス電子版」のオリジナルコンテンツもお読みいただけます。日経電子版とセットで月額650円OFFです。

お申し込みはこちらhttps://www.nikkei.com/promotion/collaboration/nbd1405/

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経ビジネス

企業経営・経済・社会の「今」を深掘りし、時代の一歩先を見通す「日経ビジネス電子版」より、厳選記事をピックアップしてお届けする。月曜日から金曜日まで平日の毎日配信。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン