/

運送業界の人手不足救う 自動化テックに投資資金1兆円

CBINSIGHTS
トラック運送業界で、配送や積み荷などの作業でデジタル技術の活用が進んでいる。フリーランスが多い業界の構造上、新たな技術の導入が遅れていた業界だったが、運転手の深刻な人手不足を背景にデジタル化が急務だ。スタートアップはこの動きをとらえ、資金調達をして課題の解決に取り組む。トラックの技術革新に取り組むスタートアップを分野ごとにまとめた。

トラック運送業界は2024年には価値が1兆ドル(約115兆円)に達する見通しだが、多くの課題を突き付けられている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

世界のサプライチェーン(供給網)はなお新型コロナウイルスの影響から抜け出せず、世界各国の積み出し港では作業が大幅に遅れている。コロナ前からトラック業界を悩ませ始めていた運転手不足も続いている。

各社は燃料価格の上昇や、顧客からのより迅速な配送への需要、輸送コストの問題にも直面している。

今では、国じゅうのトラック運送会社や物流会社が人材を確保し、新たな配送管理システムやデジタル記録機器などサプライチェーン全般の効率を最大化し、コストを最小化する策を見つけようと躍起になっている。一方、投資家はこうした機会を生かすためにこの分野のスタートアップに100億ドル(約1兆1500億円)以上をつぎ込んでいる。

CBインサイツのデータベースを使い、配送管理、物流の仲介、ワークフローの自動化、自動運転トラックなどのカテゴリーでこの分野の課題解決に取り組むトラック運送テックスタートアップ約60社を抜き出した。

ここではトラック運送テックスタートアップを「荷物のトラック運送(配送マッチングプラットフォームなど)、車両管理システム、車載の監視・追跡システムに力を入れており、テックで可能になったサービス・製品の開発に取り組んでいる企業」と大まかに定義する。

トラックに特に注力しておらず、ソフトウエアで広範な解決策を手掛けている企業やスタートアップは分析対象から除いた。倉庫関連の解決策やロボットも含んでいない。物流拠点から家庭までの「ラストワンマイル」物流や車両の電動化に取り組む企業は今回とは別の分析で扱っている。

地図には未上場の存続企業だけを記載した。この分野のスタートアップを網羅してはいない。

ポイント

トラック運送業界では人手不足が続き、自動化の重要性が高まっている

米労働省の労働統計局によると、トラック運送業界はコロナ禍で労働力の6%を失った。今や消費者の需要は増しつつあり、業界は人手不足に対処しようと躍起になっているため、業務継続に向けてワークフローやプロセスの自動化がこれまで以上に重要になっている。

投資家は発送などのプロセスを自動化し、運送会社に積み荷の最適化や価格設定などを提供するスタートアップに資金をつぎ込んでいる。

トラック輸送はそもそも細分化された業界で、大半の運送会社はほんの数台しかトラックを持っておらず、多くの個人業者はフリーランスでサービスを提供している。このため、この業界のテクノロジー導入は、少数の大手が市場シェアの大半を巡ってしのぎを削っている他の業界よりも遅れていることが多い。

だが、サプライチェーンの混乱が続くなか、今後は需要をさばくために業界全体で自動化が必要になるだろう。

自動運転トラックは十分に発達した段階に達しつつある

高速道路の運転は都市や郊外よりも間一髪の状況がはるかに少ないため、自動運転トラックによる運送はロボタクシーや乗用車など他の自動運転車よりも急速に進化しつつある。

市場リーダーの中国の図森未来科技(TuSimple)、中国系の智加科技(Plus)、米エンバーク(Embark)は新規株式公開(IPO)か特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場する計画を発表している。3社はそれぞれ上場で得た資金を自社製品のさらなる商用化に充てるだろう。

自動化は進んでいるが、最も強固なシステムでもなお完全自動運転には至っておらず、運転手がトラックに同乗する必要がある。自動運転トラックは当面は運転手不足の緩和、長期的には輸送コストの削減に役立つだろう。

配送テックはサプライチェーンの混乱をやや緩和している

運送会社と荷主とのマッチングから、荷物の追跡、国際配送のデジタル化に至るまで、配送テックのスタートアップはすべてをオンライン化しつつある。世界のサプライチェーンに引き続き負担がかかることを考えると、これは業界にとって不可欠なステップだ。9月時点では、貨物船は米ロサンゼルス港に入港するまでに8.5日間の停泊を余儀なくされたという。

配送マッチングを手掛けるスタートアップはテクノロジーを活用し、荷主と運送会社をより効率的につなぐ。米エマージ(Emerge)は荷主が運送会社を見つけられるデジタル配送マーケットプレイスを構築した。同社は最近、シリーズBのメガラウンド(調達額が1億ドル以上のラウンド)で米タイガー・グローバル・マネジメントや米グレイクロフトなどから1億3000万ドルを調達した。

エマージのようなプラットフォームは荷主が運送会社を探す負担を減らし、運送会社がスペースを有効活用して空きがあるままで走行せずに済むよう支援する。さらに広義的には、こうしたスタートアップには世界のサプライチェーンへの圧力の高まりをいくぶん緩和する力がある。

カテゴリーの内訳

自動運転トラックでの配送:トラックが運転手の監視が常に必要な「レベル2」よりも先の自動運転システムに移行できるようにするテクノロジーを開発している企業。例えば、米コディアック・ロボティクス(Kodiak Robotics)はこのほど、モジュール式のセンサー群や認知システム「コディアック・ビジョン」の強化版を搭載した第4世代の自動運転トラックを発表した。

ワークフローの自動化:荷物と運送会社のマッチングなど、トラック配送プロセスを自動化する企業。米オプティマル・ダイナミクス(Optimal Dynamics)は人工知能(AI)を使って運送会社の積み荷を最適化する。同社は最近、シリーズAで米ベッセマー・ベンチャー・パートナーズなどから1800万ドルを調達した。

国際配送のデジタル化:世界中の荷物の配送をトータルに管理し、これまでアナログだった事業をリアルタイムの可視性や合理的な価格設定、知見、分析によってデジタル化するプラットフォーム。ドイツのデジタル国際配送会社センダー(sennder)や米カリフォルニア州に拠点を置く国際配送会社で物流プラットフォームも運営するフレックスポート(Flexport)は、ここ3年でこの分野のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)になった。

デジタル配送マーケットプレイス:荷主とスペースに空きのある運送業者(トラックやトラック配送車両のオーナー)を効率よくマッチングするツールを手掛ける企業。荷主と近くのトラック運送会社をつなぐデジタルネットワークを手掛ける米コンボイ(Convoy)はこのカテゴリーのリーダーだ。同社の調達総額は6億7500万ドルに上る。

車両管理:通信機能を備えた機器を搭載した車両テレマティクス技術の進化により、トラックの位置や運転手の行動をリアルタイムで追跡できるようになっている。米メイブン・マシンズ(Maven Machines)や米サムサラ・ネットワークス(Samsara Networks)などこのカテゴリーの企業は、トラックに通信機能を持たせる機器やソフトウエアプラットフォームを開発し、こうしたデータを分析している。

可視化プラットフォーム:サプライチェーンの透明性強化に取り組んでいる企業。例えば、フランスのシッペオ(Shippeo)はリアルタイムでの荷物の追跡を提供する。これにより運送会社は配達実績を改善し、サプライチェーンの混乱に対処しやすくなる。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン