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小惑星の軌道を変える実験 NASAが探査機打ち上げ

日経サイエンス

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人類が天体を動かすことはできるのか。探査機によって小惑星の軌道を変える野心的なミッションが始まった。米航空宇宙局(NASA)は、2021年11月23日午後10時21分(日本時間24日午後3時21分)に、探査機「DART」をカリフォルニア州にあるバンデンバーグ米宇宙基地から打ち上げた。22年秋、地球から約1100万キロメートルの距離にある小惑星ディディモスを周回する衛星に衝突させて衛星の周回軌道を変え、それによってディディモスの軌道運動を変化させるのが狙いだ。

小惑星衝突は、長い間まともに取り合われてこなかった。小惑星衝突による人類滅亡などしょせんは映画の中の話で、真面目な科学とは思われていなかったからだ。ところがシューメーカー・レビー第9彗星(すいせい)が1994年に木星に衝突した直後から、状況は大きく変わった。

NASAの地球防衛関連コミュニケーション活動の顧問リンダ・ビリングズ氏は、同彗星が木星に衝突した当時のことを覚えている。一連の衝突イベントが始まって数日後の94年7月21日、彼女は首都ワシントンにある米海軍天文台の一般公開に出かけた。芝生の上で、アマチュア天文家たちが自前の望遠鏡の筒先を、その木星に向けていた。

木星の重力は彗星の核を粉砕。その塵が木星の渦巻く大気中に突入した領域では温度がセ氏4万度に上昇し、周辺の物質を高度3000キロメートルの宇宙空間にまで噴き上げた。「天体衝突が起こるという確かな証拠を私たちは得た」とビリングズ氏は語る。

今回打ち上げられるDARTは、衝突の約1カ月前に、ターゲットとなる小惑星をカメラ画像上の1ピクセルの光点として捉える。「その1ピクセルに向けて探査機を誘導する」とミッションシステムエンジニアを務める米ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所(APL)のエレナ・アダムズ博士は話す。

到着の1時間前には衛星が識別できるようになり、探査機はそれに向かって進み始める。通信が途絶すれば衝突成功だ。ディディモスは、天体としては小ぶりの48億キログラムだ。約600キログラムのDARTを秒速約7キロメートルで衛星に衝突させれば、衛星がディディモスを周回する周期が約10分変化すると予想されている。

衝突に関する観測データは、小惑星が地球に向かってきた場合への対処法を検討するためのコンピューターモデルの構築に利用する。「DARTのような取り組みは、万が一、私たちが実際に何らかの天体を見つけた場合に備える保険だ」と、研究チームリーダーの1人、ジョンズ・ホプキンズ大APLのアンドリュー・リブキン博士はいう。「火事や水害には遭いたくないが、十分な注意を払う必要があるのは当然だ」

(詳細は11月24日発売の日経サイエンス2022年1月号に掲載)

  • 発行 : 日経サイエンス
  • 価格 : 1,466円(税込み)

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