農業やヘルスケア 5Gで変わり始めた7つの業界 - 日本経済新聞
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農業やヘルスケア 5Gで変わり始めた7つの業界

高速通信規格「5G」の導入によって、ものづくり産業だけでなく、農業やヘルスケア、小売りなど幅広い業界で技術革新が起きている。リアルタイムの工場のデータや店舗での顧客の購買分析などを把握しやすくなり、生産性の向上や運営の効率化につなげようとする動きが活発だ。5Gによって新たなトレンドが生まれている7つの業界での動きをまとめた。

5Gはコネクティビティー(接続性)を大きく変えつつある。

このテクノロジーにより、従来の規格の最大10倍に上る高速通信、低遅延、多数同時接続が可能になる。5Gは多くの業界に大きなチャンスをもたらす一方、大規模なディスラプション(創造的破壊)のきっかけにもなる。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

米ビアビ・ソリューションズによると、5G商用サービスは2021年6月時点で既に60数カ国の1500以上の都市で展開されている。

あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器が増えるため、5Gは特に重要になる。IoT機器は5Gを活用すれば、大量のデータをリアルタイムで送ることができるようになる。独調査会社IoTアナリティクスの予測では、世界のIoT機器の台数は20年の120億台から25年には300億台に増える。地球上の人口1人当たりでは4台以上になる。

様々な業界の幹部は既に5G技術を活用しており、これをきっかけに破壊されないようにしのぎを削っている。決算説明会での5Gへの言及回数はここ数年で急増している。

遠隔ロボット手術から農作物管理の改善に至るまで、5Gは世界の多くの主要産業を大きく変える。以下で詳しく説明する。

1.製造業

ポイント

・5Gは自動化やIoT、人工知能(AI)などデータ通信量の多い次世代のテクノロジーの工場への導入に拍車をかける。

・拡張現実(AR)により現実空間にデジタル情報を重ねて表示することで業務を効率化し、仮想現実(VR)を使った研修で安全な慣習を徹底する。

・予測分析とリアルタイムのダメージ検知により不具合を減らせる。

5Gは製造業に多大なインパクトを及ぼす可能性がある。英IHSマークイットの推計では、5Gによる接続性の向上で35年までに世界で13兆ドルの経済価値が生み出される。その3分の1は製造業からもたらされる。

5G技術は製造業での製造業務の柔軟化と効率化を推進し、安全性を高める。メーカー各社は5Gにより、自動化、AR、IoTを活用した「スマート工場」を構築できる。5Gに対応した工場内の大量のIoT機器とセンサーにより、AIは業務にさらに深く組み込まれる。

テンポの速い組み立てラインでは、100万分の数秒の遅延でもメーカーに大きな混乱をもたらす。5G技術の導入により、産業ロボットは従来よりもずっと確実でスムーズなコミュニケーションがとれるようになる。ロボットは5G網により遠隔で制御、モニタリング、再設定される。

ARの導入も増えるだろう。5Gは現実空間に重ね合わせて表示する画像の品質維持に必要な大容量と低遅延の特徴を備えているからだ。工場では、ARは訓練やメンテナンス、建設、修理の役に立つ。

スウェーデンの通信機器大手エリクソンは18年1月、エストニアのタリンにある工場でのトラブル解決作業にARを試験導入した。技術者はARアプリを使ってメンテナンスが必要な箇所をチェックし、関連する回路図や説明書を見える範囲に引き出すことで、修理完了までの時間を大幅に短縮できる。エリクソンは5G技術を試すため、独航空エンジン大手MTUエアロ・エンジンズと独フラウンホーファー生産技術研究所とも提携している。エリクソンはこうした取り組みにより工場1カ所につき約3000万ドルを節約できるとしている。

自動車メーカー各社も5Gで製造現場がどう変わるかを検証している。例えば、独自動車大手ダイムラー傘下の高級車事業会社、メルセデス・ベンツは20年末、通信大手テレフォニカドイツとエリクソンと提携し、ドイツで5G対応の自動車工場を稼働させた。AR/VRアプリで建設を支援したこの工場では、5G網を使って工場のモノの出入りを追跡し、400台余りの無人搬送車を走行させる。

5Gアクセスは拡大し続けているため、製造業での活用事例も急増するだろう。経済効果の大きさを考えると、5Gは世界中の工場で不可欠な機能になる。

2.エネルギー、電力

ポイント

・5G対応センサーにより、停電やエネルギー利用に関するリアルタイムの知見を得られる。

・5G接続のスマートメーターにより、住宅のエネルギー利用の管理を改善する多くの情報が提供される。

・5Gは第4世代(4G)網に比べてエネルギー効率を最大90%改善する。もっとも、大容量通信が可能になるなど他の要素により、全体的には節電につながらない可能性がある。

・5G対応ドローン(小型無人機)をエネルギーインフラのモニタリング、メンテナンス、検査に活用することで、効率化を進め、環境への影響を減らせる。

5Gはエネルギーの生産、伝送、供給、利用に革新的な解決策をもたらす可能性がある。スマートグリッド(次世代送電網)の機能と効率に新たな波を起こすともみられている。

スマートグリッドが増えればエネルギー管理の効率はさらに改善し、ピーク時の電力や全体的なエネルギーコストを減らせる。

接続速度の上昇でエネルギー供給網の管理はさらに効率化する可能性がある。これは故障などによる休止時間の減少につながる。例えば、5G対応のスマートグリッドは停電が発生するとデータとセンサーを使い、問題についての知見を速やかに提供する。

このテクノロジーはエネルギー供給の安定化にもつながる。供給事業者は5G対応のスマートセンサーが提供する大量のデータを活用し、電力供給の判断を下せるようになるからだ。例えば、米ハワイ州は米通信大手ベライゾンと共同開発したシステムで停電を分析し、メーターをモニタリングする。

接続性の向上はエネルギー消費にもメリットがある。センサーを搭載した5G対応の街灯には通りに人や車の往来がない場合には明かりを落として節電する。アクセンチュアのリポートによると、これにより米国では年間最大10億ドルの節電効果がある。

5Gは機器間の接続も強化するため、スマートメーター(次世代電力計)を備える住宅が増えるだろう。こうしたメーターは様々な家電や機器のエネルギー消費について知見を提供し、住人にエネルギー利用を管理する多くの情報をもたらす。

ベライゾンはエネルギー業界を5Gの潜在能力を示すカギになるとみており、5G技術の「最も重要な試験台」の一つになると述べている。

5Gは従来技術に比べてエネルギー効率も優れている。フィンランドの通信大手ノキアとスペインの同テレフォニカによる研究では、5G技術のエネルギー効率は4G網よりも最大90%優れていることが示された。もっとも、5G網ではデータ通信量が大幅に増え、新たな機器も多く必要になるため、全体的には省エネにつながらないだろう。

ただし、5Gのエネルギー効率により、電池を使う機器の寿命は最大10年延びる可能性がある。このため、エネルギー業界にとってはIoTセンサーの大量展開は現実的な解決策になるだろう。

5Gはドローンによる電線など送電網の構成要素の監視やメンテナンスも支える。これにより送電網の使用可能期間が延び、検査コストが減り、事業の持続可能性が高まる。例えば、スペインのエネルギー大手ナタージュは英通信大手ボーダフォン・グループと長距離飛行のドローンを手がけるスペインのフーベックス(FuVeX)と提携し、目視外飛行のドローンの遠隔管理による電線点検プログラムに乗り出した。

ナタージュはこのプログラムを自社の送電網の数千キロメートルに及ぶ電線全てに導入したい考えだ。フーベックスはこの取り組みによる業務の効率化で、二酸化炭素(CO2)排出量を600万トン以上減らせるとしている。

3.農業

ポイント

・5Gは農家に農作物についてより多くの知見をもたらし、収穫量を増やし、品質を高める。

・コネクテッドセンサーが機械やインフラの状況をリアルタイムで提供し、業務を効率化し、メンテナンスを改善する。

・5Gにより、衛星画像やIT(情報技術)を使って生産性を高める「精密農業」の同期にかかる時間は現在の約1分から1秒以下に減る。

5Gは農業に大きなインパクトをもたらし、特に収穫量を増やす。国連食糧農業機関(FAO)によると、人口増加により50年には世界で必要な食料は09年比70%増える。このため、収穫量の増加は必須の課題だ。

5Gは農家に農業システムをモニタリング、追跡、自動化するためのリアルタイムのデータを提供し、収益性や効率、安全性を高める。特に気候変動は世界中の農家に新たな脅威を及ぼしており、農業のようなリスクの高い産業では生産量の増加や精度の向上は死活問題になる。

多くの農家は既に4G対応センサーを使っているが、5Gは農地の情報をより速く正確に得る機会をもたらし、増産を支え、農作物や野生生物の病気を予防しやすくする。米スラントレンジ(SlantRange)などの企業は既に、農家に農作物についての知見をもたらすドローンサービスを提供している。こうしたサービスの精度は5Gの利用で大幅に高まる可能性がある。例えば、自動運転トラクターはいずれ5Gを使ってドローンと連携し、農地で肥料が必要な箇所を見つけるなど農作業を導くようになるだろう。

同様に、農業ロボット開発の米ブルーリバー・テクノロジー(Blue River Technology)は米半導体大手エヌビディアの5G対応エッジプラットフォームを活用し、AIを用いた技術「シー・アンド・スプレー」を開発した。カメラを搭載したトラクターが作物と雑草を識別し、必要な場所にだけ除草剤を散布する。

精密農業は5G技術により大きく進歩するとみられる。大量の資源を必要とする作物では、生産量を増やすために土壌の状態などをモニタリングしなくてはならない。4Gでは精密農業の同期プロセスに約1分かかるが、米ジョンディア・テクノロジー・イノベーションセンターによると5Gでは1秒未満に短縮される。

5Gは農業でのIoT機器の導入も推進するだろう。これにより水やりの管理、滴下施肥法、家畜の安全や成長のモニタリング、農作物の病気の伝染、空からの農作物のモニタリングなどの農業プロセスが改善する。

IHSマークイットの予測では、5Gにより35年までに農業、漁業、林業の生産高は5100億ドル増える。だが、農業は一部の業界よりも5Gの恩恵を受けるのが遅くなる可能性がある。5G網はまず都市部で展開されるからだ。

4.小売り

ポイント

・店舗や配送事業は5Gにより効率化し、測定可能になり、コストを削減できる。

・5Gによって写真のようにリアルな画質のバーチャル試着など、新たな顧客体験が多く生み出される。

・5Gは顧客の効率的な買い物や迅速な決済を支援する技術に対応する一方、顧客体験についてより多くのデータも収集する。

世界の消費者のモバイル端末でのネット通販の利用はこの10年で驚くほど普及した。米調査会社イーマーケターの予測では、21年の世界のモバイルコマースの売上高は3兆5000億ドルに迫り、電子商取引(EC)の売上高全体に占める比率は70%以上に達する。

モバイルショッピングへの移行は主に4Gのおかげで起きた。スマホの接続速度が10倍になれば、スマホでの買い物にどんな影響が及ぶかを想像してほしい。

5Gは速度だけでなく、VR試着室、店内や自宅でのAR体験など、データ通信量の多い新たなタイプの消費者体験も可能にする。

現在では、化粧品チェーン「セフォラ」などが店内の顧客向けに、メーキャップを購入する前にバーチャルでシミュレーションできる技術を導入しているが、データ通信量の制約がある。5Gではこうした制限は事実上なくなる。ARを使って写真のようにリアルな画質で洋服を試着する体験はすぐに一般的になるだろう。

5Gの低遅延により、酔いを誘発しないAR/VRのモバイルアプリも可能になるだろう。これにより、自宅にいながらにして様々な洋服を試着でき、より優れたカスタマイズされた顧客体験が可能になり、結果として購入額が増える。実際、デロイトの調査によると、買い物客の71%がARアプリを使うと買う量が増えると答えている。

小売り各社はここ数年、買い物を効率化し、迅速に決済できるようスマートテクノロジーに巨額の資金を投じる一方、顧客体験についてより多くのデータを収集するようになっている。店内の分析から映像解析技術による棚のモニタリングに至るまで、未来の小売りテックの多くは大量のデータを送信し、ハイスループットの接続にアクセスできる能力を活用し、恩恵を受けるだろう。このため、5Gは小売りの事業運営に非常に大きなインパクトを及ぼす位置に付けている。アドビ・デジタル・インサイツによると、5G技術による接続性向上で、21年末までに小売りの売上高は年間120億ドル増える可能性がある。

通信各社は小売りの運営方法を改革するチャンスを嗅ぎ付けている。米ベライゾンビジネスは21年2月、デロイトと独SAPと共同で5G対応モバイルエッジプラットフォームを開発したと発表した。このプラットフォームは高度なセンサー網とAR、AIを活用し、小売り各社に店内の消費者の行動に関するリアルタイムの分析を提供する。リアルタイムの在庫管理など小売りが抱える一般的な課題にも対応する。

5.医療(ヘルスケア)

ポイント

・5Gは医療でAIの幅広い活用とワークフローの自動化を推進する一方、5G対応AR/VRの利用により訓練や治療を改善する。

・優れたオンライン診療サービスにより、手ごろな料金で利用しやすいケアに貢献できる。

・ウエアラブル端末や遠隔患者モニタリング(RPM)は早期の診断や治療を推進し、予後の改善やコスト削減をもたらす。

患者の命にかかわる状況では、医師は数え切れないほどの重要な判断を矢継ぎ早に下さなくてはならない。多くのデータを保有し、これにリアルタイムでアクセスできることで、情報に基づいて判断を下せるようになる。

5G網のハイスループットと低遅延により、病院や遠隔で命を救える可能性がある判断を速やかに下せるようになる。これは収益増加にもつながる。ボストン・コンサルティング・グループの推計では、5Gは30年までに米医療部門の収益を1040億ドル押し上げる効果がある。

オンライン診療での高解像度の映像配信から、画像診断、ケアチームでの結果共有などケアの様々な段階がデータ通信速度の向上の恩恵を受ける。

医療業界も常に大量のデータを生成している。5Gの低遅延により、この大量のデータを他のネットワークに問題を引き起こすことなく送信できる。

米通信大手AT&Tと米退役軍人省(VA)は21年2月、米ワシントン州ピュージェット湾にあるVAの医療施設への5G導入で提携した。このプログラムでは施設内での人や資産の追跡、AR/VRを使った医療訓練や疼痛(とうつう)管理、手術中にデジタル情報を重ねて表示して指導するARを使った手術支援など、複数の5G活用ケアの実証実験を行う。

VAは20年にも、米カリフォルニア州パロアルトの施設でベライゾン、米メディビス(Medivis)、米マイクロソフトと5G導入で提携した。マイクロソフトのAR端末を使って手術のテクニック向上に取り組んでいる。

米オッソVR(Osso VR)などはVR技術を使って現実世界のような訓練モジュールを提供する。外科医はこれにより高度なテクニックを練習するだけでなく、最新のロボット技術にもついていけるようになる。

遠隔ロボット手術もさらに改良される可能性がある。こうした治療では高解像度の画像配信が必要になるため、低遅延とハイスループットの通信が不可欠だ。5G網はタイムラグがなく、超高速接続が可能なため、遠隔手術を推進できる。

中国のある外科チームは19年、1900マイル近く離れた患者の脳に遠隔で刺激装置を埋め込んだ。米国では、コリンダス(Corindus)がロボットシステム「コーパスGRX(CorPath GRX)」を使った心臓血管治療を実証実験している。このシステムでは5Gなど複数のタイプのネットワークを使う。同社は19年10月、医療機器の製造・販売の独シーメンス・ヘルシニアーズに11億ドルで買収された。

ウエアラブル端末や遠隔手術、オンライン診療により遠隔で治療を受けられるようになることで、特に農村部の患者が医療サービスを利用しやすくなる。5G対応テクノロジーで病気の早期発見や発見率の上昇など積極的なケアを提供できることで、予後の改善やコスト削減が可能になる。

6.不動産

ポイント

・5Gにより不動産業界でAR/VRの導入が進むことで、仲介業者は遠隔で優れたバーチャルツアーを提供し、顧客は柔軟に物件を閲覧できるようになる。

・ビルのオーナーは小型基地局「スモールセル」の設置など5Gインフラの構成要素から収益を得たり、スマートビル(ITで高度に情報管理した建物)機能に基づいて賃料を引き上げたりできる。

・5Gはリモートワークの動きを推進し、様々な場所から確実に働けるようにする。

5GはARやVRなどの新たなテクノロジーに道を開くため、不動産業界も影響を受けるだろう。

不動産仲介業者はさらに多くのバーチャル物件ツアーを提供する可能性がある。これは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて既にトレンドになっている。見込み客はVRを使い、自宅にいながらにして数件の物件を閲覧できる。

別の州や国の物件の購入や賃貸を考えている人にとって、モバイルアプリでVRツアーにアクセスできるのは特に有用だ。5G技術によりこうした用途は現行プロセスよりも効率よく確実に実行されるようになるだろう。

さらに、住宅ツアーでARを活用すれば、家具を置いた場合のスペースも確認できる。5Gのスモールセルも多くの不動産の追加収入源になる。5Gの展開に必要なスモールセル数百万基を世界のビルに新たに設置してもらったり、貸し出したりすることになるからだ。ビルにスモールセルを設置することで、オーナーは新たな収入源を得られる。

さらに、リアルタイムのモニタリングや、異常や劣化を早期に発見してトラブルを未然に防ぐ「予知保全」など、5G対応のスマートビル機能を導入することで、ビルの価値が高まり、賃料を引き上げられる。

リモートワークは長期的な取り組みとして人気が継続するため、5Gにより車内やホテル、カフェなどの出先からも仕事ができるようになる。一方、5Gはデータ量の大きいクラウドベースのソフトウエアや、信頼できるビデオ通話で強力な接続を維持する。

7.公共の安全

ポイント

・5Gで脅威や緊急事態を認識しやすくなり、脅威を検知する技術やリアルタイムの通報などが可能になる。

・ウエアラブル端末やホームセンサーなどのコネクテッドデバイスは5Gを使い、緊急時に救急や消防、警察などの第一対応者に即座に通報できるようになる。

5Gは緊急時にすばやく対応できるようにすることで、公共の安全を強化できる。

5G網を通じてリアルタイムの動画、セキュリティー通信、メディアの共有などのアプリケーションを使い、緊急時に第一対応者を支援できる。例えば、消防士はARを使って(煙などで)周囲が見えない状況でも家の中を進める。

ビルの5G接続機器やセンサーは、緊急時に第一対応者にリアルタイムで通報できる。通信機能を搭載している車も衝突した際に同じことが可能になる。車のセンサーが警察に緊急事態を知らせるだけでなく、緊急車両はその地域の5G車両通信網を使い、最速ルートの最新情報を受け取ることができる。

さらに、米メディカル・ガーディアン(Medical Guardian)などの企業はスマートウオッチなどのウエアラブル端末向けに救急通報システムを開発している。利用者が倒れたりした場合には自動で検知し、救急に通報する。5Gにより確実にすぐに連絡できる連絡手段が確保でき、できる限り早く支援を派遣できるようになる。

5G網は身に着けたボディーカメラからの安全で確実な動画共有やドローン、グループチャット、ファイル共有、位置情報の共有により、警察や消防など公衆の安全を守る組織内の情報共有体制も強化する。

センサーやカメラなど自動装置のネットワーク拡大により治安の維持も支える。5Gの大容量通信により、セキュリティーカメラからの高解像度映像の常時配信や映像解析(コンピュータービジョン)など、こうした素材をリアルタイムでチェックする自動のアプリケーションも可能になる。

例えば、米ゼロアイズ(ZeroEyes)はAIを搭載した動画分析ツールにより、銃撃者が実際に犯罪に及ぶ前に脅威を検知できるとしている。これは学校やスタジアムなどでの既存のセキュリティーカメラに実装できる。同社はベライゾンの「5G ファースト・レスポンダー・ラボ」から出資を受けている。このラボは出資先企業に5Gアクセスを提供し、第一対応者にその企業が開発した解決策を利用してもらうよう支援する。

一方、災害発生時には、5G接続のドローンで救援物資を運んだり、行方不明者の捜索を支援したりできる。

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