希望退職、2年連続1万5000人超 コロナでアパレル打撃
上場企業が2021年に募った希望退職者数は1万5892人に達した。20年からは減少したが、2年連続で1万5000人を上回った。新型コロナウイルス禍が直撃したアパレルや観光業界が多く、鉄道でも18年ぶりに募集があった。足元ではオミクロン型が猛威を振るっており、22年も募集人数や社数が高水準になる可能性がある。
東京商工リサーチが20日に発表した。21年に希望退職を募集した上場企業数は84社だった。20年は93社で、約1万9000人の募集があった。
16~18年は3000人台から5000人台にとどまっていた。リーマン・ショック直後の09年(約2万3000人)、IT(情報技術)バブル崩壊後の02年(約4万人)には及ばないが、コロナ禍の影響は深刻だ。
業種別ではアパレル・繊維の11社が最多で、電気機器の10社、観光を含むサービスが7社と続く。近鉄グループホールディングスなど鉄道は18年ぶり、ANAホールディングスの募集で航空も8年ぶりに実施した。
外出抑制が響いたアパレル大手のワールドは、低収益ブランドや店舗の撤退に合わせ製造・販売子会社で募集。想定を2割超上回る125人が応募した。同じアパレル大手の三陽商会も約150人の募集に180人が応募している。旅行需要が急減したKNT-CTホールディングスには、1376人の応募があった。
実施企業の44%は最終損益が黒字だった。19年は57%、20年は45%が黒字リストラに踏み切っている。背景にあるのは、デジタルシフトなど事業構造の転換だ。黒字であっても1000人を超える大胆な人員整理に動く企業が目立つ。

「仕事内容や役割を見直す中、キャリアの再スタートを切らないといけない」。パナソニックの楠見雄規社長は21年10月の記者会見で、早期希望退職についてこう語った。ソフトウエアの重要性が高まる中、従来のものづくりや売り切り型ビジネスに偏重した人材の新陳代謝を進めるのが狙いとみられ、9月末に1000人超が退職した。
ホンダが55歳以上を対象に募った希望退職には、国内の正社員の約5%にあたる2000人超が応募した。若手登用を進め、電気自動車(EV)や自動運転など新技術への対応力を上げる。
日本たばこ産業(JT)は紙巻きたばこの需要縮小に伴って一部工場を閉鎖。約3000人規模の人員を削減する。国内たばこ事業などの46歳以上の社員を対象に1000人規模の希望退職を募り、パートタイム従業員も約1600人に退職勧奨する。定年後に再雇用した契約社員なども含め、対象は国内の間接部門とたばこ事業で雇用者全体の約2割にのぼる。

21年の下半期は、希望退職の募集ペースが鈍っていた。だが、新型コロナウイルスのオミクロン型の感染が急拡大し、再び募集が増える懸念が強まっている。
政府は19日、東京など13都県に「まん延防止等重点措置」を適用すると決めた。外出自粛で外食や小売り、観光など幅広い業界に影響が及ぶ。22年もすでにレジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産などが希望退職の募集を始めている。
東京商工リサーチ情報部の二木章吉氏は「外食などの内需型企業は20年から21年にかけて希望退職を募集し、コロナ禍の環境変化に対応してきた。オミクロン型の感染拡大でコロナ禍がさらに長期化すれば、再びの人員整理を迫られる企業も出始める」と危惧する。
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