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月の裏側に電波望遠鏡 宇宙の暗黒時代解明に各国が構想

日経サイエンス

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米国がアポロ計画以来の有人月着陸を目指し、中国の探査機が月のサンプルを地球に持ち帰るなど、月探査が熱を帯びている。資源開発が大きな狙いだが、天文観測の新たな拠点としても注目を集め始めている。特に、謎に包まれた宇宙初期の「暗黒時代」の様子を研究する天文学者が注目するのは月の裏側だ。

宇宙は約138億年前に誕生し、最初の1~3億年は星が1つも存在しない真っ暗闇の状態だった。天体望遠鏡で宇宙の遠くを見ると、古い時代の宇宙を観測できるが、この暗黒時代には天体が存在しなかったので、光学望遠鏡では調べられず、詳しい様子が分かっていない。

星の素材となる水素ガスは特定波長の電波を放つので、天文学者は、暗黒時代から到来するこの電波をキャッチしようとしているが、地上の電波望遠鏡では地球大気や様々な人工的な電波が障害となって観測することが難しい。

そこで白羽の矢が立ったのが月の裏側だ。月の裏側は地球からは見えない。裏返していえば、月の裏側から上空を見ると、地球が視野に入らない。観測の邪魔になる大気もなく、地球からの人工電波も来ない理想の場所だ。複数の研究グループが構想を温めている。

オランダ・アムステルダム自由大学のグループは、イタリア・シチリア島の活火山、エトナ山の山腹を月面に見立てて、アンテナを設置する実験を近く実施する。ドイツ航空宇宙センターが開発したロボット探査車を遠隔操作し、アンテナを収めた箱4つを展開する予定だ。複数のアンテナを連携させることで、電波源をより詳しく調べることができる。米コロラド大学ボルダー校のグループも米航空宇宙局の資金を得て、月の裏側にアンテナを展開するミッションの基礎的検討を進めている。

英オックスフォード大学のグループは、アンテナの機能を果たす回路パターンをシートに印刷して折り畳み、これを月周回機から投下、月面で広げる方法を考案した。オーストラリアの荒野で試作装置をドローンから投下して、きちんと広がるかどうか調べる実験を予定している。

一方、中国科学院国家天文台のグループが検討しているのは、アンテナを搭載した複数の探査機を月周回軌道に投入し、それらが月の裏側に回ったときに観測を実施する計画。現在の技術で実現可能で、月の裏側に電波望遠鏡群を設置するより費用を抑えられるという。

宇宙の暗黒時代に光が当たる日もそう遠くはないかもしれない。

(詳細は8月25日発売の日経サイエンス10月号に掲載)

  • 発行 : 日経サイエンス
  • 価格 : 1,466円(税込み)

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